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「とりあえず13階の野営地まで向かう。ここからは戦闘もちゃんとあるから油断しないように」
10階から13階までの移動はダーンさんにおんぶされて進むことになった。
移動開始前に付与師のリッツさんとエストラさんが何かをすると、みんなの足が午前中よりも早くなった。
初め、私は二人が付与をかけていることに気づかず(走らないから)またやってるのかとアイズさんを睨んでいると走りながらダーンさんがこっそりと教えてくれた。
「マリィ、これは速度上昇の付与魔法だよ。あ、舌を噛むから喋らないでね」
誤解だったのか。こくこくと頷いてぎゅっとダーンさんの服を掴んだ。少し走ると急に前方が止まり出した。
すごい速度で走っていただけに、急に止まったことでダーンさんがガッツリ掴んでいてくれなかったら吹っ飛びそうな程の負荷が身体に襲いかかった。
改めて前方をよく見ると『ドラゴン殺し』と『アサシンズ』が私くらいの大きさで、私四人分くらいある横幅の豚型の武器を振り回す魔物と戦闘を行っていた。
「お、あれはオークキングだね。美味しいんだよマリィ」
「そうなんですか。食べてみたいですね」
「……多分、食べられると思うよ」
あれも戻って売るのでは?そう思ってダーンさんの言葉に首を傾げているとあっという間にオークキングは倒れて、前方でアイズさんが手招きをしている。
ダーンさんの背中に引っ付いたまま死体のそばに行くと、アイズさんがオークキングを指さしてニカッと笑った。
「マリィ、これさっきの詫びでやるよ。だからこれで美味い飯を作ってくれ」
「本当ですか!?」
これを捌くのはさすがに私や弟妹達でもきつい。即座にチャキーンと頭で計算を行って結論を出す。
「じゃあアイズさん、今夜捌くの手伝ってください」
「あいよ。じゃあ代わりに今度酒のつまみも作ってくれ」
「移動中はダメですが、現地に着いたら良いですよ」
ダーンさんに下ろしてもらってオークキングに触れて時間停止空間に入れるとまたダーンさんの背中に乗り込んだ。
その後も何度も戦闘は繰り返されたけどやはりものの数分で戦闘は終わり。
予定よりもだいぶ早い時間で13階層には到着出来た。
「明日は10時出発で予定通り20階まで行く。明後日に23階到着予定だ」
「はい」
そんなことを言いながら血抜きを終えたオークキングを骨も気にせず分割するアイズさんを少し遠目から見る。サイズがでかいから皮は分割してから剥ぐそうだ。
ちなみにそういった作業は玄関入ってすぐの水場で行っている。
血まみれの鎧などを帰宅して直ぐに洗いたい人用に準備したものだ。
皮剥、精肉に関してはハンナさんとエストラさんがやってくれた。
ハンナさんは昼間の謝罪、エストラさんは単純にこう言うのが得意だからだそうだ。
お礼は晩御飯の大盛りで良いよとさわやかに笑って彼は割り当てられた部屋に戻って行った。
切り分けられた肉を一度自分の空間に収納し、厨房へ向かう。
道中、各パーティリーダーが買取所でマイクさんに素材を売っていた。道中の素体は各パーティで分配している様子だった。査定を出すマイクさんもすっかり元気になっているようで安心した。




