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ついに、作戦決行日となった。
労力を最小限に抑えるためある程度現地の近くまでは獣人さんが扉を張りつけた新・扉を運んでくれることとなった。
この新・扉なんと世界樹の樹木と魔銀、さらにモグラの爪をコーティングしそこそこの軽さと強度を備えたところに、エンチャントにより強化が三重に掛けられていると言う代物だ。
さらに用途に合わせて二段階のサイズ変更も出来る。
移動時は私がしゃがんで入れるくらいなコンパクトサイズに装飾を折りたため、街などでは馬が入れるほどの大きさまで広げられる仕様だ。
それだけ強固なのに折りたたみ部位のデザインもまるで装飾品のように複雑な紋様が全体にあって……王様の部屋の扉みたいな感じだ。と言うかよく見れば宝石も埋まってるじゃないか。
……扉を見る度に私たちがつくりました!といいドヤ顔をうかべるガドルさん、フェルンさん、ゴロウさんが頭に浮かぶのは多分気のせいじゃない。何故なら扉を見た護衛団や弟妹たちの反応も私と同じようなものだった。
あまりの華美さに獣人さんが運ぶのを躊躇ったほどだ。正直申し訳ないと思う。
宿屋空間の中には過去最大規模の人数が入っている。ダーツ……迷宮宿屋がカタクロスさんを支持すると表明し、自分たちに出来る限りのバックアップをすることにしたので少しでも勝率を高めるために現地までエルフにとって居心地の良い宿屋を解放したのである。最も、カタクロスさんがお客様に頼み込まなければ実現は難しかったけれど。
と言っても接客は無し。彼等は宿の客でないし今の我らは運搬者兼同じ作戦に参加する仲間だからだ。ただ、リリエラの売店だけは経営している。
カタクロスさんは事前に「宿屋の方々と絶対に揉め事を起こすな、協力に感謝しろ」と言ってくれたらしく問題はそれほど起きないと思われた。
思われていた、が。
出発して十分で問題は起きた。
だが、それは予測していたエルフさんたちではなく
「…あんた本当に何やってるのよ!?」
「………」
アイズさんだった。
エレーヌさんとリッツさんが両サイドで怒り
ポールさんとトレビィさんが申し訳なさそうに頭を下げて
後ろでメルディさんが苦笑いをうかべ、真ん中でアイズさんが不貞腐れる。
ドラ殺らしいドラ殺の様子を見せながら、ドラ殺の皆は頭を下げて最終持ち物チェックをする私たちの元へとやってきた。
「……つまり、アイズさんのバックがゴミと使うものがパンパンすぎてマジックバックステップが使えないと…」
「ああ……情けないけど、だから俺たち総出で片付けるからちょっと中身を出すために広めの空間を貸して貰えないかな?中がどうなってるのかちょっと分からないから…消費期限切れのポーションとか…」
「あ?空間借りんならそれをそのままマジックバックにすりゃ良いじゃねぇ「そんなの根本解決にならないからダメに決まってるでしょ!?」」
「そうだよ、それにそんな理由でパーティ資金から購入代なんて出さないぞ」
まるでリッツさんとエレーヌさんが両親のように怒っている。
となると不貞腐れてるアイズさんは子供か。
随分可愛げがない子供だなあと、ふふふっと笑いが込み上げた。




