6
身長の話はさておき。
家に帰っても自分だけの食事の支度などで済むようになった私はとても暇だったので。最近はわざわざポーションを購入して、家にいる時間も黙々と空間拡張を繰り返している。
仕事中の破棄ポーション…ハキポ飲み放題に加えて、帰宅時の中級ポーションを毎日2瓶程。これでプラス自然回復で毎日4000近いMPで拡張を行う。
すると一日8m程の拡張ができる。3日もあれば縦横高さが8mの空間ができる。
そんな日々を3ヶ月も繰り返して、8m空間が30個ほど出来た時。
ついにようやく。
空間魔法のレベルが8になった!
来た!来ましたよ!ついにゲットしちゃいましたよ!
時間停止効果!!!
念願の!ずっと欲しかった!!
自室ではしゃいでいると、タイミングよく部屋の扉がノックされた。
『…マリィ、ちょっといいか?』
「トールさん?どうぞ」
入室許可を声でもスキルでも出すと扉を開けてトールさんが入ってきた。
その時、テンションが最高潮だった私は満面の笑みでトールさんに飛びついた。
「わ!?マリィ!?」
「トールさん!トールさん!」
首に手を絡めてぶら下がると物凄く混乱したトールさんは動揺しきっていた。が、テンションが吹っ飛んでいる私はそのままぎゅっと抱きついてから、少し離れて至近距離でトールさんを見上げた。
「やりましたよ!トールさんついにやりましたよ!」
「あ、ちょ、マリィ、近い!」
言われてキスをするんじゃないか、ってくらいの顔の近さに我に返ってバッと離れる。
は、恥ずかしい。
真っ赤な顔を隠すように背を向けて私もトールさんも深呼吸をした。
「え、えっと、何か用ですかトールさん」
「あ、ああ。用はあるんだが、どうしたんだマリィ?」
「あ、はい。コホン。いまさっき空間魔法のレベルが上がりましてね!ついに!念願の時間停止機能が追加されたんです!」
嬉しくて嬉しくて堪らなくて。
笑顔で報告をすれば驚いてから、トールさんも嬉しそうに笑ってくれた。
「良かったな」
そして今まで通り。何度も撫でられた頭を、また撫でられる。
これで、迷宮深部に行く冒険者さん達を支えることが出来る。
「はい!」
「……マリィ。マリーロズ」
「……はい?」
元気よく笑うと、トールさんが急に真剣な顔になって私の前に片膝を突いた。
そうすると目線がほぼ同じくらいになる。
真面目なトールさんに、なんとなくピリついた空気に首を傾げて見返す。
「先日、ユーリがAランクに昇級した。なので明日から俺たち『銀の華』はAランクパーティ昇級試験として地下20階層の敵に挑むことになった」
それは…おめでとうと言うべきことなのだろう、か?
銀の華のパーティは18階前後が最奥活動地域だったはずだ。彼等なら、きっと無事達成できると思う。
ただ、なんというか。
彼の言葉を聞かなくてはいけない気がする。
トールさんはしばらく、黙ってから。
しっかり私を見据えて、言いきった。
「ーーーー好きだ、マリーロズ。試験に合格したら付き合ってくれ」
頭が、真っ白になった。




