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そんな注文をシュタインさんとさばいて、酒の追加が入って……あっという間に理性のある酔っぱらいは宿またはキャンプに戻って、大量の飲みすぎた酔っぱらいはキャンプ場に積み重なった。
「程よく出来上がった死体は雑に毛皮でも掛けておけば大丈夫です」
「すっかり手馴れたなマリィ……」
キリッとシュタインさんに酔っぱらいの対処を説明していると何故かトールさんが苦笑いで頭を撫でてきた。アイアンに来てから特に酒盛りの機会が増えたのでもう慣れたものです。
翌朝、新人教育の傍ら拡張をしつつ全体の様子を見ようと思っていたのだけれど
扉の前にデデーンとお客様が待機していた。
お客様はお客様でも冒険者達では無い。
「やっと来たかマリーロズ。お前に話がある」
そこには凶悪な顔をした巨大ドワーフ……鉱夫組合の会長さんだった。
「おはようございます、どうかしましたか?」
ダーツとトールさんと、たまたま出てきたシュタインさんと話を聞くと会長さんは出入口に座り込んだ状態でどーーーん!!と握りこぶしで地面を叩いた。
その振動で軽く地震が起きたが酔いつぶれた冒険者達はピクリともしない。それはそれでいいのだろうか冒険者達よ。
「どうかしたも何もどうなってやがる!!次回の迷宮ダイブは宿を休むと言うのに冒険者共だけ泊めるそうじゃねえか!!」
えーと……それは……、うん。
「次回の迷宮ダイブで先日発見された女王蟻の討伐レイドを行うので、冒険者達のバックアップで宿を営業する余裕が無いんですよ」
「空間の設置場所もなるべく巣穴に近づける予定ですし……」
真っ直ぐに休む理由も冒険者を受け入れる理由も告げたのに、会長の怒りは全然収まらない。
「巫山戯るな!前回みたいにすればいいじゃねえか!」
「前回よりも冒険者の人数が多いので私一人じゃ対処しきれないんですよ」
「じゃあ従業員なんざいらねえ!場所だけ寄越せ!!」
……はあ?場所(空間)だけ寄越せって、宿屋の私を舐めてるの?
うちはあくまで『宿屋』であって『家』じゃないんだけど。
失礼な物言いにムカッとするものの睨みつけると会長さんは気まずそうに視線を一瞬逸らしてから真っ直ぐ目を見て「悪い、カッとなって言いすぎた」と謝った。
謝ってくれたからその件はまあ許してもいいけど……改めて落ち着いた会長さんが真っ直ぐ頭を下げてきたから困ってしまう。




