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side???
「あの顔は誤解してんなあ」
「マリィは自分の空間魔法が規格外だという自覚が薄いからな。ラクーンの熱を遮断したように恐らくアイアンの魔力も無効化するだろう」
「なあ、あんた達はそれでええの?」
「…何がだ」
視界の先ではマリィが商店街の道路を作るために飛び回っていた。文字通り浮かんでいる。上からちゃんと出来ているか確認をしているようだ。
「ぬるま湯みたいな過保護で甘やかしてええんかって聞いてんねん。しばらく様子を見とったけどなにあれ。なんも教えんと、考えさせんと、綺麗なとこだけを見せとってええんかって聞いてんねん」
にこにこと笑いながらもマキエの言うことは痛いところのど真ん中を貫いた。
そしてそれは俺だけでなく、ダーツやアイズ、エレーヌの痛いところを貫いて全員が渋い顔で黙り込んだ。
「…過保護な自覚はある」
「ほんで?何もせんの?」
初めて出会った時。マリィはまだ12歳だった。街の子供にしては小さく痩せた体は歳よりも幼く見えて。更には冒険者という身体が資本のガタイのいいヤツらに囲まれてるせいでーーーー俺たちにとって、マリィは小さい子供で守らないといけないと言う先入観が強いのだ。
子供じゃないのはわかってる。小柄だが色艶を帯びた表情だって知ってる。だが、それでもーー。
「ダーツ、あんたの姉ちゃんやろ。あんたが甘やかしてどないすんの」
「…僕は、きつい仕事を知ってるから苦労させたくなくって…」
ああ、そういえばダーツはギルドに来る前に別の場所で就労経験があったな。リリエラもネロもだ。
「苦労させた無いのは当たり前どす。せやけどなあ、あんたに何かあったら?うちが裏切ったら?あんさんらが迷宮で死んだら?馬鹿な国が戦仕掛けて来よったら?過保護もええ加減にしぃや。そんときはマリィは一人で生きていかれへんやろ」
何か、あったら。
俺はあの時ラクーンの迷宮でロディに救われなければ確実に死んでいた。
もし死んでいたら。抑止力を失ったマリィがどうなったか。それは常々想像する最悪な想定の結果だ。
死ぬまで飼い殺しでマジックバッグを延々と作らされるだろう。…思えば今もそれとそう変わりない。
宿屋を餌に拡張をさせ続けてるようなものだ。
「守るのはええよ。でも出来ることはちゃんとやらせんとあかん。情報も教えんと自衛せんやろ?あの子を思うんやったら、何でもかんでもやってあげて、拡張だけさせるなんてあきまへん」
「そう言ってマリィを一人にさせてさらわせる、なんて腹じゃねえだろうなあ?」
「そう思うんやったら警戒でもしとき。うちはあんた達にもマリィにも疑われても全然かましまへんわ。むしろ疑うたらええのに。マリィを狙うもんは多いんやさかい」
現時点でマキエの魂胆は読み切れないが、もし商店街計画が始動したならばマキエのことはある程度信頼できるだろう。
何せ色々な派閥を巻き込んで作る予定の商店街計画だ。それらの根幹にはマリィの空間がある。だからマリィを死んでも守るだろう。マリィを守るための人脈が、マキエをも縛るのだ。これだけの計画が失敗したらたとえマリィを売って稼いだとしても、商人はもう出来ない上に各国に睨まれるだろう。




