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私も手を挙げる。
「現在宿屋に使う空間は明日には拡張が終わります。アイアンに入ってから物資調達をしつつ宿屋を整える予定です。二日もあれば終わると思います」
「…マリィ、ちょお悪いけど相談があんねや。本館の方なんやけどもっと店増やせへん?」
嬢はんって呼ばれなかった。
その事に戸惑いつつもふむ、と考える。
拡張は最悪後回しでも行ける。ちょっと訓練所が数日使えなくなる程度だ。
「そんなに増やして人手が足りるのか?」
「それなんやけど、これだけ広いのに殆ど空きスペースは寂しいさかい貸しだそう思てるんや。日借り、街に滞在期間での貸出、うちらと一緒に旅する借出。将来的に移動商店街なんておつやない?」
「と、マキエが急に言い出すから徹夜で間取りを考えたんだ。出入口付近に馬車置き場。露店エリアにメインエリアに飲食エリア。さらに舞台も設置しようかなと考えている」
シュタインさんが机に広げた大きな紙は一晩で書いたとは思えない凝った配置だった。これは…ちょっと、時間がかかりそうだ。
「…こんなに店を誘致できるのか?」
「そこも考えとります。ラクザルバ商会のネットワークを通じて出店者募ろうと思ってます。常時出店しはる店には…マジックバッグの貸出とか、どないどす?マリィは昔バッグの貸出もやってはったんでしょ?」
「それなら…釣れるか?」
なんか規模が大きくなってきてよくわからなくなってきた。
とりあえず私がやることは
本館に商店街を作る。
店長にマジックバッグを貸し出す、でいいのかな。冒険者に貸し出してたのみたいにすればいいんだろう。それなら出来る。
「そういえばなあなあにして聞いてなかったがマジックバッグは売るのか?」
その言葉にハッとしてマキエ姐さんを見ると全員が同じような表情でマキエ姐さんを見ていた。
マキエ姐さんはみんなの視線を集めても動じることなくニッコリと笑った。
「悔しない?並べた商品無視されて、マジックバッグばかり頼まれるんは?うちはそんなのはごめんどす。せやからうちの店では売らへんよ」
売らないのか、そうか。
マジックバッグはいつだって要求されたから変な感じがしたけれど悪くないし…マキエ姐さんらしくていいと思う。
「ただそれやと焦れたお人がマリィに危害を加えるやろうさかい、月にまとまった数をラクザルバのオークションに流そうと思てます。金さえ出せば手に入んのやったら無理に奪いに来はらへんでしょ」
「そんなことは無いだろう。馬鹿は利益だけを求めて来るはずだ」
「そらそうどす。そやけどこうしたらラクザルバの大商人達も貸し出されたマジックバッグ分や安定供給のために動いてくれはるやん。マリィを守るにはうちだけのコネじゃ足らへん。他の大商人のコネも必要やで」
なるほど…?難しい話はちんぷんかんぷんだけどマキエ姐さんが頑張ろうとしてくれることはわかった。
突っ込んでいたトールさんも納得したのか、護衛団として参加していたエレーヌさんと目で会話してから「わかった」と言って話は落ち着いた。
「じゃあ話は落ち着いたと言うことでアイアンの買い付け候補の名産品、売り筋品、それから宿組のために迷宮情報だがーーー…」




