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右手にはMP高級ポーションが2本。せっかくだし高級ポーションを使って思いっきり農牧場にMPを注いで一気に拡張するんだ 。今日の分のポーションはもう飲んじゃってたからトールさんにバレたらきっと魔力酔いをするからと、没収されるだろう。だからこっそり飲むのだ。
ニヤニヤしながら歩いていると、薄暗い廊下の先をマキエ姐さん歩いているのが見えた。
そのままマキエ姐さんは客室のひとつに入っていった。
………どうしたんだろう。
気になってそっとマキエ姐さんが入った客室を覗いてみると…マキエ姐さんは椅子に座って窓の外を見ていた。その腕にはラッパ飲みしてると思われる酒瓶があった。
「ん?嬢はん、どないしました?」
「マキエ姐さん、何してるの?」
さっとポーションはしまって、こっちおいでと呼ばれたのでマキエ姐さんの隣に行く。
マキエ姐さんは酒を飲みながら窓の外を…設営された商店を見ていた。
どうしたんだろうと思ってる間にマキエ姐さんはぐいっと酒瓶に口をつけて酒を飲んだ。
「……ダーツ君、あの子はあきまへんなあ。商人やるには優しすぎますわ」
ダメ、と言う割には嬉しそうで。
何となく、農牧場にMPを注いで私もポーションを飲む。
「優しさで何でもかんでも買わはったら、損しますぇ」
ああ、酒と芋の事か 。確かに商人からしたら安いからと言って売れる見込みがないのに大量に買うことは不良在庫になってしまうかもしれないから、ダメなんだろう。
でもそういう割にマキエ姐さんの表情は本当に嬉しそうだった。
「でも羨ましい。うちもああなりたい。困っとる人に迷わず手をさしのべられるようなりたいどす」
ああ、だから笑ってるのか。ダメ出しをしているけれどそれはそれで認めてくれているんだ。
こくこくと二本目のポーションを飲んで…ふっと笑う。
「私たちは色んな人が手を差し伸べてくれたから生きてこれましたからね」
院長、シスターロゼッタ。お兄ちゃんにお姉ちゃん、引退した冒険者のおばちゃん。
冒険者ギルドのみんな。
ーーーーなんの力もない、親もいないマリーロズは色んな人の優しさのおかげでここまで生きてこられた。
「それだけやあらへんやろ。理不尽な目にも遭うたやろ」
「……まあ、多少は」
食事が少なかった。邪魔だと追い払われることもあった。
それでも。私の中は優しい記憶がいっぱいだ。
「…うちなあ、どこでも、なんでも買えるようにしたいんよ」
「…どこでも?」
「そ。街じゃないと買われへんのに、マキエ商会がきたら全部そろた!さすがマキエ商会!って言われるようになりたいんよ。街でも村でも関係あらへん。どこででも、そう言われるようになりたいんや」
椅子を作って、マキエ姐さんの隣に座って外を見ながら…MPを注いで三本目のポーションをまた飲む。
なんでも揃う商団。村も街も行く商団。それはとても素敵に感じた。
そうか、だからマキエ商会は転移設備を使わないで馬で移動をしているんだ。
「でもなあ、金も場所も、運び手も何もかも足らへんのや。やからなあ…困っとった村人に迷わず手をさしのべられたダーツが羨ましいんどす。うちは、躊躇うたさかいね」
マキエ姐さんも夢を追いかけてるんだ。立派な宿屋をしたい私と同じで。
こてっと甘えるように寄りかかってもマキエ姐さんはそのまま甘えさせてくれた。
「なあマリィ嬢はん。うちはうちの夢のためにあんたを利用する。そやさかいあんたもうちを利用して……一緒に頑張ろうなあ」
マキエ姐さんは温かくって、柔らかくって、頼もしくって。
「……うん。頑張ろうねえ」
とくとくと言うマキエ姐さんの心音を聞きながら、目を閉じるとそのまま眠りに落ちた。
ああ、農牧場にMPを注いで…。




