番外編 悪い冒険者
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「おう、じゃあこれからよろしくな」
新たにうちのギルドの所属になった冒険者に声をかけると、四人組は意気揚々と迷宮の方へと走っていった。
「今度のは治癒士まで引っこ抜いて来たんですねえ…」
「迷宮で食った肉の味が忘れられないんだと。だからって王宮での仕事を辞めるたあ、若さってすげえよなあ。あいつら一応迷宮調査に来ただけあってエリートだったのによう」
ラクーンが誇る空間師はもう居ない。だが、彼女が残していった足跡はあちこちにまだ残っている。
そのひとつが、最近王宮務めから冒険者に転職をしたヤツらだ。先程の奴らで二組目でトータルで9人になる。
マリィについてのあれこれを探るやつかと思い、俺自ら直々に面接をしたけれどその本性は恐らくただの肉好きだったと思われる。
マリィが居なくても迷宮に魔物は居るから別に問題ないですよね?と聞かれて逆に動揺した。だがな、あいつらはわかってない。
最高の荷物持ちがいないとどんだけ荷物で苦労をするか…。
始めに来たヤツらは死体?魔法で燃やせば良いじゃないですかと言っていたが、迷宮内で魔法を打つMPがどんだけ大事かあいつらまだわかってない。あと水を運ぶしんどさも。
「彼等は深層に行けそうですか?」
「あるのは実力だけだな。実力だけじゃ、迷宮攻略できねえさ」
「では今のところ28階休憩所はハルティの独占になりそうですね」
「どうかね。外部ギルドのやつも来るかもしれんが…持ち帰る量は減るから今までほどは稼げんがそれなりには稼げる。なんとも読みにくいな」
あくびをしてギルドの中に戻ると、マイクがニコニコ笑って一枚の紙を渡してきた。
何か問題があったのかと目を通してーーーぷっと吹き出す。
「なんだこれ、マジ物か?」
「至って真面目な物ですよ。アイズがいれば適任だったんですけどねえ」
「あいつは人に物を教えるのには向いてねえよ」
うーん、適任なのは数人いるがこればかりはなあ。冒険者業を辞めないといけないし希望者を募るか。
と、思って掲示板に張り紙をしに行くと…真ん中にドドーンと一枚の張り紙がされていた。
『空間師の情報を求む。
名前、性別、容姿、逃亡先情報、優良な情報には10万ロイ』
「なんだこりゃ。いつ貼られたんだこれ…ってギルドを通さない野良募集か」
「さあ?」
マリーロズの情報は高位冒険者ならばギルドで金で買える。それを通さないってことはギルド外のやつの依頼ってことだ。
掲示板にはギルドを通した依頼も通さない野良依頼も張り出すことが出来るが…どうしたものかと思っているとマイクは迷わずビリッと野良募集の紙を掲示板から外した。
「はい、場所空きましたよ」
「おいおい、良いのかよ」
そう言いながらも空いたど真ん中に俺が持っている依頼書を貼り付け、依頼書の右上にギルド依頼と書き込む。
「良いんですよ。野良依頼は掲示板が埋まってる時は外すこともありますと明記されてますからね。アンリ、ギルド依頼で掲示板を埋めといてください」
「はーい!」
「随分とまあ、悪ぃ奴だなあ」
「これでも手塩にかけて育てた弟子を取られて怒っているので」
あーあー。そりゃそうか。
不機嫌そのものなマイクの背をバンバンと叩く。
「まあ元気にしてるから良いだろ。今日は飲みに行くか?」
「仕事が詰まってますので」
そう言うとマイクはさっと職員スペースに行った。それを見送ってから……通路の奥の、マリーロズが陣取っていたエリアを見る。
当然の如くそこにはもう何も無い。
「…娘が嫁に行くってのはこんな感じなのかねえ」
しょうがねえ、今日は綺麗な姉ちゃんの居る店にでも行くか。
その予定は残念ながら潰えることとなる。
『教師募集
聖なるマリーローズ学園にて冒険者業を教えてくれる教師募集。寮あり、住み込み可。子供相手の指導が出来る人物募集。月給は……』
中央に張り出された一枚のギルド依頼書。
「なあ……マリィちゃんが帰ってきた時、『俺セント・マリーローズで働いてるから!』って言ったら……楽しそうだよなあ」
「楽しそうだなあ」
「あ、おい待て抜けがけすんなよ!」
その依頼書に冒険者が殺到し、まだ教職が決まってもないに関わらず冒険者引退届けを出すものが大量に出たから。
ギルドマスターガンツは、そんな冒険者どもを一人一人怒鳴りつけるのが忙しくてその日は丸一日ギルドに籠ることとなった。




