番外編 それは五年目にして知る衝撃の事実
一話読み切りの番外編です。
ブォォォン!
ブォォォン!
まるで魔獣の鳴き声のような風切り音に思わず笑いながら、杖をしっかり握って牧場の拡張を進める。
杖はダーンさんのサブウェポンをお借りしている。メイン武器を失った皆の予備装備の中で彼の杖が一番詠唱速度上昇効果が高かったからだ。
ちょっとだけ、魔法使いみたいでワクワクしながら拡張を使っているのは秘密だ。
移動中の現在、一部のメンバーは馬車の護衛に出ているが残りのメンバーは…牧場で筋トレをしている。と言ってもだいぶ広く拡張した端の方で行っているので近くに家畜は居ない。
先日迷宮で全員が全員重傷を負って、それを魔法とポーションで強引に治したため微妙に感覚に違和感が出てるそうだ。
「こう、振り下ろした感じがいつもより遅い感じがするんだよな」
と言って短剣を振り下ろしたエストラさん。けれど彼の動きの何が遅いのかはさっぱりわからなかったのでとりあえずへーとだけ言っといた。
なので、違和感を消すために皆筋トレに勤しんでいる。
私も何となく、まるで大道芸?ってくらいアクロバットに飛び回るみんなに混ざって拡張をしている。
「マリィ、ちょっとあの辺とかに足場出してくれないか?ジャンプで飛び移って行く感じのが欲しいんだ」
「良いですよー」
頼まれるままに一般人では到底無理なアスレチックを作ると、スカウトの皆はそこでぴょんぴょんし始めた。
おかしい、身長以上の高さを軽々飛んでるぞ…!
スカウトの人達はあっちこっちを飛び回って体を解して
魔職の人たちはストレッチ?や走り込みをして
ブォォォン!
ブォォォン!
剣を使う二人は、なんかおかしい風切り音立てながら素振りをしている。
「なんかそのまま風を切ってカマイタチ!とか出来そうですよねえ」
あまりの爆音にそんなことを言ってみれば、アイズさんもトールさんも揃って不思議そうな顔をした。
「出来るぞ?」
「空気を切るくらい余裕だぞ?」
出来るのか、出来るのか…。
Aランク冒険者怖い。そんなことを思って引いていると、しゅたっと静かに隣にムサシさんが降りてきた。
二階建ての建物より高い位置から飛び降りてきたなんて、突っ込まないぞ。突っ込まないからな。
「そういえばさあ、マリィちゃんが空間の中にいても移動は出来るんだねえ」
そして落とされる爆弾発言。
現在、移動中である。
馬車の幌の中に扉を設置して移動中である。
私は、空間の中にいる。
「「「「確かに!」」」」
何人が同意したのか分からないくらい皆がハッとして声が揃った。全員が衝撃を受けていたけれど、一番ショックを受けていたのはおそらく私だろう。
え、つまり。
あんな苦労をして歩かなくても良かったと。
長時間おんぶされたり
籠で運ばれるという辱め受けたり
汗で恥ずかしい思いをしなくても良かっただとーーーー!!!
それは就職して五年目にして知る衝撃的すぎる空間魔法の新情報だった…。




