25
「そういえばガンツさん。28階の入ってすぐのところに宿屋空間を固定して置いてきちゃったので、私が居なくなっても気にしないで使ってください。レオリオネロ、みんなに私物の入ったマジックバッグを渡して」
「おま、28階かよ……もう少し手前が良かったなあ…まあ使うけども」
そしてマイクさんとガンツさんと別れの抱擁を交わす。
12歳になってからかれこれ…もうすぐ五年。
お二人には大変お世話になった。
「お元気で。またいつか絶対に戻ってきてくださいね」
「孤児院の方は任せろ。今まで色々とありがとうな、持たせてあった売りもんは餞別で持ってけ」
「……今まで本当にありがとうございました」
泣きそうになって慌てて横にいたレオを前に押して挨拶を代わってトールさんに抱きつく。
…ちょっぴり泣いたのはバレていたのだろう。トールさんは何も言わず抱きしめてくれた。
弟妹たちも挨拶を終えて、冒険者たちも挨拶を終えて。
治癒院を出るとそこには2頭引きの大きなほろ付きの馬車が五台止まっていた。
「これがうちらの商売道具どす。でもそうどすな、マリィお嬢ちゃんがいれば馬車は一個でもええんどすかな?」
「とりあえずしまっておきますか?自宅に使っていた宿屋は今はないので一番大きくてしばらく使う予定の宿なら馬車馬ごと収納できますけど」
「なるほど。じゃあちょっと待ってくださいまし」
そういうとマキエさんは馬車の御者や色んな人と話して、八名ほどの人を連れてきた。
「じゃあとりあえずこの八名とあれ以外の馬車をしまってくれますか?」
「はい。トールさんたちもどうぞ。リリエラ、初めて中に入る人達を案内してあげて」
「はーい!」
扉を開くと元気よく返事をしたリリエラに続いて、ボロボロの皆と弟妹たちと指定した人達は中に入っていった。
残ったのはダーツとトールさん。
「中に入らなくって良いんですか?」
「護衛がいるだろ」
まだ、ボロボロなのに。
それでもそばに居てくれると心強い。マキエさんと共に唯一出たままの馬車に四人で乗り込む。
幌の中には五人の男性が座っていた。
「サバエ、出しておくれやす」
「あいよ」
そして御者の人にマキエさんが声をかけると馬車が走り出した。
幌は私がちょっと屈むくらいのサイズだったけれど、広さは九人全員が座れるくらいの広さはあった。
「仲間になったのか」
「ええ。この子が噂の空間師ちゃんのマリィお嬢ちゃんどす」
広さは、あったんだけども。
「そうか、自己紹介をしよう。俺はーーー「ちょっと待ってください!」」
人生初の、馬車だった。
そんな馬車の乗り心地は………めちゃくちゃ揺れてた。
喋ったら舌を噛みそうなのによくみんな無事だと思う。
「ゆれ、ゆれが、ひど、ひどいの、で、とび、とびら、」
体がめっちゃ弾みながらよろよろと壁……幌に百人宿屋の扉を付ける。
そして中に転がり込むと、動かない床でやっと落ち着いた。




