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「リッツ、全員分いけっか?」
「良いよ。『アイスバリア・エンチャント』」
リッツさんが魔法を使った瞬間、一気に熱気が消えた。その涼しさに感動する。冒険者、すごい!!
「良し。これで28階入ったとこまで行くぞ」
アイズさんがそう言うとリッツさんがにこにこ笑ってしゃがんで背中を出してくれた……が。
彼のローブの背面には塩が着いていた。言わずもがな、汗が乾いたものだろう。
ーーー気まずい。とても気まずい。
「あ、あの。おんぶと籠ってどっちが楽ですか?」
「ん…?そりゃ籠の方が両手を使えて楽だけど、マリィちゃんは籠は嫌なんだろ?」
「入ります」
そっちの方が精神的に断然いい。そう思って籠を取り出すとニヤニヤ笑ったアイズさんが抱き上げて、中に入れてくれた。
「籠入り娘一丁あがりってな」
からかうアイズさんに手を伸ばすもひょいっと躱されて、すぐにリッツさんに背負われる。
「ユーリ」
「はいよー」
そしてトールさんが何か言ったと思ったら籠の中に拳大の氷がひとつ入ってきた。
上を見上げるとユーリさんがにこにこ笑ってる。確実にユーリさんの魔法だろう。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
涼しくて冷たくて気持ちいいそれを持って、額に当てると籠が揺れて出発するのを感じた。
籠の中の揺れで戦闘を察することは数回あったけれど、籠から顔を出すことは無い。それがどれほど無謀なことなのか重々承知してるからだ。
代わりに自分のシャツを見る。
……リッツさんに負けないくらい塩を吹いている。
ふと思って、集中してーーーシャツの表面を撫でながら塩 のみ を空間に収納する。
いつもは中から取り出す際に汚れをとっていたけれど、今回はその逆だ。汚れのみを取り入れる。
結果として塩は取り除くことが出来た。
が、それは触れた部分だけであった。
私の認識力もまだまだ甘いな、と思ったその時。
始めは拳大だった氷が完全に水へと変化してーーーー空気がパリッと乾燥した強烈な熱気を感じた。
先程までは夏場の厨房のようなまとわりつく暑さで
今は夏場に太陽に照らされた石壁のような、カラッとした暑さだ。
「27階に着いたよ。大丈夫かいマリィちゃん」
籠の外から聞こえるリッツさんの声にしばらく考える。26階の移動には数時間がかかった。推測では27階はもっとかかるだろう。
となると、この暑さはきついものになるけど…28階に着いたらそこで拠点を張る予定だ。
たかだか数時間なら我慢出来るんじゃないだろうか。
「マリィちゃんの返事が無いから治癒師ちょっとチェックしてー」
「はっ、大丈夫!大丈夫です!」
考え込んでいるとリッツさんの声で三人の治癒師が上から覗いてきた。
慌てて手を振って無事を主張するが…全員が渋い顔をした。




