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結局何だかんだと、百人宿屋は最後まで忙しかった。
「世話になった。マリーロズ嬢等はこのまま1週間追加滞在をするとのことだが、健闘を祈る」
「ありがとうございます」
著しい探索の遅れ。
想像以上にバカ売れしたスイーツにお茶。
ーーーそして兵士さんたちを魅了した極上のお肉。
「ダーツのことをよろしくお願いします」
「心配しすぎだよ姉さん」
とにかく売って作って売って作って。そんな日々が終わりだと思うと感無量だ。
兵士さん達とダーツは今から先に地上に戻る。本当はダーツも深層について行きたがったけれど買い取った物の清算と、販売があるのでそうもいかなかった。
ここから先は冒険者3パーティとレオとリオとネロとリリエラのみで向かう。
……魔物の素材の買取査定は地上に出てから行う予定だ。
「そんなことより姉さんの方が気をつけて下さいね。28階は初めてなんですから」
「安全第一で引きこもります」
永遠の別れでは無いが、肩に手を伸ばしてダーツを抱きしめる。
大きく立派になったダーツはふっと笑うと抱き返してくれた。
「ではこれより帰還する。マリーロズ嬢、貴殿の協力に感謝する。……また、会いましょう」
ドロワ様は隊長らしくキリッと言ってから、柔らかくふんわりと笑った。
その笑顔にちょっと硬直してる間に100人規模の大隊は消えてしまった。
「さあ行くぞマリィ」
「はーい!」
そして私は呼ばれるままにリッツさんにおんぶして貰った。
私が今まで宿屋を開いていたのは25階。
故に、26階に足を踏み入れたのは初めてだった。
26階はそれまでの階と全然違った。
具体的に言うと……
「…暑い……」
真夏の厨房みたいなむおんとした暑さが、26階に踏み入れた瞬間漂った。
「まだまだ暑くなるから、休憩したいなら言ってね。マリィちゃんにはちょっと辛いと思うから」
「ありがとうございます…」
暑いのは、きつい。確かに辛い。
だが。
それ以上にリッツさんと触れ合った場所の汗がめちゃくちゃ気になる。
絶対、リッツさんの背中はびちゃびちゃだろう。私の前面も。
「お前ら一回止まれー」
これは精神的にきついと思った瞬間、前方を走っていたアイズさんが集合をかけた。
そして安全地帯を作るとそこに全員が集まり、私も背中から降ろされた。
ーーーー想像通り、リッツさんの背中も私の前面も汗だくだった。シャツが透けちゃうので慌ててタオルで前を隠す。




