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「……え、申し訳ありませんがもう一度お聞きしても?」
「冷たい茶の大量購入と、ファイアーバードの調理指導と、現在販売中の焼き串のまとめ買いをこれの買取価格分で買えるだけ買わせていただきたい」
これ。そう言ったドロワ様の隣にあったのは見慣れてしまったファイアーバードの死体だった。
茶と焼き串と情報を、この一体の販売代金で賄うってことか。
一兵卒の人がやるのであれば問題だが…ドロワ様は今回の総隊長だ。彼に言われたのならば…断る余地は…無い…無いのだが…
短い休息だったなあ。
「わかりました。纏めてお渡しした方がいいですか?それとも四日間に分けますか?」
「分けてくれると助かる。具体的に言うと食事に茶と串焼きを添えつけるような形になればいいと思っている」
「…串の数に限りがありまして。皿での提供でも……」
一瞬遠い目をするも。虚ろな目で接客中のダーツ以外の弟妹と見つめ合って頷くと即座にダッシュで厨房に駆け出した。
「あいつら迷宮の味に惚れたからな。このまま冒険者になる奴らも出てくるんじゃないか?」
「笑えないですねえ」
大鍋で沸かした湯に、布で包んだ茶葉を入れてぐるぐると掻き回しながらトールさんの言葉に真実味を感じる。
ケーキもお茶も、所詮素人に毛が生えた程度の物なので地上でもっと美味しいものは食べられるだろう。
だが、深層の魔物の肉は別だ。
私がここで宿屋を始めてだいぶ流通するようになったとはいえ、買い付けに来る商人は外国からも多数来ている。故に国内であってもそうそう食べられない。
食べたければ冒険者になるのが手っ取り早いだろう。
「そういえば、トールさん達は美味しいって言ってますけどあまり興味は無さそうですね?」
「……マリィが来る前は予定外で狩った獲物は必死に食って荷物を減らしてたからな……美味いが、無理に詰め込むように食ってたからあまり食べたいとは思わないんだ」
「…うわあ…」
美味しいのに、それはとても残念だ。そこまで考えてはっと気づく。
「もしかして、迷宮食材使った料理は嫌でしたか!?」
「大丈夫だ。最低限の荷物でって言うと塩を振って食うくらいしか無かったからな。マリィやネロ達のご飯は毎日食べたいくらい美味しいぞ」
トールさんも肉を切っていて手が空かないのだけれど。空いてたら絶対頭を撫でられていた。
表情が、目が、愛しいと雄弁に語るようだった。
「おー!あれ公開プロポーズだよなリオ!」
「え、じゃあトールさんって姉ちゃんだけじゃなくて兄ちゃんにも!?」
「こら、お前ら邪魔するんじゃない。こういう時は空気を読んで黙るか部屋から出ていかないとモテないぞ」
「それは困る」
「え、別に俺はもてなくたって良いしー」
そんな私たちの背後でムードぶち壊しな弟達。憎らしいところもあるけれど、こんな弟妹が大好きだからもうどうしようもない。
さすがに照れたのか、はにかんだトールさんと見つめ合ってニコッと笑い合った。




