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「実はこれ俺が獲ってきたんじゃないんだ。今日同行した部隊の奴らが狩ったもんなんだ」
「…ならば余計にギルドで買い取らないとダメじゃないですか。彼等の戦果は国にまとめて支払わないといけません」
「そう!それなんだよ!!」
迷宮宿泊費も食費も全部国に出してもらっている、国軍である彼等の戦果は全て国に回す契約になっている。
個人的に金を得たならばそれは着服に等しい。
「今日一緒に狩りに行ったヤツらな………所持金もう使い切ったらしい」
エストラさんの言葉に私も、ダーツもトールさんまでもが頭を抱え込んだ。
「…そもそもこれは遠征扱いだからな。売店が出るとは聞いてたみたいだが…あいつら、金はあまりもってこなかったらしい」
つまりあれか。
搾り取りすぎた訳か。
「あの、お金が欲しいのはわかりましたが半分焼くって言うのはなんなんですか?」
「ああ、それは単純に美味かったらしい」
「…欲望全開だな」
「あーうん、俺と戦った奴らももう手持ちが尽きると言ってたなあ」
「でも、あと五日なら我慢すれば良いんじゃないですか」
「違うぞマリィ。あと五日しか、食えるチャンスが無いんだ」
まあ、確かになあ。
とりあえずダーツと相談をしようと思うけれど答えはもう出ている気がした。
「ダーツ、どうする?」
「んー、一つ買い取ったら他の人もわらわらくると思うんだ。そうしたら誤魔化しきれなくなって揉めると思う」
「だよねえ。私もそういう事情なら申し訳ないけどダメかなって思う」
「というわけで申し訳ありませんけど結論はダメです」
断るの気まずいなと思っているとダーツが代わりに堂々と言ってくれた。
頼もしい弟の姿に感動しているとエストラさんも薄々そうなると思っていたのか苦笑いでファイアーバードをしまって頷いてくれた。
「わかった。元々かなり無理を承知で言ってるからな。あいつらには給料の前借りでもするように言っておくよ」
この件はそれで話は終わった。
そしてその情報通り、この日の売上はだいぶ下火になってきたが…まあ、持ってないものは仕方ないかと職員一同納得してゆったりと落ち着いて生産をするようになった。
ネロは通常宿屋で使う食材の仕込みを。
レオは中級ポーションの制作特訓を。
リオもより強固な結界の訓練をして、ダーツとリリエラはまだ忙しかったけれどそれでもかなり楽になってきた。
残りあと四日。このままのほほんとして居られると……アサシンズ以外の誰もが思っていた。




