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みんなが手伝ってくれるのと、焼き串屋のおかげで仕事はかなり減った中での貴重な仕事だったのに。
嬉しいけど仕方がないなあと、ふっと笑ってテーブル周りに椅子を増やして私も一緒に肉を刺す。
すると、入口からひょこっとエストラさんが顔を出した。
「あ、おかえりなさい」
「おっかー」
エストラさんは私たちを見て、作業を見てふっと笑った。
「ただいま。ティースはサボってないか?」
「失礼な!俺ちゃーんと手伝ってるし卵も持って帰ってきたのに!!」
「ああ、はいはい。マリィちゃんとネロにちょっと個人的な頼みがあるんだが良いか?」
「はい?」
肉を刺す手はそのままに首を傾げると、エストラさんは部屋の端まで行って……どデカいコウモリみたいな大きな魔物の死体を取り出した。
こいつは!
忘れもしない、私がやけどした魔法を使ったやつだ!!
「あくまで俺個人的な頼みなんだけどな、ギルドじゃなくってマリィちゃんにこの鳥を半分買い取ってもらって、ネロに半分調理してくれって言ったらどうなる?」
「……」
「……」
ネロと見つめあって、二人で首を傾げる。
「確かにお金を出すのは私ですけど…」
「調理するのは俺だけど……」
「「金額を決めるのはダーツ(兄ちゃん)だからなあ…」」
見事なハモリを見せると、エストラさんはガックリと肩を落とした。そして玄関から「呼んだー?」とダーツが顔を覗かせた。
「あれ、ファイアーバードですね。買取じゃないんですか?」
ファイアーバード…ファイアーバード!?
あのジューシーで旨味溢れる肉が、こいつ!?
さっきまで串に刺していたのがこいつ!?
そう思ってまじまじとファイアーバードを見てみるも。
……どう見ても巨大なコウモリだった。
「あー…うん、こいつはちょっと訳ありでね。ギルドじゃなくて個人で買ってもらいたいんだ。その分値引きしてもいいから」
「…私たちはギルド職員であって商人じゃありませんよ。姉さんの備蓄を流用することもありますが、その分はきっちり姉さんにお金を渡してます」
お陰様でここ数日、ダーツが良い笑顔で溜めた色々な在庫が捌けて万々歳です。
と思いつつもまあ、エストラさんがこんなことを言うなんてとても珍しい。
トールさんを連れてこちら側に入ってきたダーツに「どうしてもダメ?」と尋ねてみると間髪入れず「ダメ」と返された。
「エストラさんのことは信用しています。けれど、事情もわからず個人的に買ってくれと言うのは不安要素が多すぎます」
「どうした?ギルドを通さないって何があった?」
トールさんもダーツも疑うと言うより、心配そうに声をかける。
そんな二人を見てエストラさんは両手を上げた。
「ちょっと音が漏れないようにしてくれるか?」
音が漏れないように。空間の扉は設置解除出来ないし…と考えているとダーツがさっと結界札を使った!そうか、その手があったか!私も使い切れないほどの結界札持ってるのになあ…。




