6
「ただいまマリィちゃーん。冷たい果実水ちょーだい」
「おかえりなさいティースさん。はい、どうぞ」
「ありがとうー………ぷはー、うまー!」
本日のアサシンズ一番帰宅はティースさんだった。
一番とはいえ疲れきったのか装備の布部分が汗でびっしょりだし、見える肌にも大粒の汗が滲んでいる。
迷宮入りしてから二週間。
スパルタな短期集中戦で迷宮内での立ち回りを掴んだ各兵隊さんたちは、アサシンズのメンバーの個別指導を受けながらではあるけれど、21階層前後でも無事戦えるようになった。
当初の予定では25階で宿を構える予定だったが、25階では活動出来ない部隊も居るだろうとドロワ様が決断し結局21階で活動する事になった。
「あ、そーだ。はい、マリィちゃん達にお土産ー」
そう言ってティースさんがポケットから出したように見せたのは……ファイアーバードの卵だった。
明らかにポケットに入り切らないサイズに目を丸くさせるが、多分実際はどこかに隠し持って居るマジックバッグから取り出したのだろう。
「ありがとうございます。でも、仕事中に良かったんですか?」
部隊と行動をともにしてる最中に得たものならば、部隊の戦果では無いだろうか。
それを心配するもティースさんはケロッと笑って手を横に振った。
「いんや?これめっちゃ高い所にあってあいつら気づいてなくってさ。ジャンプして一瞬で取って土産にしたいんだけどって言ったら許可くれたよー」
めっちゃ高い所にあってジャンプで取った。
ティースさんのジャンプ力に疑問を覚えつつも部隊長さんの許可を得ているならばと卵を受け取って、ネロに渡しつつ……まだ玄関に居たそうなので壁からにょきっと壁を生やす。簡易的なベンチの代わりだ。
突然出てきた壁に意図を察してくれたのかティースさんは「あざーっす」と言ってそこに座った。
「ネロちゃん、これで卵は全部で何個になった?」
「えっと、三つ使ったので15個です!」
人見知りがだいぶ収まったネロとティースさんが会話するのを聞きながら、せっせと骨串に肉をぶっ刺していく。
「いいね!あと五日だっけ、ここ居るの」
「予定ではそうですね」
「そっかそっか!いつもの25階の宿屋じゃこの辺に居るファイアーバードの卵は取りに来づらいから5日間でなるべくいっぱい集めたいとこだねー」
「……それでアサシンズの皆さん最近毎日卵を持って帰ってくるんですか?」
「そだよー。エストラちゃんの命令だもん」
「命令だったんですね」
卵に食肉に、冒険者のみんなには本当にお世話になりまくりだ。
宿泊延長もドロワ様の許可が出たことだし、なにかでお返し出来たら良いなあ。
ガンツさんには強制承諾になってしまうけれど手紙を一通送った。
個人的に言えば全員にマジックバッグをプレゼントしたいのだけれども、それはガンツさんにも、エストラさんやトールさん、エレーヌさんにも止められている。
私にとっては気軽に作れるものでも、タダでもらうには高価すぎるとのことだ。
断られてる中、アイズさんだけが悔しそうにこちらを見ているのは、すごく可愛かったなあ。




