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「エストラさん!?え、早すぎじゃありませんか!?」
「護衛にはなれなかったけど俺達も実力はかなりあるんだよ」
いや、それは存じて居ますけども。
え、だって昨日の朝に手紙を送って…買い物してから来たんだよね!?ここ19階だよ!?
「随分早かったな。まさか寝ずに強行軍に出たのか?」
「おう。安地が無くって数日寝ないくらい地元じゃよくあったからな、この程度なら大した苦でも無いぜ」
確かにアサシンズのみんなはいつも通りでにこにこ笑っているけども。その後ろにいるアイゼン隊長は床に座り込んで、ドロワ様に必死に鞄を渡していた。
……付き合わされたんだろうなあ。
「大丈夫ですか、アイゼン隊……」
とりあえずめちゃくちゃ疲弊した隊長を労わるべく近づこうとすると、エストラさんにスっと手で制された。
そして私に向けるのとは全然違う、威圧感のこもった笑顔でアイゼン隊長を見下ろし…いや、見下した。
「わかって貰えたかな。俺たち程度でも、この位は余裕だと」
「……ああ。疑って、悪かったな」
ん?
アサシンズと隊長を交互に見て。
なるほど、なんか揉めたんだなと察して笑顔で隊長の元へ行こうとするのをやめた。
何があったのか分からないけれど私は冒険者の味方だ。
「それでねマリィちゃん、一応商店を片っ端から回って買い集めたんだけど……足りないよねえ、これじゃ」
そう言ってエストラさんが出してくる数種類の卵と、牛乳と…ヤギの乳まで買ってきてくれたんだ。
兎に角集めてくれた気持ちはわかるけれど、当初私が買い集めてあった在庫からすると少し心もとない量だった。
ダーツも喜んでいるものの、少し考え込んでいる。
「おいおい、エストラ、トール、ちょっといいか?」
「ん?なんだ?」
「どうした?」
ちょっとこっち来いよと手招きをするアイズさんの顔が、とても晴れやかな笑顔で嫌な予感がしつつーーードロワ様に呼ばれたのでそちらの方へと行く。
「なんでも卵とミルクが足りないとお聞きしました。ささやかですがどうぞこちらを受け取ってください」
そう言ってドロワ様が貸し出しマジックバッグから取り出したのは。
『ぶもぉー』
『コッコッコケッ』
6羽の鳥と4頭の牛だった。
あからさまなThe家畜を見て、笑顔がピキっと固まった。
え、爽やかで朗らかな笑顔で何を言ってるんだろうこの人。
これは、卵とミルクでは無い。
鳥と牛を抱いたり綱を持ったりしている兵士さんたちの顔もドン引き状態だ。わかる。その気持ちはわかるから私もそちら側に行きたい切実に。
「……ドロワ様、御予算が少なめだと仰っていたではありませんか。お気持ちは嬉しいですが家畜は安くは無いでしょう?」
「ああ、ご安心ください。これらは私のポケットマネーです。任務が終われば後日また、我が領の名産品である乳牛を贈らせていただきます」
総隊長、プライベートモード(お貴族様モード)ですわ…!!
ダーツが辞退してくれようとするも、なんかさらに貢いで来ようとするし…
は、ははは…
固まった笑顔を無理に動かして、いらないけど。いらないけど頭を下げてお礼を言うと、ドロワ様は他に木材や布など様々な物資をマジックバッグから出してマジックバッグを返還してくれた…。
「あ、ドロワ殿ちょっといいですか」
そしてうちの最強の冒険者達のリーダーが総隊長を密談に巻き込み出したのを横目に。
「……とりあえず、畑に農場も作ろうか」
「…いやそれなら畑をもうちょい大きい空間に移動させよ。なんかもうどうせ飼うならせめて広いところでのびのびとさせてあげよう…」
「…一応餌や肥料、土や種なんかも買っておいたぞ…すまんな、あいつ悪い奴じゃないんだけど典型的な貴族なんだ」
アイゼン隊長とダーツと三人で、黄昏た。




