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「うちの家の者になってくだされば、王族だろうが他国だろうが守れますが……残念です。貴女に良い縁談をいくつも持ってきたんですけどね」
「私は今とても良い御縁を結んでいますので申し訳ありません」
ほらやっぱりなー!
良かった。トールさんと付き合ってて良かった。
「…何かお困りでしたら御相談ください。うちでしたらある程度どこにも顔が利きますので」
「ありがとうございます。とても頼もしいお言葉ですね」
にこにこ笑い合って、穏やかな会談は終わったが。
困って頼ったが最後、保護という名目でもう迷宮宿なんて出来なくなると思う。そんな感じがありありとした。
「……マリィ、あいつを頼るのはやめとけ。お前の為とか言って、囲いこんで閉じ込められるぞ」
ドロワ様が戻られたあと、アイズさんがそんなことを言った。やはりアイズさんも感じ取ったのだ。
貴族特有の傲慢さを。それが本気で親切だと思っているから尚のことたちが悪い。
「私は迷宮で、宿屋をやりたいだけなんですけどねえ」
今回の件で、兵士さんたちを通じてきっとたくさんの貴族に今まで以上に目をつけられるだろう。そう考えるとゲンナリとした気分になった。
19階まで後退し、1週間ほどそこに滞在をすることになった。
レオはポーションを。
19階では結界札が使えるのでリオは結界札を。
ネロは破棄ポーションを使ったデザートを。
リリエラは数種類の飲み物を。
ダーツは買い取り、私は販売。
兎に角売りに売りまくった。
その結果。
「姉ちゃん大変だ……牛乳と卵が切れる。あと生クリームも……」
「なんだと…!」
大量購入が難しい食材の在庫の底が見えてしまった。
移動含めてもまだ1週間も滞在していない。このままでは製菓の提供が出来なく…いや、出来なくても良いけどね!うち菓子屋じゃないし。
「…姉さん、あと5日はここに滞在する予定だよね」
「うん?うん、そうだよ」
「じゃあさ、地上に手紙を送って食材の追加って頼めないかなあ…3日もあれば持ってこられるよね」
「天才か!!」
食材の追加。現在の迷宮は人の出入りを禁じられているからドロワ様に許可を頂かないといけない。今日中に連絡を取って頼んでみよう。そう思っていたのだけれど。
連絡を取るよりも先に、ドロワ様は売店へとやってきた。
「……何とかもう少し価格を抑えられないか」
割とガチめな値引き交渉をするために。
とても胃が痛そうな顔で交渉をしに来たドロワ様。そんな彼を見て、買い物に来ていた他の方は察したのかUターンして部屋の方へ戻って行った。
「……どの商品をですか?」
「叶うなら、全て」
全てと来たか。むしろこのままのペースで売っていったら一部商品が卵や牛乳以外の問題でも終盤に売り切れになりそうなので値上げをしたいくらいなんだけどなあ。
そう思いつつ、頭の中で各種素材の原価率を考える。
販売中のもので原価率が一番安いのは……ショートケーキか。
でも砂糖はそこそこお値段張るし、何より生クリーム作るのはかなり疲れるからなあ…。
と思っていると隣のダーツが目を輝かせた。




