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「この度は時間を取って頂いてありがとうございます」
この人は、一体誰だろう。
穏やかに微笑んで、頭を下げる貴族紳士。
重厚な鎧を脱いで少しラフな格好。そして溢れ出るお貴族様な空気。
いつもの固い感じと偉そうな貴族様な感じがすっかり抜けているドロワ様に戸惑いを隠せなかった。
アイズさんもトールさんも黙って見ているけれど、少し戸惑って居るのがわかった。
「先ずは謝罪を。先の戦闘で負傷されたとお聞きしましたが、大丈夫ですか?」
「あ、もう治したので平気です」
「そうですか。それならば良かった。お気づきだと思われますが、今は実行隊長では無くプライベートでこちらに来させて頂いてます。マリーロズ嬢に言わねばならぬ事がありましたので」
言わねばならぬ事が?なにか問題でもあったのか。後退することはトールさんに聞いたが、他にも何かあったのだろうか。
「およそ、三年ほど前でしょうか。とてもタチの悪い流行病が流行しました。そしてその薬は迷宮の奥に巣食う魔物からしか取れないと知って、たくさんの人が絶望しました。迷宮の奥に巣食う魔物はたくさん狩れないことは皆知っていましたから」
それ、知っていると思う。
多分、私が初めて迷宮に行くことになったアレだ。
「……私も、絶望していました。姉と父がその病に患ってしまったので」
はっと息を飲む。
穏やかに話しているから多分ドロワ様の元にも薬は渡ったのだと、信じたい。
「姉は年内の結婚が決まっていました。ですので余計に絶望してしまい、病状が悪化するのが早かったのですが……」
間に合ったよね!?大丈夫だよね!?
ハラハラして息を飲んでドロワ様の話の続きを待つ。
「それ以上に薬は早く届きました。おかげで姉も無事嫁ぎ、父も回復しました。驚くほどの速さで届けられた薬の詳細を知って、私はとても驚きました。大量の薬を確保出来たことに……一人の幼い少女の活躍があったと聞いたので」
間に合ったみたいで、良かった。照れくさいけれど安心してドロワ様の話を聞く。
「ありがとうございます。マリーロズ嬢、貴女には父と姉と…たくさんの領民が救われた。ドロワ公爵家は貴女への感謝を決して忘れません」
ん?
こうしゃくけ。
公爵家だって!?え、王族の親戚だよね…そこまで思ってはっと気づく。
言ってた。ガンツさん確か言ってた。
王家の親戚が病にかかったから、王命が出たって。
それ、ドロワ様のお父様だったのか!?
「ですので、私もなるべくは貴女の望みを尊重して守りましょう」
「……はあ…ありがとうございます?」
強い味方の存在に喜んでいいのか、微妙なところだ。
ドロワ様の仰ることは嘘ではないだろうが……彼らの『守り方』が私ののぞみと一致するかはまた別の問題だ。




