10
ダーツが持ってきたケーキをお客さんに渡して、クッキーを紙袋の中に詰めてリリエラが入れてくれた果実水と一緒に差し出す。
弟妹フル体制で販売をこなす。
全てが作り置きを空間から出して切ったり入れたりするだけなので早いのだが……雑貨屋に並んだ長蛇の列はなかなか尽きることはなかった。
その夜、ようやく雑貨屋も店じまいして
会議も終わったらしく冒険者のみんなといつもの宿屋の方に戻る。
すると疲れてぐったりした弟妹が真顔で懇願をしてきた。
「姉ちゃん、食料庫の扉を玄関に移して…取りに行くの大変すぎる…」
「ああ、うん。わかった」
「あ、移動は明日の雑貨屋オープン前で良いよ。ケーキいっぱい作るから…」
そう言ってネロは厨房へ行き、ほかの弟妹も続く。
私も手伝おうとついて行こうとすると…ダーツに止められた。
「姉さんは明日も移動があるんですから、今日は休んでください。トール兄さんお願いしますね」
「わかった」
そう言ってトールさんは私を捕獲してきた。
ちょっとむくれながらも素直にトールさんと一緒に自室に向かう。
「そう言えば会議の結果はどうなりましたか?」
「ああ。序盤の方は体力のあるやつで移動部隊を組んで一度の移動は3部隊+俺たちで行くそうだ。残りは中で待機で戦闘に支障が出てきたら5部隊ほどで編成していくそうだ。あいつら人数が多いのが移動の阻害になってたからな、程々の量なら遅いって言ってもそこそこの速さで行けると思う」
なんだろう。
トールさんが少し表情が柔らかくなっている。
国軍の人達が来てからずっと張り詰めていたのが、なくなった感じだ。
そりゃ、ずっと警戒してるのは疲れるからあまり良くないのかもしれないけれど。
「始めはあんなんで魔物を倒せるのかと心配したが、速さがないだけで実力はあるヤツらのようで安心もした」
そういったトールさんは少しだけ笑っていた。
なんと言うか。うん。
「だからマリィも戦力としては安心していいからな。と言っても、勧誘や誘拐の心配は常にするように。じゃあ、おやすっ…!?」
部屋の前について、頭を撫でてきたトールさんの手を全力で引っ張って部屋に引きずり込む。
トールさんがその気になれば私じゃ手も足も出ないけれど、彼は驚きながらも部屋の中に連れ込まれてくれた。
そして部屋の中でぎゅっと抱きつく。
「……マリィ?」
なんと言うか、うん。随分と仲良くなったみたいで。
ちょっとじぇらしぃを感じる。
今は甲冑を脱いだトールさんはシャツ姿だ。
そんな彼のシャツに思いっきり頭を擦り付ける。
「どうした?マリィ?」
「べっつにぃー」
後頭部に手を添えられて、促されたので見上げる。
むくれた顔で見上げるとトールさんはキョトンとしてから………ふっと笑った。
「なんだ?ヤキモチか?」
「そうですけどぉー?」
すぐに抱き上げられて何度も顔にキスをされる。
くすぐったくって、むくれた顔も笑顔になって。もっととねだってキスをする。
「野郎に妬かれるのは複雑だが、可愛いから許すか」
「だってちょっと目を離してたら仲良くなってるんだもん」
「……まあ、見殺しには出来ない程度にはな」
「トールさんは優しいですからね」
そしてそんな彼がだいすきなのだ。仕方ないと言いながら苦笑いを浮かべると、そのままベッドに下ろされて覆い被さられて唇を交わす。
「甘い自覚はある」
「そうですねえ」
「……だけど、特別なのはたった1人だ」
なるほど。それは悪い気がしない。
シャツを捲りあげる手を感じながら、トールさんの背中に手を回した。




