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轟音のような挨拶と共に籠が小さく揺れだした。上を見ると青い空はすぐに迷宮の天井となった。
やることもないので、適当に拡張をしながらぼーっと天井を見る。
なんか、うん。
遅くない?
いつも全力疾走より早い冒険者たちの速度を見慣れているせいか、見えるのが天井だけなせいか…とても遅く感じる。
ちょこっと籠から顔を出してみると遅いと感じたのは気のせいではなかった。
銀華もドラ殺も、走ってない。
早歩きくらいの速度だ。私の走る速度くらいだろうか?
「どうしたマリィ」
「…なんでもないです」
目ざとく顔を出したのを見つけたトールさんに声をかけられたが、すぐにひょいっと中に籠る。
と、トールさんが籠のすぐ横に来てなんと上から覗き込んできた。
「振動とか大丈夫か?狭くて苦しいとかはないか?」
「揺れはそんな感じませんし、まあ狭いですが…この籠結構大きいので大丈夫です。といってもたまには足を延ばしたいですが」
「そうか。足がつらくなったら立ち上がってもいいぞ」
「俺の頭掴んでもいいからなー」
覗き込んでるのも辛かろうと思い籠から顔を出して
「ありがとうございます」
ダーンさんとトールさんにお礼を言っていると…不意に目の前にひらっと何かが横切った。
私の顔の前を右に左に移動する布は……アイズさんの剣の鞘に結ばれた布だった。
アイズさんは楽しそうに、それは楽しそうに剣を使って私の前に布をひらひらと……まるでねこをからかう様にゆらす。
「……」
イラっとしたので破棄ポーションをぶん投げてやった。
やはりと言うかなんと言うか、5階に着いたのはかなり時間経過した後だった。
まあ、これだけ大人数いたら点呼も大変だし仕方がないのかもしれない。
仕方がないのかもしれないが、
100人宿屋内で休憩を取る兵士さんたちもうちの護衛たちもどよーんとした重い空気だった。
「今の時刻は何時だ」
「18時だな」
ダンジョン内は薄暗く、何故か設置してある松明のおかげで明かりはあるが時間は分からない。
けれどドロワ様に聞かれた隊長さんは時計を見てサッと答えた。
出発はラクザルバ商会が頑張ってくれたおかげで11時だった。7時間で5階。すごいな、冒険者達ならばもう10階に到着していてもおかしくないスピードだ。
というか今日の宿は10階だったはずだが大丈夫なのだろうか?
迷宮は当然だが深くなれば難易度が増す。
つまり7時間以上の時間をかけて今日の宿泊ポイントに着くのは…日付が変わる。
予定は変更無しなのだろうか。
トールさんの膝の上に座って静かにお茶を飲む。
ちなみに弟妹はいつもの宿屋の方に居る。ダーツもだ。買取の仕事が本格化するまで、護衛を充実させるためにダーツも100人宿屋の方には出入り禁止となっているのだ。




