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帰り道にダーツに言われて欠損ポーションと造血ポーションを買いに行かないと、と思ってついでにレオの錬金素材を買うのかと確認をすると……レオは真顔で頭を下げてきた。
「姉ちゃん、俺は薬草園が欲しい」
当然ながら想像していたのは瓶、薬草だ。
薬草園。そしてわざわざ私に言うことから……宿屋に併設して欲しいのだろう。
「ちゃんと世話するから!水やりも肥料も!陽光ランタンも俺、買うから!」
「ちゃんと管理するのよ」
ニコッと笑ってそう言えば、レオは嬉しそうに笑って錬金店に駆け込んで行った……のをダーツがダッシュで追いかけて行った。
あんなに慌ててどうしたんだろう?
そんな疑問は店に入ると解けた。
「ダメです。ここにある初心者向けの種だけにしなさい」
「でも全部買えばまけてくれるって…」
「ダメです。第一レオは地魔法も植物魔法も使えないのに無茶です」
「院で畑の世話くらい出来たし!」
「野菜と薬草は違います」
ああ……お金の使い方が下手な呪いですね。お得お得で大量まとめ買いをしているダーツとは思えない理路整然とした説得に唸りをあげつつ、レオの錬金術のレベルが上がって、本格的に高い薬草が欲しくなった時には……専門家を雇っても良いかもしれないなあ。
と、口論する弟達を見てのほほんと笑った。
納品諸々を終えてギルドに戻ると入口にトールさんが立っていた。
「おかえり。ダーツも元気そうで良かったな」
「ただいま戻りました」
「その節は御迷惑をお掛けしました」
「トール兄ちゃんただいまー」
「ただいま!」
次から次へと挨拶をしていく私たちのうち、私とダーツだけをトールさんは捕獲した。ですよねえ。さすがにそろそろあの人達を無視は出来ないか。
「とりあえず挨拶と、厄介事だ」
「えぇー…」
「地下で一同が待ってるぞ」
はあ、とため息を吐いてから地下演習場へダーツとトールさんと共に向かう。
当たり前のように手を繋がれて一緒に歩いてふと思い出す。
「トールさんは貴族様なんですか?」
手を軽く引いて意識をこっちに寄せながら尋ねると、トールさんは今まで見たこともないくらい嫌そうな…眉間に皺を何本も寄せた表情を見せた。
見慣れないその表情に思わずぽかんとする。
「……俺は違う。親戚が貴族で名前がちょっと長いだけだ」
そっか。めちゃくちゃ聞いちゃいけない空気がすごい。私だけでなくダーツも気まずそうな顔をしていて正直聞いたことを後悔した。
トールさんも言ってからハッとしたのか三人で気まずい空気の中地下演習場に向かうーーーと、私の頭とダーツの頭にぽふっと掌が置かれた。
「気を遣わせたな。とにかく、俺はただの冒険者だ」
「分かりました。私はただのギルド職員です」
「俺もただのギルド職員です」
撫でられて、二人して笑って見上げる。そこに先程までの気まずい空気は無くなっていた…けれど、まあ、トールさんの名前に関してはもう忘れることにしようと思った。




