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即座にその場にあった…とりあえず買取所で使われていたペンに使ってない空間を時間停止能力付きで付与する。
すると今宿屋に詰めている銀華もアサシン達も弟妹もすぐに駆けつけてくれた。
「ダーツ!どうしたんだ!?」
「ダーツ!!」
「アサシンズ、悪いが緊急事態だ。急いで彼を地上に運んでくれ。念の為にリオも同行してください」
「わかった。急いで荷造りを済ませる」
「は、はい!」
「銀華は申し訳ないがドラ殺が戻るまで一パーティで護衛を頼む」
「わかった」
トールさんがそっと私の肩を支えてくれて、ダーツの手を握って無事を必死に祈る。
こういう時、こんな場所に居るってとても不便だ。
意識の戻らないダーツが空間に収納されて。
身支度を短時間で整えてくれたアサシンズのみんなが、直ぐにマジックバッグを持って出ていった。
「とりあえず病状が判明したら戻ってくる」
「ああ。ダーツを頼む」
「ダーツをお願いします!」
私には空間魔法しか適性がない。
医者の系統の適性持ちも宿に置きたい。切にそう祈りながら私はアサシンズを見送ることしか出来なかった。
その日の夜、冒険者達が帰還してもドラ殺と当然ながらアサシンズも帰ってこなかった。
わかっている、地上からここに来るまでに三日はかかることは。
それでも一刻も早くダーツの報告を聞きたくって、玄関に椅子を作って待つ。
私がこんな、すぐに医者にかかれないような仕事を紹介したから。
そんな後悔に襲われていると、隣に座ったトールさんが黙って毛布をかけてくれた。
毛布にくるまりながら黙って扉を見る。
「…あ、お姉ちゃん」
不意に声がしたと思うとそこには寝巻き姿で毛布を持ったリリエラが居た。
心配する気持ちは同じなのだろう。
気まずそうにするリリエラにトールさんと反対の席に座るようにとんとんと叩くと、リリエラはおずおずと毛布にくるまって隣に座った。
「私、邪魔じゃない?」
「邪魔じゃないよ」
私と違ってスラリと高い背の女性になりつつあるリリエラも、やはりまだ可愛い妹だ。頭を撫でてあげるとすりすりと抱きついてきた。
「あ」
トールさんの隣でリリエラをぎゅっと抱きしめていると今度は気まずそうなネロとレオが現れた。
するとトールさんは黙って場所を空けて、近くの壁に寄りかかったので苦笑してその辺にも椅子を作る。
「姉ちゃん、俺もそこ行ってもいい?」
「もちろん」
「ありがとう、トールさんごめんなさい」
「俺のことは気にしなくていい」
おいでと言うとネロとレオも傍に座って、四人でぎゅうぎゅうくっつきあった。
「ダーツ、大丈夫かな」
「大丈夫だよ、ダーツ兄ちゃんしっかりしてるし」
「ダーツならきっと平気だよ」
みんな兄弟の具合が心配でならないのだ。
一人倒れると不安で寄り添い合うのは孤児院の時から変わらない。
熱が出た子の寝る部屋の扉の前でもよくこうやって集まって眠ってシスターには毎度怒られていたものだ。
「レオ、眠いなら寝てもいいよ」
「…もうちょい起きてる」
「リリエラもネロもね。明日も仕事があるんだから無理は禁物だよ」
「姉ちゃんだってあるだろ」
「大丈夫、私はお姉ちゃんだから」
「何よそれ」
不安を埋め合うように寄り添い合って。
軽口と雑談をして、次第に一人ずつ寝落ちていった。




