表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SKY WORLD  作者: 青瓢箪
ゼルダ 西オルガン編
85/232

ゆらぎ

 ――ウーの癖はもうだいたい覚えた。


 始めは、しばらく息を止めること。


 波が来たら目を閉じること。


 終わった後は、ぼんやりと空を見つめていること。――


 たぶん彼のことを思い出しているのは、以前から察しがついていた。



 最初に会った時のカールした髪もよかったけど、今のストレートに戻した髪型のほうがいい、とリックは思う。

 飾らなくても、十分そのままで美しい純粋な妖精のようだから。


 うつぶせに寝る彼女の髪を頭頂から背中にかけて撫でると、ウーは心地よさそうに目を閉じる。

 ウーの髪はやわらかくて極上の手触りで、上等の猫をなでているような感じだ。


 決して彼女からは自分に触れてこない。

 人に馴れなくて気まぐれに相手をする、猫と一緒だ。


 彼女の髪をつかんで、リックは自分の顔に押し当てた。


 シャンプーの香の中に混じる彼女の髪本来のにおいを味わう。

 いつまでも顔を埋めていたくなる。


 休日の度にこんな日が送れるなら。

 彼女がこの国にいてくれるなら。


 この国の生活もまんざらじゃないと思う。



 ―――あと二週間か。


 リックはウーの髪を離してそのまま彼女の背中に手のひらを滑らせた。

 ウーが反応してわずかに身動きした。


 本土に戻るのは二週間後。

 彼女と会えるのはあと四回しかない。


 彼女はずっとこのまま西オルガンにいるのだろうか。

 俺が西オルガンに再び来たとき、その時彼女はまた俺の相手をしてくれるだろうか。


 いや。

 と、リックは思う。


 たぶん、彼女はまた、次の男を見つける。

 俺と同じように。

 彼の代わりにはならないのに。

 彼を思って目を閉じるだけの相手を。


「リック」


 ウーがつぶやいた。


「この国に来たとき、あなたはどうやってあきらめたの。いつになったら、気持ちがおさまるの」


 リックはウーの耳元に顔を押し当ててささやいた。


「……まだ、あきらめはついてない」


 ウーが身じろぎしてリックの顔を見上げた。

 リックはウーの身体を抱き起して、ベッドの上で向かい合わせで座る。


「でも、認めないとな。……たぶん、君も俺ももう一生この国を出られない。それなら、この国で居心地良く暮らす方法を考えたほうがいい」


 言ったリックにウーはうつむいた。


「彼と同じことを言うのね」


 そして視線を落としたまま、ふりしぼるような声で告げた。


「……あたしは帰りたいわ。……グレートルイスへ」


 目の前でつぶやく彼女は、この国に来た時の俺と同じだ。

 リックは彼女を見て思った。


 抵抗するひまも与えられずに、この国に放り込まれた俺と同じ。

 十七歳まで暮らしていた生活のすべてが、まるで存在しなかったように。


 リックはウーの頬に手をやった。

 ウーがゆっくりとリックの顔を見上げた。


「ウー」


 リックは彼女の灰色の瞳を見つめた。

 吸い込まれそうな瞳だ。


 昔から傾国の美女とか。歴代の悪女とか。

 そういわれる彼女たちは、きっと目の前の彼女のような女性だったんだと思う。

 彼女の希望を叶えるためなら、男たちは自分の将来のことなんて考えなかったんだろう。

 リックはウーの肩を抱き寄せて、彼女の肩に顎をのせた。


「……俺と一緒に、砕けようか」


 ウーがわずかに身動きするのをリックは力をこめて抱きしめた。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ