ネガ
ウーの部屋から出ると、すでに待ち構えていたジミーが廊下の壁にもたれて腕を組んだままリックを見た。
「今日も、来たのか」
「はい」
リックは答えて、彼に言われるより先に、彼にショルダーバッグを渡す。
「彼女、パーティーに行かなかったんだね」
「ああ。体調不良でな」
ショルダーバッグの中を確認するジミーは、いつもと違ってスーツを着崩してはいなかった。
「ジミーさんも行く予定だったの? 残念だね」
ジミーは答えず、バッグの中のカメラを取り出す。
「あ、それ、今日のパーティーの出席者が……」
声をかけるリックだったが、ジミーは問答無用に中からネガを引きだした。
「まあ、そうだよね」
あきらめてため息をつくリックに、
「俺の了解を得ずに彼女の部屋に入るからだ」
ジミーは冷たく言い放つ。
「今度やったら、蹴るぞ。いいな」
「はい」
リックは大人しく返事した。
でも今回はジミーさんのミスだけどな、と胸中でつぶやく。
両手を頭の上で組み、ジミーが身体を探るのを受け入れる。
コートの胸内ポケットから、予備のネガをジミーが取り出した。
ジミーはリックの顔を見下ろす。
「残念」
そう苦笑して答えるリックに、ジミーはネガを自分のポケットに入れた。
リックを後ろに向けさせ、背面をジミーが調べる。
ズボンの膨らんだポケットの中が、避妊具の箱だと確認し、ジミーはリックの肩をたたいた。
「OK」
「次の水曜も、来ます」
リックは、ジミーを振り返って仰ぎ見た。
「……早朝は、勘弁してくれ」
ジミーは、抑揚のない声で応える。
「検討します」
リックは言って、ジミーからショルダーバッグを受け取ると、ウーの部屋の前から歩き出した。




