仕事2
アドゥルに連れられて行った先は、市街地から離れた特に治安が悪い危険地帯だった。
デイーは今までその界隈の前を通り過ぎたことしかない。
明らかに麻薬常習者と売人と思われる輩が常にたむろしていた。
アドゥルは堂々と肩で風を切ってその場所へと入っていく。
デイーはそのあとを身を縮こませて、他の者と目を合わせないようについて行った。
胡散臭気にガラの悪い男たちが自分を見てくるのを感じる。
あるビルの一画にアドゥルは立ち止まると、ゴミだらけの地下へと続く階段へ降りて行った。
デイーもネズミが出そうだな、とびくびくしながら続いた。
「簡単な仕事だぜ」
前を歩くアドゥルが背中で言った。
「空港から出て来る、田舎出身の若い女に声をかける。道に困った留学生のふりしてな。それっぽい服も学生証も用意してくれる。だいたい、女はタクシーまで連れてってくれる。お礼に希望地までの運賃を払うと言うんだ。一緒にタクシーに乗って、運転手役が先に大学前に着いて俺を下ろして、終わり。それでお役御免だ」
デイーはすぐ前を走るゴキブリにあわてて足を上げた。
「お前は虫も殺さねーような顔してるし。ぴったりだよ。今まで、団体の女たちは手が出せなかったけど、俺たち二人ならできる」
「……その後の女は、どうなるんだ?」
デイーは聞く。
「……写真撮って、後で脅すとか、家出してきたような女ならそのままヤク漬けにするとか、まあいろいろらしいけど」
デイーは廊下の端に座り込んでいるまだ少女といってもいいグレートルイス人の女に目を向けた。
少女は目の下のくまの目立つ虚ろな瞳で何かつぶやきながら、デイーを見返した。
「上の人、お前見たら気に入るよ。西部育ちの美形の留学生、てのは一番女の庇護欲をくすぐるんだってよ。疑いもしないらしい」
アドゥルは言って、さらに下の階へと続く階段を下りた。
「ビビんなくていいぜ。俺がお前はあんまり慣れてないってこと、言っといてやるから。…大丈夫だ、すぐ慣れる」
デイーはアドゥルの後に続こうと階段に足を下ろそうとして、立ち止まった。
「デイー?」
おりて来ないデイーに気づいてアドゥルが足を止めて後ろを見上げた。
「アドゥル、ごめん。……俺、やっぱり、いいや」
デイーはうつむいてそう告げると後ろを向いて速足で歩き去った。




