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二周目の彼女と三周目の彼。  作者: kawa.kei


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第32話 ダンジョンの歩き方

 この迷宮って一定時間で内部の構造が変化するのよ。 

 第一層の場合、このおっきな洞窟みたいなメインストリートは変わらないんだけど、それ以外の枝分かれした通路の行き先が変わってるのよ。 ついでに罠やらの配置もね。

 

 だから、行きに安全確認したけど帰りに罠にかかるとか、見覚えのない道に出て迷うなんてザラなのよ。

 伊達に迷宮(ダンジョン)なんて呼ばれてないわ。 ただで帰さないってデザインが最高にクソね。

 

 「罠に関しては?」

 「見極める方法って事? 看破系のスキル持ちが居たら楽勝なんだけどいないから確認しながら進むしかないわね」


 フォーメーションとしては蓑鋤が先頭で私がその隣、近接戦が得意なメンバーが均等に散って全方位からの奇襲に備え、後衛職は真ん中ね。 前衛が後衛を囲む形で守っている形になるわ。

 現状、ここで一番安全なのは蓑鋤の横だからこのポジションは死守しなきゃ。


 さて、まずはこのダンジョンで気にしなきゃいけない事はモンスターだけでなく罠も要警戒対象よ。 

 大抵はスイッチ式じゃなくて魔法陣のような物を仕込んでいる感じの代物で、陣を一定時間――具体的には0.5秒前後踏むと起動する。 内容もランダムで状態異常、ダメージを喰らったりもあるし、運がよかったらバフがかかるっていう踏むとお得な場合もあったりするわ。


 「それだけ聞くと大した事ないように聞こえるな」

 「そうでもないのよ。 ランダムな状態異常って中には特殊な治療法や解除方が必要なえげつない奴もあるし、ダメージもHPの1%程度の軽い物から99%持って行く即死クラスの奴もあるから気軽には踏めないのよ」


 下に行けばバリエーションが増えるらしいけど浅い層だと大抵の罠はこの二種類の類似品になる。

 ただ、厄介なのは稀に転移系の罠が混ざってる事ね。

 当時は落とし穴なんて呼ばれてたけど、何処に飛ばされるか分からないヤバすぎる代物よ。

 助かった連中は同じフロアで比較的ではあるけど近くに飛ばされただけだったから帰って来れたけどそうじゃなかったらかなり深い階層に飛ばされてヤバいモンスターとエンカウントして即死って話も多い。


 前回にある配信者が居た。 最初はダンジョンの浅い層で雑魚を処理しつつ、アイテムを持ち帰ってレベル上げるだけの簡単な内容で罠の探し方、モンスターの効率的な撃破方法の検証などを行っていた事もあって人気はあったのよ。

 ストリーマーは人気に比例して経験値を得られる特殊なジョブだった事もあってかなり早い段階でレベルが上がり、転職も済ませ、浅い層のモンスターは相手にならないぐらいの強さを手に入れていたわ。


 安全対策にも抜かりなく、高レベルの仲間を引き連れてダンジョン探索を行う慎重さもあった。

 配信も安定感があって人気ではあったのだが、ある日唐突にそれは最終回を迎えたのよ。

 最悪の形で。 そいつらは転移トラップを踏んだの。


 新しく入れたメンバーが突出した結果、うっかり踏んだって形だったんだけど転移先が不味かった。

 周囲の風景もこんな洞窟じゃなく、古代遺跡みたいなよく分からない所で流石にヤバいと判断して生きて帰る事を軸に出口を探す事を念頭に置いた動きをしていたのだけど遭遇したモンスターがヤバすぎた。


 人型の昆虫モンスター。 とんでもない強さでレベル50以上のメンバーがそこそこの数いたはずの配信者ですら歯が立たずに殺されてしまったわ。 

 残念ながらこの世界の配信コンテンツは年齢指定なんて気の利いたフィルターは付いていないので文字通りの公開処刑が繰り広げられてしまった。 私も見てたけど、酷い有様だったわ。


 最初に威勢よく突っ込んだメンバーが一撃で肉塊に変わり、驚きからの恐怖。 

 そして逃走と闘争による打開を瞬時に判断したメンバーによる文字通りの分裂。

 後者は瞬く間に死に、前者もちょっと長生きしたけど結局死んだわ。 

  

 最後は配信者本人は映像に向けて助けて助けてと泣き喚きながら叩き潰された。

 アレを見てなお、ダンジョンには夢がある自分も一攫千金とかほざける奴は頭がイカれているか、ガチのアホかのどちらかよ。 少なくとも私はアレを見てあぁ、こりゃ無理だと心底から思ったわ。


 ……おっと、話が逸れちゃったか。


 罠の見分け方ね。 ぶっちゃけると現状では難しい。

 一応、踏みさえすれば起動はするから棒か何かで地面をつつきながら進めば一先ずは安全よ。

 起動までの条件が一秒以下だから軽く突いて何も起こらなかったらとりあえずは問題ないはず。


 私が見て来た配信者の何人かはこのやり方でそこそこ進めていた。

 蓑鋤の横に居る理由の一つね。 ちょんちょんと棒で地面を叩きながら歩く。

 

 「地味だな」

 「それでも何かあるよりはずっとマシ。 後、戦闘が始まったら前には出ずに来た道に誘い込むように引いて戦って。 最低限のクリアリングはしているから前で戦うよりは引っかかる可能性は低いはず」


 隅から隅までやってる訳じゃないから比較的マシなだけだから過信は出来ない。

 三上達にも記憶遡行の事はぼかして罠を警戒しているので協力して欲しいと同じ事をやらせている。

 大半がこれ意味があるのかよと胡散臭そうな様子でやってるけど、蓑鋤の指示には従うという約束だ。

 

 やらざるを得ない。 次にモンスター出現の兆候だ。

 これに関しては今の所はそこまで気にしなくていい。 あの連中は基本的に人間を殺せるサイズ、ステータスをしている関係で図体がデカいのよ。 つまり動くと結構な音がする。 加えてこの第一層は脇道から入る部屋から自発的には出て来ないからよっぽどの事がない限りはまぁ大丈夫。


 だから馬鹿みたいにギャーギャー騒いでいなければ接近には気が付ける、はず。

 ダンジョンに絶対はないと思っているので、警戒は解かないけど浅い層では早々音を消すようなヤバい奴は出てこない。 少なくとも私は知らない。


 ピタリと蓑鋤が足を止め、全体が止まる。 理由は一本道ではなくなったからだ。

 正確には枝分かれするみたいな小さな通路が見える。 


 「構造が変わるという話だったな。 間隔は分かるか?」

 「大体6時間。 一日に四回、内部で構造が組み変わるわ」

 

 現在の時間は13:40分。 昼を過ぎてから潜ったのは次の構造変化までの時間が欲しかったからだ。 

 

 「どう思う?」

  

 つまりは真っ直ぐ進むかいちいち調べるかを聞いているのだろう。 

 それはこの探索の目的にもよる。 アイテム狙いなら順番に調べればいい。

 そうでないなら奥に向かうのがいい。


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