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二周目の彼女と三周目の彼。  作者: kawa.kei


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第22話 偏りが酷い

 猿を仕留めてスキルを埋まった蓑鋤は即座に山を下りた。

 充分に離れた所で小さく息を吐く。 家路を行きながらステータスを操作して奪い取ったスキルを確認する。


 防御変換(物理):MP消費/0(アクティブ)

 

 物理防御力以外のランダムなステータスを物理防御力に変換する。 

 変換レートは1:2。 変換対象は選択不可、変換ステータスは元に戻す事が出来ない。

 

 あの猿のステータスに1が多かった点から1以下にはならないようだが、防御変換1に対して他のステータスを2要求する点から使うと総合力が下がる事を考えると外れスキルもいい所だった。 

 更にランダムなのが怖い。 早速試そうかとも思ったが、何が起こるか分からない事もあってまずは家に帰ってからにするべきだろう。

 

 そう考え、少しだけ逸る気持ちを抑えつつ家へと急いだ。 

 スマートフォンの時刻表示を確認すると出発から二時間程度が経過していた。

 猿を探すのに手間取ったお陰で少し時間がかかってしまったようだ。


 帰りついた家に変化はない。 

 そっと中に入り、婀唯と母が眠っている姿を確認し、ほっと胸を撫で下ろす。

 自分の部屋に戻るとスキルを使用するとウインドウがポップアップ。


 どれだけの数値を変換しますかという要は数量を指定しろといった内容だった。

 現在の異形度は155。 こいつを全て防御力に変換できればかなり延命できる。

 ただ、高い数値を設定して他が下がると戦闘に悪影響が出る。


 ――まずは検証からだ。


 本当に下がるのかを確かめたい。 

 数値を1に設定して使用。 これで物理防御が1上がり他が2下がる。

 ステータスを確認すると物理防御が1上がり、代わりに知能が2下がった。


 再トライ。 物理攻撃が2下がった。 生命力が2下がった。

 また知能が2下がる。 これは異形度は駄目なのか?

 僅かにだめかもしれないと思いながら再度、実行すると――異形度が2下がった。


 155から153になったステータスを見て蓑鋤は思わず拳を握る。 

 文字通り希望が出たからだ。 この調子で最低でも100以下にすればゴブリン狩りも問題なく可能で、レベルが上がらなくてもスキルの効果でステータスは上がる。


 少々、無茶をしても充分にリカバリは効くはずだった。

 数値を一気に増やして大きなギャンブルをするかとも思ったが、失敗した時のリスクを考えるなら地道に最低値で試行回数を増やしていくしかない。


 蓑鋤はやるぞと呟くとスキルを更に使用。 異形度を下げるべく試行を繰り返した。



 ――のだが――

 

 「またか……」


 異形度だけが異様なまでに下がらない。 

 ステータスを確認すると――


 生命力5500→5000 魔力2350→1900

 力393→323 物理攻撃382→300

 防御231→199 物理防御220→848 魔法防御85→65

 知能77→55 魔法攻撃81→61


 素早さ141→101 運0 異形度155→135


 確率に偏りがあるのか生命力と魔力が異様に減る。  

 数値が大きいからだろうか? 

 600回近く試して10回程度しか異形度が下がらない点を見ると相当だった。


 1~2%ぐらいだろうか? いくら何でも酷すぎる。

 この調子で試し続けても良いのだが、これ以上やると戦闘に支障が出そうだった。

 一先ず下がる事を確認できただけでも良しとしよう。 


 異形度に関しては100~250辺りをキープしておきたい。

 前回は初手で狂った事もあって正確な数値は不明だが、蓑鋤の感覚的にそれを越えるとおかしくなる。

 300を超えると確実に戻って来れなくなると見て間違いない。


 ――これで最低限の延命は可能、か。


 婀唯も気付いていたようだが、この暴食というスキルは見た目通りのチートという訳ではない。

 彼女は知らないだろうが、大罪をモチーフとしたスキルは他にも存在する。

 そして使用者は一人残らず狂って化け物へと変わった。 


 この手のスキルを配られたプレイヤーは間違いなく、運営側からボスモンスターとして配置された可能性が高い。 放っておくと勝手に狂って化け物になり周囲に人間を手当たり次第に襲い掛かるのだ。

 ダンジョンへ近寄りもしない連中の危機感を煽るには最適な駒だろう。


 事実として前回は自分が、前々回は名も知らぬ誰かが怪物として暴れまわった。

 人々は危機感を抱き、レベリングに精を出すという訳だ。 

 この世界ではレベルを上げさえすれば大抵の事は何とかなるという事もあって、適度に危機感を煽ればどいつもこいつも慌てて動き出す。


 このクソみたいな状況を生み出した連中の意図は不明だが、どうあってもダンジョンの攻略をさせたいらしく、何かにつけて外に脅威を作りだして危機感を煽る。

 モンスター、魔獣、特殊なスキル持ち。 


 この状況を利用して好き勝手する連中もそれに該当するだろう。

 婀唯もそれを理解しているからこそ、レベリングを危険と認識してはいても止めようとはしない。

 現状、彼女は戦闘能力は極めて低い状態ではあるが、今のジョブから転職する際にやんわりと戦闘系のスキルを取るように促そうと考えていた。 最終的には彼女を自衛できる程度には強くしておきたい。


 ――そうすれば何の心配もなく時間の許す限り、彼女の傍に居られるからだ。


 


 あーたーらしーいあーさが来た!っという訳で目を覚ました私はうーんと伸びをする。

 いやー、駅と違って蓑鋤の家は安心するわー。 もう実家みたいな物だしね。

 ま、将来的には実家になるけどね? ぐふふ。


 今日も服部緑地でレベリングするぞい! 

 リビングに出ると先に起きていたおばさんが朝食を用意してくれていた。

 私の姿をみると朝ごはん食べるわよねと用意を始めてくれていた。


 お義母さん。 ありがとう。 しゅきぃ……。

 ごはん、味噌汁、そしてスクランブルエッグとサラダ!

 手作りの温かみよ。 味噌汁を少し啜るとあまりのおいしさに涙が出て来る。


 バクバクと飯を食べる私をおばさんは笑顔で見つめているけど、少し困った様子でもあった。

 理由には心当たりがあったので先にそっちを片付けた方がいいかもしれないわね。


 「食材やら生活用品の事ですよね」

 「そうなの。 一応、公民館の方で配給をやっているみたいだけどちょっと外に出るのが怖くて受け取りに行けなかったのよ」


 私はもぐもぐとサラダを口にしながら力強く頷く。


 「大丈夫。 任せといてください!」


 調達の手段には心当たりがあったからだ。


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