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35:仲直りは涙の後に



 ローゼスタは部屋のドアに挟まれた手紙を見て眉を寄せた。

 差出人はリンダである。


 今日の夜、八時に二人だけで話がしたい。部屋に来てほしいと書いてあった。


 ローゼスタのリンダへの思いは複雑だった。

 はじめは好奇心で近づいた。上手く取り入って貴族に顔を売れたら、という下心があったのは否定しない。リンダはそんな思惑など気にせず友達になってくれた。


 リンダと付き合ううちに覚えたのは嫉妬だった。溢れるほどの才能を無駄遣いして、何度頭に来たことだろう。あれだけの実力があるならローゼスタの成績など軽く超えられるだろうに、リンダは自分の好きなことにしかその情熱を傾けようとしなかった。


 やがて、嫉妬はしょうがないなぁ、という呆れと、どこかズレた常識を教えてあげるのは自分だ、という優越感に変わっていった。手のかかる子だ。それでも一緒にいるだけで楽しくなる、憎めない子。リンダといると嬉しいし、そこが私の居場所だと思える。間違いなく友情を抱いている。


 ローゼスタはリンダが好きなのだ。


 だからこそ、マッジーの仇を取ると、飛んで行ったリンダと翡翠に置いて行かれたことがショックだった。


 しかも二人はその夜帰ってこず、ローゼスタは眠れない一夜を過ごした。朝になりさっぱりした表情で箒に乗って帰ってきた二人を見たローゼスタは、安堵とのけ者にされた寂しさが胸を突きさすのを感じた。


 どこへ行っていたのか。本当に犯人を見つけたのか。戦ったのか。

 どうして私を連れて行ってくれなかったのか。


 言いたいことは山ほどあった。


 止めたのはローゼスタで、追いかけなかったのもローゼスタだ。あの嵐の中でローゼスタにできたのは、先生と警察に知らせることだけだった。


 包帯を巻かれたマッジーに怯えていたローゼスタを思いやってくれたのだろう。それでも、今までずっと三人でいたのに、という寂しさは消えなかった。大好きだからこそ哀しかった。


 このままではいけないとわかっている。リンダと話をして、もう危険なことは止めるか、一緒に連れて行ってと言おう。一人で残されるのは嫌だ、と。


 ローゼスタとリンダはこの日そわそわした気分で過ごし、夜を迎えた。


 八時が近づくと、ローゼスタはいてもたってもいられずに部屋を出て、談話室に行った。

 リンダと距離を取ってから寮内の空気は微妙だ。

 振り回されっぱなしのローゼスタの気持ちもわかるが、今の憔悴したリンダも見ていられない。

 一年生の中にはこれがチャンスとリンダの友人の座を奪おうとする生徒もいて、二人がどう決着をつけるのか見守っていた。


「ローゼ」

「……ジェダイト」


 一人で紅茶を淹れ、視線を感じながら壁際で飲んでいると翡翠がやってきた。いつもと変わらない微笑みを浮かべている。少しほっとして、ローゼスタの緊張がほぐれた。


「なんだか久しぶりって感じね?」

「そうね。……毎日顔を合わせてるのに、不思議ね」


 会話がまったくなかったわけではなかった。ローゼスタはそっけなく相槌を打ち、リンダが言いあぐね、見かねた翡翠が助け舟を出す。ここ数日はこの繰り返しだった。


「リンダ、どうしてる……?」


 思い切って訊ねると、翡翠は表情を消して目を伏せた。ドキリと心臓が跳ね、緊張が戻ってくる。


「このところ、すっごく大人しい。正直ずっとこのままでもいいくらい」


 翡翠があまりにも真剣に言うものだから、ローゼスタはぽかんとした後に吹き出してしまった。


「なによ、それ!?」

「だって、あのリンダが無茶をやらかさないのよ!? 授業中に悪戯しない! クラブも真面目に出て先輩の言うこと聞いてるし! 部屋で自習の邪魔してこないから勉強がはかどるのよ!」

「良いことばっかりじゃない!?」

「そうなの!」


 力強く言い切った翡翠はふっと笑った。でも、と続ける。


「リンダらしくなくて拍子抜けするのもたしかよ」

「ジェダイト……」

「あのリンダが、ローゼを利用してる魔法薬クラブの子に喧嘩を売らなかった時は雪でも降るかと思ったわ」

「……え」

「信じられる? ローゼをおだてておけばノルマを肩代わりしてくれるって自慢げに言ってた子に、なにもしなかったのよ?」


 ありえない。

 それが率直な感想だった。リンダであればローゼスタの仇とばかりに乗り込んで行って大喧嘩しているだろう。それこそ、ローゼスタが止めるまで。


「なんで? やっぱりリンダは私のことなんかどうでもよくなっちゃった?」

「逆よ、逆。寮でもクラスでもなんとなく気まずいじゃない? ここで喧嘩してローゼに嫌われたくなかったみたい」


 じん、と胸が熱くなった。あのリンダが、ローゼスタのことを思ってなにも言わずにいてくれたのだ。

 リンダは自分のことなら頓着しないが、友人を馬鹿にされるのは許せない性格だ。そんな彼女がローゼスタのことを慮ってただ黙って通り過ぎた。いや、通り過ぎただけでも効果はあっただろう。普通の神経をしていればそんなことを聞かれたらまずいと焦るはずだ。

 それで今日は誰からもノルマを押し付けられなかったのか。思い返して納得した。


「仲直りしてあげて? リンダはローゼがはじめてできた友達なのよ、浮かれていたし、リンダなりに大切に思ってのことだったわ」

「私が何に怒ってるか、ジェダイト知ってたの?」

「わからないわ。でも、仲間はずれが寂しいのは知ってる」


 三人の中で翡翠一人が男なのだ。女と偽って過ごしているが、女の子にしかわからない悩みを翡翠は理解することができない。

 翡翠が一歩引いた態度でいるのは別れを意識してのこともあった。

 東覇国に帰ればリンダともローゼスタとも会えなくなる。特にローゼスタには真実を伝えることなく別れることになるはずだ。翡翠はいつか来るその時を忘れたことはなかった。期間限定の友情だと、だからこそ大切にしたいと思っていた。


「今だって、リンダとローゼで喧嘩して、私だけ仲間はずれ。ずるいわ」

「ずるいって、けっこうきついわよ、コレ」

「それでも、よ。喧嘩するほど仲が良いって言うじゃない。私とリンダは何度か喧嘩したことあるけど、ローゼとはないもの。なんかちょっとムカついてる」

「ふ、ふふっ。勘弁して、もうこりごりよ」


 とうとう紅茶を飲んでいる場合ではなくなり、カップをソーサーに戻した。カチャカチャと音を立てるそれを落とさないようにしつつ、ローゼスタが腹を抱えて笑い出す。

 いつもすまし顔の翡翠が、なんて子供っぽいのだろう。久しぶりに心から笑えた。


「……もう平気?」


 翡翠が聞いた。


「もう平気。ありがとうジェダイト。リンダに言いたいこと言って、すっきりしてくるわ」


 翡翠が差し出した手に茶器を乗せて、ローゼスタはリンダの待つ部屋に向かった。

 ドアの前で深呼吸してからドアをノックする。

 叱られる寸前のような顔をしたリンダが顔を覗かせた。


「ローゼ……」

「こんばんは。入っていい?」

「あ、どうぞ。好きに座って」


 ローゼスタは自分の部屋を変わらない間取りを見回して、リンダの学習机にあった椅子に座った。

 教科書や文房具が散乱しているから一目でわかった。翡翠の机はきちんと整頓されている。性格がモロに出ていた。

 リンダはベッドにちょこんと座っている。


「リンダ。私が何に怒ってるか、わかってる?」


 何度も考えていたのだろう、リンダはすぐに首を振った。


「あなたが私を仲間はずれにしたことよ!」

「えぇっ? いつそんなことしたっけ?」


 自覚していなかった。

 まあそうだろうなと思ったが、これでは一人で怒って拗ねていたローゼスタが馬鹿みたいだ。


「マッジー先輩の時よ。私は止めたのにリンダは窓から飛んで行っちゃうし、ジェダイトは追いかけていったじゃないの。私は置いてけぼりだったわ」

「えっ」

「しかもジェダイトは止めるどころか二人で強盗やっつけたって言うじゃない!? 私がどれだけ心配したと思ってるの!?」

「ごっ、ごめん!」

「それだけじゃないわよ! 二人して朝まで空飛んでたって! どうして私を置いて行くの!」


 二人乗りならともかく、三人も乗ったらバランスが難しくて飛ぶのは無理だ。

この時ばかりは空気を読んだリンダは黙ってローゼスタの主張に耳を傾けた。


「私はそんなに頼りない!? 連れていきなさいよ!」


 ローゼスタは叫んだ。

 ここは「もちろん!」と答えるのが正解なのだろう。鈍いリンダでもわかる。

 だが、リンダにも譲れないものがあった。


「……ごめん。それはできない」


 断られるとは思わなかったのか、ローゼスタが目を見開いた。


「どうして?」


 マッジーの件は揉み消しこそ成功したが、ハーツビート家と東覇国が絡んでいたのだ。

 今後もこういうことは起こるだろう。今回はお粗末だったが相手が本気を出してきたらとてもローゼスタを守っていられる余裕はない。彼女は平民で、吹けば飛ぶような存在だ。


 翡翠のことを打ち明けるのは、リンダだけの判断ではできなかった。リンダはなるべくローゼスタを傷つけないよう言葉を選んだ。


「ローゼは女の子じゃない。喧嘩なんて、危ないところに連れて行けないわ」

「リンダとジェダイトだって女の子じゃない!」


 そしてリンダの信念は『女子供にやさしく』だ。

 これは、言い換えれば『女はすっこんでろ』になる。


 女が戦うのはいざという時だけでいい。男には男の世界があり、そこに女が足を踏み入れるのはルール違反だ。

 女がつるんでトイレに行く理由が男にわからないように、男には男だけの友情が存在する。


「あっ」


 しかし、その理屈はリンダになった今では通用しなかった。

 そうだった、という顔をするリンダを、ローゼスタは残念そうに見た。


「リンダ……。もうちょっとくらい女の自覚持ちなさいよ……」


 お茶会の愚痴やらなにやらを言っておいてそれはないだろう。まことにごもっともな意見にリンダは恐縮するしかなかった。


「はぁ~、まったく。……で、本当のところはどうなの?」

「えっ?」

「別の理由があるんでしょ? それは言っちゃ、ううん、私が聞いたらいけない話?」


 ローゼスタにだって、リンダの事情はわかっているつもりだ。

 ジークズル公爵家からハーツビート公爵家に養子に出された姫。もうこれだけで事件の匂いがぷんぷんする。母親の死の影にミステリーが隠されている感満載だ。


「隠すの下手よね、リンダ。普通の女の子だったら「あんなことは二度とない」って言うところよ。何かあるんでしょう? 私じゃ力になれない?」

「……巻き込みたくないの」

「それは、私が平民だから?」

「うん」


 リンダはローゼスタの洞察力に驚いた。言われてみればたしかにそうだ。普通の女の子なら喧嘩を忌憚する。

 リンダは自分がこの世界では普通ではない自覚があった。ローゼスタもこの年頃の少女にしては頭が良く、度胸もある。魔法だって上手だ。

 それでも、リンダはローゼスタに平和なところにいて欲しかった。


 ローゼスタは椅子から立ち上がった。


「じゃあ、なんで友達になったの? 平民だから? そんなの関係なく友達になったんじゃなかったの!?」


 平民だから、明確に引くべき線がある。

 翡翠にも言われたことだ。

 頭でわかっていても心までは割り切れなかった。懸命に勉強してきたことが、平民のひと言で否定された気分になった。それも、リンダにだ。


 リンダは哀しそうに眉を下げた。

 瑠璃色の瞳はどこまでも透きとおり、ローゼスタへの友情で潤んでいる。


「リンダが公爵令嬢だっていうんなら、私は自分の実力でそれを越えてみせるわ。ねえ、友達が大変な時に頼ってすらもらえない気持ちがわかる? わかってよ!」

「ローゼ……!」


 リンダが手を伸ばすとローゼスタが抱きついてきた。

 ローゼスタも悩んでいたのだ。どうやったって生まればかりはどうにもならない。リンダと翡翠に最低でも迷惑をかけないようにと成績で実力を示した。

 もともと勉強好きで努力を惜しまないローゼスタでも、自分のせいで二人が悪く言われるのは耐えられなかった。見る目があると認められることを目標にして頑張ってきたのだ。


 ローゼスタが顔を埋めた右肩が熱い。泣いているのか。リンダの胸がじんと痺れた。


「ローゼ、……怒らないで聞いてくれる?」

「うん」


 ローゼスタは顔を上げると涙を拭い、リンダの隣に座った。


「マッジー先輩を襲った強盗、杖を持ってたの」

「杖? 夏休み前にリンダが作ってたアレ?」

「うん。それを真似して作った不良品だったけど、あれは私が開発したものだって貴族は知ってる。杖は私が回収して、犯人にも口止めしたわ」

「……ハーツビート家に恨みのある人だったってこと?」


 ローゼスタは思いのほか大きな話に目を瞠った。


「ううん。そうじゃなくて、盗作の犯人は単なる金儲け目的。それは決着がついてるわ」

「なんだ、良かった」


 リンダとリヴァイの魔法の杖事業はまだはじまったばかりだ。責任者であるリヴァイを悪く言うことをリンダは避けた。


「問題は、強盗の裏に東大陸がいたってこと」

「東大陸!?」


 安心したところに爆弾である。思わず立ち上がったローゼスタに「声が大きいわ」と悪代官と商人みたいなことを言って座らせる。鮒は安いと言うこともなく、ローゼスタは顔をこわばらせた。


「ど、どうしてそんなところが出てくるのよ……」

「これはあくまで予想だけど、味噌と醤油のせい」

「ええぇっ!?」

「ローゼ」


 しー、と唇に人差し指を当てて静かにするよう示すと、ローゼスタは慌てて口を押さえた。


「東大陸では味噌と醤油は秘伝なのよ。外部に製法を漏らしちゃいけないの」

「ハーツビートが盗んだんじゃないかって疑われてるのね?」

「それもあるけど、原料の関係であくまでうちが作ったのは「味噌っぽい発酵食品」と「醤油に似た調味料」よ。本場の本物とは別物」


 本来ならじっくり時間をかけて行う熟成を魔法でさっくり省いた上、肝心の麹が清酒から取り出した米麹のみだ。似てはいるが、風味や旨味が足りていない。味見をしたリンダも味が違うと感じていた。目下研究中の課題である。


「じゃあ……」


 いきなりラグニルドに秘伝のはずの味噌と醤油を製造する貴族が現れたら、当然東大陸は探りを入れただろう。

 プルートとトリトの婚約式は公爵家らしく盛大に催された。ハーツビートの味噌と醤油はそのお披露目でもあったのだ。

 またリンダの希望で魔法学校にも提供されたため、ものすごい勢いで広がっている。

 というか、隠す気がはじめからなかった。


 強盗の件は、リンダを見つけた東大陸の警告と考えることもできる。


「うん。ほぼ私のせい」

「バッ……」


 カじゃないの!? と怒鳴りつけそうになり、ローゼスタはかろうじて堪えた。

 リンダに悪気はまったくないのだ。良かれと思って、心のままに行動した結果がとんでもない事態を生んだだけ。

 ローゼスタは「平民だから」の意味を考え直した。


「……もしも私がやったんなら、簡単に暗殺できそうね」

「いや、それはないよ」


 リンダはローゼスタが納得してくれたことにほっとした。

 なんとか翡翠のことを隠しつつ東大陸最大の国家、東覇国が絡んでくる危険を伝えなければ、ローゼスタが危ない。


「平民だからこそ、暗殺なんてリスクの高いことはしない。金で買収、それを拒むなら一家ごと囲うか、結婚相手を見繕ってくるでしょうね」


 金の卵を産む鳥を殺すくらいなら、操る方法を考える。


「結婚?」

「ローゼ好みの男にひっかけさせて、おだててその気にさせたところで「実は母が病気で」とか「仕事に失敗した」とか言って同情誘うパターン」


 それを結婚詐欺という。

 妙に現実的なたとえにローゼスタはぞっとした。


「結婚しちゃえばこっちのもんだもんね。特にローゼは社会に出たら「男に負けない」とか言って仕事の鬼になりそうだから、運命の出会いをでっちあげられないように気をつけて」

「わ、わかったわ……」


 ものすごくありそうな未来だ。ローゼスタは頬を引き攣らせつつ忠告に感謝した。


「ねえ、まさかリンダのほうが暗殺されそうなの?」


 平民のローゼスタがえげつない懐柔策なら、公爵令嬢のリンダはどうなるのだ。ローゼスタは涙目になった。


「それなら返り討ちにするからいいんだけど……」


 むしろリンダは刺客上等である。

 しかし、いつだって現実は想像より残酷なのだ。聞くのは怖いが、知らないほうがもっと怖い。ローゼスタは続きを促した。


「だけど……?」

「下手するとハーツビートと東大陸で全面戦争。東大陸にもハーツビートの系列会社があるから慎重にやるだろうけど、まずは経済に圧力かけてくるでしょうね」

「本気でやばいやつじゃないの……」


 ローゼスタは額を押さえて呻いた。

 これはリンダがローゼスタを遠ざけるわけである。ローゼスタ程度が手を貸したところでどうにもならない問題だ。


「だからね、ローゼ。私たちのためにも加勢しないでほしいの。仲間はずれじゃないのよ」

「わかったわ。人質になったり、利用されないためね?」

「そうよ」


 深く大きなため息を吐いたローゼスタに、リンダが不安そうに聞いた。


「ローゼ、私のこと、怖い?」

「馬鹿ね」


 ローゼスタはリンダの肩を抱き寄せた。

 リンダは時々大人のような洞察と懐の深さを見せるくせに、反面子供のように無邪気で残酷だ。

 そのアンバランスがリンダの魅力でもある。放っておけない、力になりたいと人に思わせる。

 リンダが見ている同じ風景を、隣に立って見てみたいと思わせる魅力があるのだ。


「ほんと、馬鹿なんだから。公爵令嬢のリンダは怖くても、私の友達のリンダは怖くないわ。ただ、リンダたちの世界に入り込めないのが悔しいだけ」

「ごめん、ローゼ」

「あと、それはそれとして、次に何かやる時は私に相談しなさい。どこに火種があるかわかったもんじゃないわ!」


 とてもごもっともである。


「だいたいリンダは軽率すぎるのよ。空飛ぶ箒だけでもとんでもないのに魔法の杖とか、味噌と醤油を作りだすとか、もうちょっと考えなさい!」

「怒らないでって言ったのに!」

「怒らせるようなことばっかりやってるからでしょ!!」


 特大の雷を落としたローゼスタは、こいつ反省してないな、とふてくされるリンダを見て思った。この一連の出来事は元を正せばリンダのせいである。だいたいリンダが悪い。


 バカ、ともう一度繰り返したローゼスタは、この愛すべき友人をぎゅっと抱きしめた。




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