6.団欒
唯華視点
「唯華ちゃん、後ろ通るよー」
「言ってくれれば取ったのに」
「あ、ほんと? じゃあ、次からそうする」
「2人とも、随分仲良くなったんだね?」
子供たちは教育テレビを見てくれているから、旭と2人でキッチンに立っていればお義母さんが帰ってきて不思議そうにしている。
「あ、おかえりー」
「おかえりなさい」
「ただいま。2人とも、ご飯の支度ありがとう」
「もうすぐ出来るよ」
手を洗いに行ったお義母さんを見送って、旭を見ればちょうど目が合った。
「仲良しだってよ?」
「うん。嬉しい」
満面の笑顔、眩しい……
自分から聞いたのに、まだ耐性がついていないからそっと視線を逸らした。
「唯華ちゃん、ちょっと薄いかな?」
目の前に差し出されたスプーン。味見をして欲しい、って事だろうけど、このまま飲むの? 受け取るべき?
「あーちゃん、それなーに?」
「豚汁って分かる? 飲んでみる?」
「のむ!」
「零さないように、ゆっくりね」
迷っているうちに梨華が来て、旭がしゃがんであーんしてあげている。何この光景、可愛い……
電話越しで話していたとはいえ、この懐き方は凄いと思う。今朝だって、あーちゃんが居ない! って大騒ぎで、下にいるよ、と言えば走っていったし。
戻ってこないから覗きに行けば一緒に寝ていて、可愛すぎて1人で悶えてしまった。
「……ん? 唯華ちゃん? おーい?」
「あっ、ごめん、何?」
「梨華がもっと飲みたいって言うんだけど、先に食べさせちゃってもいい?」
「あ、うん。いいよ」
「梨華、座って待ってられるかな?」
「うん!」
元気よく返事をして定位置に向かう梨華を見る視線が優しくて見つめてしまえば、照れたように笑って食器棚を開けたけれど、今度は困ったような顔をしてこっちを見た。
「唯華ちゃん、梨華の食器どれ……?」
「こっちの引き出しで、悠真はこっち」
「あ、ここに入ってるのか……ありがと」
「うん」
「梨華、嫌いなものある?」
「人参はあんまり……でも入れちゃって」
「ん。分かった。悠真は?」
「悠真はなんでも食べるから大丈夫」
もう少し小さく切った方が良かったかな、って呟く旭に子供用のハサミを渡せば、こんなのあるんだ、とキラキラした目で受け取って、豚汁を運んで行った。
「梨華は1人で大丈夫?」
「うん!」
「悠真、おいでー」
そのまま嬉々として世話を始めた旭を眺めていれば、入れ替わりでお義母さんがキッチンに入ってきた。
「この辺、運んじゃって大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ばぁばおかえり!」
「ばぁばー」
「ただいまー。悠真、旭叔母さんに食べさせてもらっていいねー?」
「叔母さん……いや、それはそうなんだけど、あーちゃん、がいいなぁ……」
「あーちゃんはおばさんじゃないよ? かわいいもん!」
「いや、叔母ではあるんだけど……難しいよね」
2日目にして、この家族感……いや、義理の妹だし、家族なんだけど。
悠真のお世話は旭がやってくれたからゆっくりご飯が食べられた。
悠真もご機嫌だし、梨華もいい所を見せようと人参を食べられるよ、とアピールをしていたし、微笑ましかった。
「「や!!」」
食洗機を回して、2人をお風呂に入れちゃおうと思ったけれど、動かない。
「2人ともお風呂嫌いなの?」
「率先して入ってはくれないかなぁ……」
「2人とも、昨日は楽しそうだったけどな」
「入るまでがね」
「そういうもんか……」
こっちの思い通りには動いてくれないんだよね。
「梨華、悠真、2人がママとお風呂入らないなら、あーちゃんがママと入ってくるよー?」
「はっ!?」
いやいやいや、なんで!?
「りかも!!」
「ゆーも!」
「えー、ママはあーちゃんと入りたいって」
「りかと!!」
「唯華ちゃん、誰と入るー?」
あ、そういう事ね。びっくりしたぁ……
「梨華と悠真とかな」
「あー、振られたー」
「ふふん。りかのかち!」
「うわぁ、なんか悔しい……」
「りかがままのいちばんだもん!」
「ゆーも!」
「2人とも1番だと思うよ。ほら、お風呂行っておいで」
「「はーい!」」
「旭、ありがとね」
「あ、唯華ちゃん、待って」
元気よく走っていった2人を追いかけようと旭の横を通り過ぎようとすれば、呼び止められた。
「ん?」
「今度一緒に入ろうね?」
「入りません!」
「ちぇー」
あぁ、もう、心臓に悪い……
「髪の毛乾かしたりとか、手伝えることある?」
頼りすぎるのも良くないけど、実際大変だし、手伝って貰えたら有難い。お願いしようかな……
「ありがとう。上で待っててもらってもいい?」
「うん」
「まま、りかでるー」
3人で湯船に浸かっていれば、梨華はもう出たいらしい。タイミングがバラバラだと、どっちかを我慢させないとならなくて、1人だと大変なんだよね。
「入るよー?」
「うん」
お風呂場からコールすれば、すぐに旭が来てくれた。
「梨華、出たら旭がいるから、1人で出られる?」
「でれる!」
「ドアも閉めてね」
「うん!」
背中を向ければ、ドアが開けられて、涼しい空気が流れ込んでくる。
「梨華、寒くない?」
「さむくないよ!」
「服着て、髪乾かそうね」
「うん!」
仲良く話すのはいいけど、閉めてくれないかなぁ……
「あ、しめないと!」
「自分で出来る?」」
「うん! りかがしめる!」
「お願いね」
ちゃんと覚えてて偉い。ドアが閉められて、ホッと息をはいた。背中だけとはいえ、裸を晒すのは緊張した……
「唯華ちゃん、ドライヤー向こうに持っていくね」
「分かった」
「よし、梨華行こっか」
2人の声が遠ざかっていくのを聞きながら、旭が協力してくれる事に慣れちゃったら大変そうだなぁ、とぼんやりと思った。




