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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海


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第13話 自分が無視られるのは許さないお嬢様

「という事があったので、ご意見を伺いたいのですが」


 週明け月曜日。

 俺は美術室にて頼れる男女に質問をしていた。

 片方は如何にもモテそうな長身男子である右治谷。

 もう片方はコミュ力の高そうな陽キャギャルの季沙。


 質問の内容は、言うまでもなく先週末の下校中に梓乃李に言われた事だ。

 捨て台詞のように押し付けられた予定。

 あれは一体何だったのか。


 今週からゴールデンウィークなため、飛び石で休日が挟まる。

 例の予定は明日に迫っていた。

 とりあえず誰かに相談したくて、丁度居合わせた友達二人に話してみたのだが。


 言うまでもなく、二人はニヤニヤ笑っていた。

 それはもう愉しそうに、俺の事をネタとして消費してやろうという魂胆が透けて見える表情だ。

 

「それはどう考えてもデートだな」

「ね~。間違いなさ過ぎて怖いレベルだし、うち的にはしのりんがそんなに大胆な誘い方をするんだって驚きで、めちゃくちゃ興味深い」


 わかってはいたが、完全におもちゃ扱いである。

 だがしかし、それでも俺は自分以外の他者の意見も聞いておきたかった。

 何かの間違いであって欲しかったから……。


 ちなみにこの場には暁斗はいない。

 元々今は掃除時間だし、そこに右治谷が絡みに来ているだけだ。


 にしても、やらかしたな。

 好感度が上がり過ぎだとは思っていたが、まさか一対一の約束をしてくるまでとは思わなんだ。

 どこで選択肢を間違えた……?と考えても意味がない。

 生憎、俺は豊野響太というモブキャラのトゥルー行動なんて知らないんだから。

 主人公に干渉しまくってる時点で、恐らく全ての選択肢を間違っている。


「行きたくないん?」

「そりゃデートなんて言われたら気が重い」

「なんでだよー。羽崎さんって可愛いじゃねーかよ」

「でもアイツは暁斗と良い感じだろ? ただの遊びの予定でも気が引けるんだよ」


 半分は本音であり、半分は誤魔化しの言葉だ。

 と、俺の言葉に二人は顔を見合わせて悩み始める。

 どうやら陽キャコミュニティではよくある揉め事らしい。


 右治谷は特に暁斗と梓乃李の関係を知っているし、なんとも俺に肩入れしにくいのだろう。

 そのため、何か名案が出ないかと待っていても、それらしき解決法は出てこなかった。

 困ったもんだ。

 ここでの行動選択を誤ると、死にかねないのに。


「貴方達、掃除当番でしょう? 口じゃなくて手を動かしなさいよ」


 俺達がそんな会話をしていると、外野から声が差し込んできた。


 今日は珍しく、雪海が表に出てきているのだ。

 無言だったから放置していたのだが、俺達の話に嫌気が差したらしい。

 急に睨みつけてきたので、仕方なく手を動かす。


「……羽崎が何を考えてるのか、俺にはわからないんだよ」


 箒で埃をまとめながら言うと、右治谷は苦笑した。


「まぁあの子、教室でも口数少ないしな」

「そりゃ最近まで教室に居たグループが、しのりんの事をいじめてたからじゃん」

「そう言えば亜実達って転校するらしいけど、アレって豊野の仕業なのか?」

「え」

「噂になってるぞ? 羽崎さんの事大好きな豊野が、いじめを成敗して学校も辞めさせたって」


 ぞっとした。

 俺と梓乃李以外誰も知らないはずの話だ。

 何故右治谷の耳に届いているのか。

 

「どこから流れた噂だよ」

「又聞きだから知らん。でも多分、亜実達の誰かが漏らしたんじゃね?」

「……」


 あり得るとすればそれしかないか。

 俺も交渉の時、口封じまではしなかったし。

 まさか自分から『豊野とかいう陰キャオタクにやり込められました』ってゲロるとも思ってなかったからな。

 情けなくないのだろうか。

 結局居ても居なくても迷惑な奴らだ。


 なんて話していると、今度は大きな打撃音が教室内に鳴り響いた。

 みんなでビビって後ろを向いたところ、そこには机に拳を振り下ろした雪海の姿が。

 綺麗なフォームの紛う事なき台パンである。


「無視する気? 豊野響太」

「……」


 どうやら先程、俺が注意されても返事しなかったのにキレているらしい。


 逆鱗に触れた様子の雪海を見て、二人は俺から離れる。

 そのまま荷物を持ち、笑顔で後ずさって行った。


「じゃ、うちらはお先に~」

「お、おう。また羽崎さんとの話の続き、教えてくれよ。――じゃ!」

「おい! まだ掃除時間終わってないぞ!?」


 面倒事に巻き込まれたくないと思ったのだろう。

 そりゃそうだ。

 評判最悪のお嬢様がキレた室内になんて、居たくないのは誰しも同じ。

 勿論俺も、な。


「……うふふ。これで二人きりですね」


 不穏な事を言う雪海に、俺は白目を剥いた。

 

 ――なぁ、俺ってモブだよな?


 じゃあなんでこんなに色んなヒロインから干渉されるんだよ。

 そもそもなんでフルネームも把握されてるんだよ。


 今日も帰りが遅くなりそうだと、俺は肩を落とすのであった。

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