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破滅ヒロインの幼馴染に転生した俺、バッドエンドの巻き添えは嫌なので幸せにしてやろうと思います  作者: 瓜嶋 海


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第12話 粘着質な破滅ヒロインとその地雷

 金曜日になった。

 特にイベントが起こるわけでもないため、久々に平和な日々を過ごしていたのだが。


「最近柊さんと仲良いよね」

「そう?」

 

 今日は少し様子が違った。

 何故なら、下校の際に梓乃李が付いてきたからである。


 いつも通り掃除を終わらせた後に季沙と下校しようとしていると、昇降口でばったり梓乃李と出くわした。

 そこで季沙が謎の気を遣わせて、二人きりにしてきたわけだ。

 余計なお世話なのだが、こうなった以上梓乃李を避けるわけにもいかない。

 

「よく一緒に居るじゃん」

「掃除場所が同じだから」

「一緒に下校してるって話も聞くけど?」

「帰るタイミングが被るからな」


 掃除と言えば七ヶ条雪海の件だが、彼女とは一切接触せずに過ごしている。

 顔を合わせることも少ない。

 余程嫌われたのか、奥の個室に居るのはわかるのに、一切出てこない。

 おそらく掃除時間は引きこもって、俺の顔すら見ないようにしているのだろう。

 全くもってイラつくお嬢様だ。


 と、俺が記憶を思い返して顔を顰めている間にも、梓乃李は距離を詰めてくる。


「私とは帰る事ないじゃん」

「じゃあ今この状況はなんだってんだい」

「それは……あはは、放課後デート的な?」

「はっはっは、なるほど。――という冗談は置いといて」

「勝手に置かないでよ。確かに冗談ではあるけどさ? むー、なんかムカつく。えいっ」


 肩を押されて俺はよろけた。

 相変わらず怪力で、力加減を知らない女だ。

 あと一歩で車道に乗り出し、事故死エンドを迎えるところだった。

 やはり死神に違いない。


「そう怒るなよ」

「怒ってないし? でもなんか、やっぱ変だよ。柊さんとは毎日放課後デートしてるって事じゃん」

「話が飛躍し過ぎだろ」

「だってだって、今日だって二人仲良さそうだったしさ。付き合ってるの?」

「滅相もないです」

「でも柊さんってば、この前君に『一生隣に居てくれ……』ってキリっと言われたって言ってたよ? この前私を庇ってくれた時と同じトーンじゃん」

「アイツ、余計な事を」


 似たようなことは言ったが、語弊がある。

 そもそもただのじゃれ合いだったのに。

 わざわざ梓乃李に報告している点が憎たらしい。

 俺たちの仲をかき回そうとしているのが丸分かりだ。


 と、さっきからずっと謎に詰問口調な梓乃李に、俺は逆に問いかける。


「そっちはどうなんだよ。色々あったろ?」

「……えー、そういう事聞く?」

「気になるから」


 俺ばかり聞かれるのもフェアじゃない。

 あと身の安全のためにも情報収集はしておきたいし、この機に近況を聞いておかないとな。


 しかし、彼女は俺が思っていたのとは違う事を言い始めた。


「お陰様で嫌がらせは終わったけど……急に暗い話するじゃん」


 ジト目を向けられ、俺は顔を逸らす。

 マズい。

 勘違いさせたようだ。

 俺としては暁斗との仲を聞いたつもりだったのだが、いじめの話だと思ったらしい。


 あと、ちなみに例のグループは本当にあれ以降学校に来なくなった。

 噂では別の高校に通い始めるのだとか。

 素行が良くないのは有名だったため、特に誰も嘆いていない。

 裏で先生から退学処分を受けたのだろうと、勝手な解釈をされていた。

 どのみち、俺の存在が明るみに出ることはなかった。

 丸く収まったのである。


「あーあ。男ってみんなノンデリ。せっかく楽しい放課後デートだったのに」

「後半の冗談は聞かなかったことにして。――それ、俺と暁斗の事言ってる?」

「よくわかったね」

「まぁ元々俺は嫌がらせの件じゃなくて、暁斗との仲を聞いたつもりだったんだけど」

「え、嘘」


 もっとも、無理もない。

 あれだけの嫌がらせを受けていたんだ。

 神経質になるのは仕方ないだろう。


 早とちりだったと知って、梓乃李は苦笑する。


「ご、ごめん。私、勘違いして……って、別に須賀君とも何もないけど?」


 と、すぐに意味不明そうに首を傾げられた。

 まるで暁斗の事なんか意識してませんけど?って顔だ。

 

「いやお前、つい最近まで良い感じだったじゃないか」

「あー、うん。まぁ、ね」

「――え?」


 含みのある微妙そうな表情を浮かべる梓乃李に、さーっと血の気が引いていく。


 ちょ、ちょちょちょちょーっと待った。

 は? ナニその反応

 え、なんかあったの?

 俺の知らないところでフラグ折れちゃったの?

 バッドエンド確定しちゃったの?


「……アイツ、何かしたのか?」


 恐る恐る聞くと、梓乃李は爆笑した。


「もー、何その反応。まるで私たちが仲悪くなったら死にそうなテンションだね」

「死にそう、じゃなくて死ぬんだわ」

「え? なにそれ。怖いよ」


 冗談めかした俺の本音にドン引きする梓乃李。


「豊野君って昔から変わってるよね」

「そうだな」

「にしても、何? そんなに私に須賀君と付き合って欲しいの?」


 核心を突くような質問をされ、俺は困った。

 正直その通りなのだが、あまり執拗に応援し過ぎるのも不自然だ。

 ここは上手く躱しておこう。


「そりゃな。羽崎だってその方が幸せだろうし」

「ふーん。私の幸せを願ってくれてるんだ?」

「当たり前だろ。世界で一番お前の幸せを願っていると言っても過言ではない」


 だってそうじゃないと、俺死ぬんだもん。


「っ!? え、え……それはやっぱり、幼馴染だから?」

「勿論。俺にとって羽崎は特別だし」

「……馬鹿じゃないの?」

「え?」


 ヤバい。

 いつの間にか梓乃李が真顔になっている。

 自分の世界に浸り過ぎて、返事が雑になっていただろうか。

 何やら会話に齟齬が生じている気が……。


 様子のおかしい梓乃李に焦る俺。

 機嫌を損ねてしまったのかと思って、テンパる。


「い、いや。俺はただ心配なだけで! ほら、あんな事があったから!」

「だからそこはもういいって。君のおかげで解決したじゃん。感謝してる。ありがと」

「だったらなんで……」

「知らないし。……自分でもわかんないんだもん」


 何やら地雷を踏んだらしい。

 おかしいな。

 好みはさて置き、全シナリオをスキップせずに読んできた俺が、梓乃李の性格や地雷を見逃すはずがないのに。


 不安に思っていると、彼女は急に自分の両頬を叩いた。

 そして気合の籠った表情で、俺を睨む。


「29日、昼から会おうよ。駅前広場に13時ね」

「え?」

「じゃ、また来週」


 言うなり、すぐさま背を見せる梓乃李。


 駅前広場とは、隣町である秩倉市の定番待ち合わせ場所だ。

 俺達の地元でもあるため、『駅前広場』と言われるだけで共通認識として想定する場所は一つ。

 だがしかし、何故だ。

 何故俺をそんな場に召喚する必要がある?


「……どういう事っすか?」


 俺はただ一人、その場に残されるのであった。

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