王都からの呼び出し
告知なしの本日二話目です。
大人になり、少し変化したレイムの周囲の関係、しかしレイムは変わらず、彼女達を大事に思っていた……。
僕は今日もフィリアさんの店に来ている。
最近は少しでもフィリアさんに借りを返す為に、眼鏡の整備以外でもお店に来て手伝いをするようしているのだ。
そして今は休憩中。
例え、毎日あまり客が来なくて、ほとんどが暇な時間だとしても……間違いなく今は休憩中なのだ。
そんな中、僕はフィリアさんと世間話をしていた。
「ひと月ほど留守にな……」
「はい、丁度昨日からですね」
少し前ラーナ達に、ギルドからの伝手で手紙が届いた。
王からの勅命で王都へと呼び出されたのだ。
流石に勅命は断れないので、一ヶ月かけた王都への旅行が決まった。
王都に向かうまでに一週間強、そこから王都にしばらく滞在し、それから帰ってくるらしい。
僕もついて行きたかったが、流石に呼ばれてないので行くわけにはいかなかった。
「面倒臭いけど行ってくるわ……。精々都会の人間をいたぶってくるわよ」
昨日ラーナはそう言って家を出ていった。
「何でも二人の噂を王様が聞きつけて、是非ともその武勇を見てみたいと思ったそうで……」
「王か……あまり良い噂を聞く人物ではないがな」
「そうなんですか?」
「ああ、何でも特殊なスキルで大分好き勝手なことをやってるらしいのじゃ」
「特殊なスキル、ですか……?」
「まあ、あくまで噂じゃ。気にするでない」
そう言われても気にしてしまう。
彼女達の身に何かあれば心配だ。
「王と言えば大なり小なり、そういった悪評がどこからか湧いてくるモノじゃよ。それに、そんなに心配することもないじゃろ? あやつらは強いとお主は言っていたではないか」
「……そうですね、僕が心配しても仕方ないですよね」
僕が気を取り直そうと、頭を切り替えたところで、フィリアさんが僕の方に近寄り耳元で囁いた。
「そういえば、お主ラーナとはもう橋渡しを終えたのかの?」
サッと素早くフィリアさんから離れ、彼女の顔を見るとニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。
全く……下世話なことを聞いてくるものだな。
おそらく僕の顔は真っ赤に染まっているだろう。
僕はズレた眼鏡をクイッと指で調整し、正位置に戻す。
そして、そのまま赤くなった顔を隠しながら、彼女の問いに答える。
「……まだですよ。僕自身まだ早いと思っていますし、ラーナ自身も僕と橋を渡すことに迷いがあるみたいです。僕は弱いですから……」
橋渡し――女性が初めて契りを交わすとき、V・Lは消滅し、その代わり、相手の男性と霊的なつながりが芽生える。
それが橋渡しだ。
そのつながりで互いの力は絡み合い、身体能力などが上昇したりもする。
とは言っても、その効果は微々たるもので、上昇率は一割にも満たないくらいらしい。
だがそれでも、この霊的な繋がりというのが、ラーナ的にはネックなのだろう。
V・Lの特性上、女性は霊的な繋がりを一度だけしかつなげられない。
いや、逆に一度だけ確実に自身の能力を上昇させられるのならば、僕のような弱い人間を選ぶべきではないと感じているのかもしれない。
言うなればそれは本能。
強い相手と子どもを作りたいと思うのと同じ欲求なのだろう。
「……まあ、焦ることはない。そういうのは時がくれば自然とそうなるものじゃ」
珍しくフィリアさんが僕に気を使ってくれている。
そんなフィリアさんをありがたく思うが、同時に先ほどからかわれたことに対する、ささやかな仕返しを思いついた。
僕は芽生えたイタズラ心を実行へと移す。
「フィリアさんも、そうだったんですか?」
僕は先程のお返しと言わんばかりに、ニヤリと笑って質問してみた。
「な……! も、もちろんじゃとも! あーあのときは大変じゃったなー。あれは何年前じゃったかのー?」
フィリアさんの声と体はプルプルと震え、明らかに動揺している。
全く、変な話を振ってくる割に、フィリアさんはこういう話を振られるのは苦手なんだよな。
「ふふ、言わなくてもいいですよ。無理しないで下さい」
「あー今からが退廃的で背徳的な話になるはずじゃったのになー。後で聞きたがっても遅いんじゃからな?」
「はいはいそうですね」
そんなこと言って……胸を撫で下ろしているのがバレバレですよ。
僕なんかの為に無理するんですから……。
僕はそんな彼女を見ながら、心の中でお礼の言葉を告げるのだった。
とうとう不穏な空気になりましたね。
主人公がひどい目にあうまであと少しです。
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