表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なぜ、私に関係あるのかしら?  作者: シエル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/24

Ep.16 印象操作〜クララside

Ep.15の一部、表現が分かりにくいとの指摘を受けまして


『事実だけれど、事実でもない 

 嘘だけれど、嘘でもない』 

      ↓

『事実だけれど、真実ではない

 偽りだけれど、嘘ではない』


変更しております。






私は徐々にお姉様の評価を下げていく。



まずは家族や屋敷の人間をターゲットにした。



それには朝食の席が、絶好の()()だった。


お父様とお母様、そしてお兄様も揃っている場で、私は()()()少しだけ姿勢を崩した。




「クララ。背筋が曲がっているわ。ちゃんと姿勢を正しなさい」




案の定、お姉様は冷たい視線を一瞬だけ寄越すと、すぐに自分のお皿に視線を戻した。




「……あ、ご、ごめんなさい、お姉様……」




私はビクリと体を震わせた()()をして、それを隠すようにぎゅっと銀のカトラリーを握り締めたけれど、抑えきれずに手を滑らせたように()()()()、カチャリと音を立ててお皿に落としてみせる。



瞳にじわりと涙を浮かべ、縋るような視線を一瞬だけお父様たちに向けた後、すぐに俯いた。



 

「下を向くのはお止めなさい。公爵家の令嬢なのだから堂々となさい」




そう、それでいいんですよ……



お姉様が()()を吐けば吐くほど、私が『お姉様に怯えている』ことの()()()が増していく。


髪で顔を隠しながら、私はこっそりとほくそ笑んだ。




「クララ、そんなに怯えなくていいのよ?次からは気を付けたらいいわ。セシリアも、もう少し優しく言ってあげてちょうだい?緊張させすぎてしまったら、失敗を怖がって余計に失敗してしまうわ」




お母様は困ったように眉を寄せ、私を慰めながらお姉様に注意をした。


お父様とお兄様も困ったような顔で見ている。



今までは『お姉様によく叱られている』と告げ口をしていただけだったけれど、実際に目にしたことで『厳しい姉と萎縮する妹』という印象を植え付けられることができただろう。




「……はい、お母様……」


「……分かりましたわ」




私は、まだ失敗を引きずっているかのように返事をしたけれど、お姉様は表情を変えずに淡々と答えた。




今日は上手くいった。


でも、この手は何度も使えないだろう……



私は手を替えながら、少しずつ、少しずつお姉様の印象を変えていった。




でも、そんな私の完璧な計画に、()()()()()が混じり込んできた。



私が9歳になった頃、お姉様は突然、一人の男の子を連れて帰って来た。



お父様たちが話を聞くと、孤児院から引き取った子で名前は『ノイン』だそうだ。


年はお姉様より一つ上の12歳。


お姉様は自分で給金を払うから専属執事にすると言い出した。



綺麗に整った容姿に、さらさらとした黒髪、そして射抜くような緋色の瞳……


平民特有の訛りもなく、平民とは思えない洗練されている所作……



でも、それよりも癇に障ったのは、私がどんなに『お姉様に虐げられる妹』を演じても、彼は見向きもしなかった。



お姉様は自分の身の回りのことは、ほぼノインに任せ、常に側に置くようになったせいで、屋敷の中でお姉様のせいにすることが難しくなってしまった。


クビにしてやりたくても、お姉様が個人で雇っている使用人だから、お父様たちでもどうにもできない……



何だか悔しかったけれど、一人くらい仕方ないか……と諦めるしかなかった。



それでも、これを利用しない手はないことに気付き、定期交流でハインリヒ様が屋敷に訪れた時に仕掛けることにした。




「……ハインリヒ様、あの……」



「クララ嬢?セシリアなら授業が長引いているから、まだ来ていないよ?」




ハインリヒ様は、私が言いづらそうに視線を彷徨わせている姿を見ると、心配そうにテーブルまでエスコートしてくれる。



もちろん、お姉様の授業が長引いている事は確認済み。


ノインは授業中も部屋の隅で待機しているから、こちらには来ない。




「いえ……その、あまり、お姉様を責めないであげてください……」



「急にどうしたんだい?セシリアから、また何か「いいえ!!」」




「また、お姉様に怒られたのか?」と続けようとしたのだろう。



そんなハインリヒ様の言葉を()()()遮って、少し大きめの声で否定する。


本当は無礼な行為だけれど、それにも気付かないくらい焦っているように()()してみせた。




「その、お姉様は……ただ、執事のノインをとても信頼なさっているだけなんです。ノインも孤児とは思えないくらいに言葉遣いも、所作も完璧で……それで、()()傍に置いているだけなんです!」




ハインリヒ様が、ノインのことを知っているのかどうかは分からない。



知っていても、孤児だという事までは知らなかったかもしれないし、そこまで常に傍に置いているとは思っていなかったかもしれない。




「……セシリアは、素性の知れない男をそこまで重用していると言うのか?」




ハインリヒ様の顔に、不快感と嫉妬が混じった影が落ちた。




「あ……すみません!今の言葉は忘れてください!その、信頼できる相手がいることは良いことですよね!……なので、ハインリヒ様もお姉様を()()()()()()ください……」




私はハインリヒ様の袖をほんの少し、震える指先で掴みながら、表情に複雑な色を滲ませてみせた。



思った通り、ハインリヒ様はお姉様に不信感を募らせ、二人の間に溝ができた。


更にお兄様が、ハインリヒ様に愚痴を零してくれたおかげで、私の言葉を疑うこともなくなった。




16歳になり、貴族学院に入った頃にはお姉様とハインリヒ様の仲は、もはや修復が難しいほど悪化していた。



さすがのお姉様も、学園の中にまでノインを連れて来ることはできず、おかげで、他の生徒の前で『私が虐げられている』という印象を植え付けられた。




「クララ、卒業パーティーで私のパートナーになってくれないか?」



「えっ、でも……お姉様は……」




ハインリヒ様と一緒に過ごす時間は着実に増え、卒業式を間近に控えたある日のこと。


ついに、卒業パーティーのパートナーとして私を選んでくれた!!




「……セシリアとは婚約破棄をする。クララを長年虐げてきたり、あんな素性の知れない執事や他の男との交流を広げるような者は、いくら優秀だろうと王太子妃には相応しくない」




「だから、クララ。卒業パーティーの場でセシリアとの婚約破棄を宣言し、君を私の新たな婚約者として紹介したい。……受けてくれるね?」と、私の手を取り、熱のこもった瞳でそう告げた。



そして、卒業パーティーの時……ハインリヒ様は、お姉様に婚約破棄を告げ、私と婚約する事を発表した。




……ようやく、ようやく私の願いが叶った!!




徹底的に排除する為に、ハインリヒ様に懇願して王都からも追い出した。




 

……全部……全部、私の計画通りだったのに……



やっと、お姉様もいなくなったのに……




何で、知らない皇女に取られなきゃいけないの!?



……許さない、絶対に取り返してやる……






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
セシリアは身内に対して過大評価していたんだろうな。縁も能力もない相手なら嘘に踊らされても仕方ないけど容易に事実を知ることが出来る者たちがこんな簡単に騙される愚かさが想定を下回った。でこういうのは一度思…
セシリアもセシリアでちゃんと頭おかしいね。 家族や婚約者に何の説明もせずに身元不明の異性を傍に置き続けるって普通に瑕疵になるし、いじめってほどじゃないけど妹に気遣うことなく厳しいだけの存在なのは事実だ…
続きを読むのが楽しみです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ