【三倍返し？】バーチャルだって言ってるでしょ【ホワイトデー】

再生リスト：毎日90秒シリーズ

　白い空間に大きなリボンを下げた少女がひとり。

「こんにちは、人類。彩羽根トーカです。……フゥ」

コメント：こんにちは！

コメント：おや？

コメント：元気なさそう

「ああ、すいません。あのー、あのね？　先月バレンタインでね、無限チョコレートファウンテンを作ったじゃないですか」

コメント：あったな

コメント：もう一ヵ月前か

コメント：マイルームに置いてる！

コメント：デブ生成装置

「あれがね」

　フゥー、と長い息を吐いてトーカは遠い目をする。

「不評でしてね……」

コメント：草

コメント：ええ

コメント：？

コメント：言うほど不評か？

コメント：あー

コメント：サキちゃんが「食べれないじゃん！」って動画だしてたな

コメント：なるほど

「そういうわけで、人類。ホワイトデーも欲しいですね？」

コメント：欲しい！

コメント：おっ

コメント：いいのか？

コメント：もちろん！

「いいでしょう。あげようじゃないですか！」

コメント：ヤッター！

コメント：ありがてぇ……

コメント：初めてホワイトデー女の子から貰うわｗ

コメント：バレンタインにもらったこともないのにな……

「でも」

　とトーカは首をひねる。

「ホワイトデーって何をあげるんでしょうね……？　バレンタインはチョコですけど……さっぱりわからない」

コメント：確かに？

コメント：誰か知ってる？

コメント：知らないな

コメント：飴とかじゃないの？

「――というわけで！　ホワイトデーに何が欲しい！？　を聞いてみました！　それがこちら！」

　怒涛のいきおいで動画が流れ始める。パッとVtuberが出てきては一言、そしてまた切り替わる、一人1秒もない動画。

ミチノサキ「クッキー！」神望リリア「カップケーキですわね」北方少女モチ「パスチラ」雨天乃ちゃいむ「マシュマロ？」きつねたぬ姫「そば」世界初男性バーチャルYouTuberマネージャーアバタ「え？」バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさん「なんで？」無頼少女石花ノト「食いもん！」穂之木クヌギ「飴？」七見屋ミサギ「マカロン！」七見屋アキラ「僕が？」

コメント：はや

コメント：すげえ

コメント：うおおおお！？

コメント：数名発言がおかしいぞ

コメント：謎選出

コメント：なにこの豪華ゲスト

コメント：二名ほど男性がいますねえ

コメント：アキラきゅん？

コメント：そばは草

コメント：パスチラってなんだ？

コメント：ノトちゃんはさあ……

「うおおおお！」

　クッキー、カップケーキ、パスチラ、マシュマロ、そば、虚無、ピザ、肉、飴、マカロン、アキラくん、と書かれた円グラフを壁に貼り付け、雄たけびと共に勢いよく回転させるトーカ。

コメント：ｗｗｗｗ

コメント：草

コメント：パ　ジェ　ロ！　パ　ジェ　ロ！

コメント：アキラくんｗｗｗｗｗ

コメント：アキラくんいけっ！

コメント：虚無がでかい

「うおおおおお！」

　ダッシュで距離を取り、ダーツを取って。

「うおりゃあー！」

　ダーツを投げ、回転する円グラフに刺さる。停止し、集中線と共に拡大されるグラフ。ダーツが刺さった部分は――

「はい、クッキー！」

　間を置かずに映像が、銀のトレーに乗った羽根の形のクッキーの写真に切り替わる。

コメント：！？

コメント：え！？

コメント：実物？

コメント：マジで作ったんか

コメント：いや料理するとこ動画にしろよ！

コメント：うまそう

「そして取り出しますのは、みなさんのお手元にもあるスマートフォン！」

　3Dモデルで作ったスマホを、びしっと指すトーカ。

コメント：ん？

コメント：？？

「インストールするのは3Dスキャニングアプリ！」

　GooglePlayからインストールしている様のキャプチャ映像。

コメント：あっ

コメント：い　つ　も　の

「クッキーを紐でつるして、アプリを起動して360度から撮影撮影！」

　スマホを構えて撮影の様子を再現するトーカ。

コメント：構えが草

コメント：動きがキモ

コメント：トーカちゃん？

「はいアプリから取り込んだ状態がこれ！」

　デン、とやや輪郭がジャギジャギしているクッキーを手にするトーカ。

「ここから3Dモデリングツールで修正修正！」

　倍速でモデルを編集するさまを流す。

「そして完成です！」

　安っぽいSEと共に、きれいに取り込まれたクッキーを掲げるトーカ。

コメント：おおー

コメント：作業速かったな

コメント：単純な形ならモデリングした方が早そうだけど、これならまあ

コメント：作業配信してくれてもいいのに

「はい、ということでね！　お手軽なバーチャルホワイトデープレゼントの作り方でした！」

コメント：お手軽　とは？

コメント：まあモデリングできない勢からしたらね

「いやーまあね、3Dスキャニングアプリで取り込んだのもなかなかいいと思いませんか？　これね、普通のカメラでやってこれですから。今後スマホのカメラが性能向上して、デュアルカメラも標準になったりすると、もっと精度高く取り込めますからね！　いい時代になりました！」

　ニコニコしながら、二種類のクッキーを顔の横で振るトーカ。

コメント：かわいい

コメント：スマホにデュアルカメラ……？

コメント：あるぞ、iPhone7とか

コメント：うちのあいぽんのカメラはひとつだけど

コメント：Plusからな

コメント：カメラでキャプチャする時代かあ

「はい、というわけでね、人類にもお裾分けです。この修正版トーカクッキー、マーケットに置いたのでぜひダウンロードしてくださいね！」

コメント：もらった

コメント：ダウンロードした！

コメント：今回は軽くていいわ

コメント：さっそく盛り付けます！！

「それじゃあ、人類、また次の動画で！」

　◇　◇　◇

「テルネぇ……」

「なんだよ、クッキーならもうないぞ。まったく、むしゃむしゃ食いやがって」

「あら、やはりそうでしたか」

「おかわり、不可？」

「材料がないからな。なんだよ、全員食べたろ？　もうこれで許してくれよ……」

「あの、あのね。どうしよう。カリームの分も食べちゃった！」

「は？」

「ひとつ分けてあげようと思ってたんだけど、気づいたら食べてて！　だっておいしいんだもん！」

「落ち着け。ていうかカリームはいいだろ、別に、やらなくて」

「えー、仲間外れはかわいそうじゃん？」

「嫌だよ気持ち悪い。だいたい、あいつは無限チョコレートファウンテンで満足してたからいらないだろ」

「確かに」

「まあ、こうしてホワイトデーのお返しをわたくしに託すぐらいですからね」

「わー！　マカロンだ！　食べていい！？」

「いいけど、太るぞ？」

「バーチャルなら平気だも～ん！」

「テルネ、食べる？」

「菓子に罪はないからな。おいナルト、茶葉とってくれ茶葉」

「はいはい」