2015年
@cyberne_to-ka
みなさん、バーチャルYouTuberに興味がおありで? 結構! 私も大好きなんです! だからすいません、しばらく連投させてくださいね! みんなにもっといろいろなバーチャルYouTuberを知ってもらって、推しを見つけてもらいたいので!!
@cyberne_to-ka
それでは、まず初めに紹介するのはミチノサキちゃん! 私の次にバーチャルの世界に来てくれたバーチャルYouTuber! もうなんといってもね、かわいい! 元気だしテンション高いし顔がいい! 青薔薇のシュシュがチャームポイントですよね! でもやっぱり、おっぱいですかねえ! このボリューム! そして動画で確認してほしい揺れ! けしからん! ベルトでいろんなところ締め付けているのも、こうひとつひとつ外していきたくなりますね! ここすき! ここーすき! それから……――
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@cyberne_to-ka
北方少女モチちゃん! 見てこの愛らしさを! そして顔の良さを! ムッとしたところの口元がキュート! フード少女っていいよね? いい(自己完結)。モチちゃんはですねー、バーチャルな北の国から動画投稿してるんですけど、お部屋の雰囲気がいいですよね! 私とかはもう真っ白な部屋で収録することが多いんですけど、モチちゃんの部屋のあったかそうな感じ、好き! 暖炉の音が実はしてるんですよ! 音量上げて聞いてみて! そしてモチちゃんといえばこの見た目でFPSが得意というのも大きな魅力! 敵に銃撃されている中、冷静にスモークの中で耐え続けるロリがどこにいるんでしょう? ここです! かわいいよモチーチカ! ……――
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@cyberne_to-ka
雨天乃ちゃいむちゃん! かわいいシトシト系の女の子! この子は別の配信プラットフォームで放送してるけど、YouTubeにアーカイブを投稿してくれてるんですよ! たすかる。なんといってもねJKですから、JKは無敵でかわいいんですよ。あとお歌もうまくて耳が溶ける。アーカイブが長い? わかった任せてちょっとまとめてくる! ……――
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@cyberne_to-ka
神望リリアちゃん! 天使なお姉さんは好きですか? 好きです! お胸も自然な感じで、いややっぱり大きくていいですね! 動きがね、すごい、分かってるって感じです。男心、くすぐられるんじゃないですか? 私はくすぐられました! あと注目してほしいのは胸だけじゃなくて髪ですね、すごくきれい。これは職人芸ですよぉ! まだまだいろんな魅力が隠れてると思うんですよね! 相方のイヌビスと漫才してるところから、どんどん出てきてる感じです! そうそうリリアちゃんの所属してる会社はガブガブイリアルっていうんですけど、『The 雪山』を出したガブガブゲームスの子会社で……――
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@cyberne_to-ka
きつねたぬ姫ちゃん! お蕎麦屋さんのところの子! お蕎麦屋さんの仕込みの様子とかを教えてくれるしなんか蕎麦が打ちたくなりますよ! 動画の数は少ないですけどみて、このケモミミを! キツネ&タヌキ! 一粒で二度おいしい! あと和装もとってもかわいくてもうぜひこんな定員さんに配膳されたいって感じがしますねぇ! あとシステムも地味に凝っていてですね……――
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@cyberne_to-ka
バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさんの、ドラたまさん! もう何も言えない! 全人類見ろ! もうね、かわいいかわいいドラゴン娘です。角とかおなかとか、こだわりがすごい! 細かいことはいいんだよ! 推しが伸びるか伸びないかなんだ、推してみる価値はありますぜ! おじさんをすこれ!
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トーカちゃんが壊れた
RT:@cyberne_to-ka
勢いがすごい
RT:@cyberne_to-ka
すこれ! じゃあないんだよwwww
RT:@cyberne_to-ka
ヤベえぞこのオタク
RT:@cyberne_to-ka
めちゃくちゃオタクで草
RT:@cyberne_to-ka
愛が重いよトーカちゃん
RT:@cyberne_to-ka
中の人面白すぎでしょ
RT:@cyberne_to-ka
ありますぜ! で自分の顔でコラ画像つくるの好き
RT:@cyberne_to-ka
こんなにいるんだバーチャルYouTuber
RT:@cyberne_to-ka
一緒に投稿してる画像めっちゃいいとこ切り抜いてるな
RT:@cyberne_to-ka
北方少女とかいうの外見めっちゃ好み
RT:@cyberne_to-ka
リリアちゃんのことを推してくれてる! ありがとう!
RT:@cyberne_to-ka
わかりみがすごい
RT:@cyberne_to-ka
バーチャルYouTuberのオタクのヤベェやつが紹介してくれてるけど、ミチノサキちゃんは~……――
RT:@cyberne_to-ka
◇ ◇ ◇
@cyberne_to-ka
ああああああああああああああああああああああああ!?
@cyberne_to-ka
あああああ・・・うううう・・・・
@cyberne_to-ka
失礼。取り乱しました。それよりも人類! ミチノサキちゃんの新作動画の予告を見てください! ゲストが来るそうですよ! この孤独なSilhouetteは……!? RT:@mitino----->>
◇ ◇ ◇
【スペシャルコラボ】ドラちゃんが来てくれました!【ご挨拶!】
「いえーい! みんな、見てるー!? ミチノサキだよ!」
金髪ツインテールの際どい衣装の少女――ミチノサキが大げさに手を振る。
「今日はね! すごい企画なの! みんな最近有名なバーチャルYouTuberって知ってる? うんうん……サキ? そりゃーそうだけど! 違うんだなー! 正解者なしっ!」
腕をバッテンにしてぴょんぴょんと跳ねる。
「はいっ、ここでスペシャルゲストと電話がつながってまーす!」
取り出したのは大きな黒電話の受話器。画面が分割され、片側に大きなハテナが表示される。
「もしもし、もしもーし!」
『ハッ、はァーイ!』
「ブフッ」
電話口から緊張でひっくり返った裏声を聞いて、サキが噴き出す。
「フッフッ……ごめ、ごめーん! やり直し、やり直しで! もしもーし!」
『あっはっ、はっ、はい』
「はじめまして! 自己紹介してもらってもいい!? アレ聞きたい!」
『あっ、わかりました……スゥ……おはようございまーす。バーチャルぽちゃロリドラゴン娘Youtuberおじさんっの、ドラたまでーす』
「ンフッ、ちが、違う~! むすめじゃないでしょ!」
『あ、えっと……あー、は、はい。皇女でーす』
「語尾語尾!」
『わ、我ー、なのだぞー』
「ワレナノダゾ――ぶははは!」
サキが笑い転げている間に、ハテナだった画像がドラゴン皇女Youtuberおじさんのものに変わる。静止画であった。しばらくしてサキの笑いがおさまり、対談に移る。
「いやー、もうサキね、バーチャル……おじさんが面白すぎて! ぜひ! 共演したいなって思ったの!」
『あっ、こ、光栄……なのだぞ』
「んふッ」
『あのーでも、ぼっ、我ぇーでよかったんですかね? 初めてのコラボの相手がおじさんで』
「ええー、面白くない? いいじゃん!」
『いや、ミチノサキさんには、アバタさんもいますしぃ……』
「えー、アバタさんとコラボするのはなんかちょっと……気まずくない?」
『あっそっ、そうなんですか……』
「嫌なわけじゃないけどさー……マネージャーだし……そんなことよりお話ししよっ! かわいーよねー、バーチャル……えっと、なんて呼んだらいい?」
『あ、なんでも、お好きなように、へぇ。ぽちゃロリでも……おじさんでも、ドラたまでも』
「ドラ……ドラちゃんでいい!?」
『あーえっと、マズくないですかね、お台場? じゃないか、えっと、ロッ、六本木のほうから抗議されたり……』
「あっ、じゃあドラさまだ! なんたって皇女だもんね! ドラさま!」
『あっじゃあ、それで……』
「じゃあね、ドラちゃんもサキのこと、サキちゃんでいいよ!」
『えっ、あれ?』
「遠慮しないでよ、ドラちゃん!」
『えっと……その、サキさんで勘弁してください……なのだぞ』
「ンフッ。しょーがないなー!」
『いやまあその、ね、いくらこう……女の子同士でも、礼儀ありっていうか』
「女の子同士! フフッ、ダメだ面白い! これがドラちゃんの人気の秘訣か~! 大人気バーチャルYouTuberだもんねっ」
『いや、なんかその、すいません、全然状況についていけなくて……ていうか、自分なんてサキさんに比べたらまだまだで……』
「そんなことないよ! この動画もドラちゃん目当ての人たちで絶対人気でるから! まったくも~、ドラちゃんってば奥ゆかしくてかわいいね! 自分的なチャームポイントはどこなの~?」
『あ、お、お腹で~す』
「ンフッ、やだ、揉みたい~!」
ケラケラと笑うサキに対して、終始おどおどとしたおじさんの受け答えが続く。
「ああ~、もうお時間! ドラちゃんドラちゃん! またコラボしてくれるかな~?」
『え、あ、い、いいとも~、なのだぞ~』
「やったやった! 言質とーった!」
『いやでも、それ以外言えなくないですかそのフリ……』
「確かにー! あっはっは! でもね、サキにも恩返しの機会が欲しいかなって!」
『あ、は、はい?』
「んふー、なんでもないっ! 今日は本当にありがとね! それじゃ、またねー!」
『あ、はい、ばいばーい』
黒電話の受話器が置かれ、おじさんの静止画が消える。
「あー楽しかった! ということで! 今回のゲストはドラちゃんでした! 動画概要欄にリンクがあるから、ドラちゃんの動画もぜひチェックしてね! それじゃまたねー!」
◇ ◇ ◇
「くっそぉぉ……」
ギリギリギリ。
「えぇ……なんで動画見ながら歯ぎしりしてるのさ。怖」
「歯ぎしりだってするだろ。おじさんが……おじさんのコラボ童貞がサキちゃんにとられちゃったんだぞ……!」
動画は面白かったが、それはそれとして悔やまれてならない。
「ああ、君もコラボするって息巻いてたね。なんでコラボしてないんだい?」
「……ドラたまさんがバズって、登録者数が増えた余波で、トーカのチャンネルも登録者が増えて……」
Twitterのフォロワーも爆増した。
なんか、バズった。TwitterでいろんなVtuberの紹介を連投したら、それが。
連投して、そのあと切り抜き動画もぶら下げて、あといつもの90秒動画を予定変更してVtuberを語る動画とかやった結果。
彩羽根トーカだけが、他の3倍ぐらいの勢いで登録者数を増やしていた。カラーリングは赤くないのに。
「……まあ、たぶんいろんなVtuberへの導線を意図せず集約してしまった結果だろう」
俺のツイートにリンク貼ればそれでなんとかなる、みたいな感じだし、実際そうしてるアフィリエイトブログも多い。
「とにかく、なんかすごい勢いでバズったので……キリ番突破の動画を作り続けないといけない流れになってしまったんだ」
ここにきて海外からの登録者もさらに増え、結果――予測線からすると年内に100万人突破記念動画を撮影しないと間に合わない。
そんな中で悠長にコラボの申し入れなどしている暇はなかった。なかったが――
「それでもコラボしないかとDMは送ったんだ」
「暇がないと言っておいてよくやるよ。で?」
「いやー恐れ多いのでー、とか言って有耶無耶にされて終わった……」
俺に対してそんな回答なのに、サキちゃんとはコラボしたんだな。くそう。トーカとサキちゃんの何が違うって言うんだ。……親しみやすさとか……? やばい、ちょっとへこむ。
「はっはっは。忙しくなってきたねえ。君の状況もようやく面白くなってきたよ。25年近く待ったかいがあるというものさ」
「そりゃどうも」
正確には24年8ヶ月だチクショウ。
「確かに忙しい。登録者数だけ見れば私がVtuberの中で一番人気、ということになるからな。広告やイベント出演の申込みは増えたし……大掛かりなイベントは準備にも時間がかかる」
宣伝動画撮りました、で終わりじゃない。イベントではトラブルがないよう入念な打ち合わせも必要になる。
「そこで、お前の出番だからな」
「まかせてよ」
リアルの打ち合わせに、彩羽根トーカは――蓮向テルネは向かわない。中の人はとことん秘匿する。トーカはすべての仕事をバーチャルでやる……しかし打ち合わせぐらいは顔を突き合わせてやりたい、と言われるだろう。現地のトーカ用機材スタッフだって必要だ。そこで、俺に代わって出ていくのが悪魔だ。
「……いや、やっぱり不安だな。派遣するのはやめるか?」
「えぇ、そこは信用してほしいなあ。というか君に限って言えば、下手を打ってモチベーションを下げるのは悪手だからやらないよ」
まあ目的の半分は達成しつつあるからな。前の世界にいなかったVtuberが見たい、という目標は、別に俺が親分でなくたって成り立つわけだし。
おじさん――ドラたまさんの起こしたバズによって、アマチュアの参加はすでに始まっている。誰かが始めれば、それを見てまた誰かが始める。そういう連鎖ができつつある。
「ぶっちゃけこのまま、てぇてぇを見守って余生を過ごすという選択肢もなくはないよな。サキぽちゃてぇてぇ」
「ちょっとちょっと、やめてよ。最初の頃に言っていたVtuber界を引っ張っていくって話はどうなるのさ?」
「そうは言ってもさ……」
4年半もブームを起こせなかったのだ。バーチャルぽちゃロリドラゴン皇女Youtuberおじさん――巷ではぽちゃロリとか、ぽちゃおじとか、ドラたまさんと呼ばれている彼が1ヶ月も経たずにブームを巻き起こすのを見ると、嬉しさもあるが敗北感もある。
「心のひとつやふたつ折れるだろ?」
「……それでいいのかい?」
悪魔はいつになく真面目な顔をして、俺の目を正面から見てくる。
「君がこの物語を始めたのは、君が欲したのはこれだけかい?」
俺が欲したもの。
「……俺は、新しいVtuberが見たい。それは叶った」
「それで全部かい?」
「そうだ。あとはこれを見続けていく……だけ……」
……見続ける。
「……見続けられない……引退……解散……衰退……」
消えていく輝き。失われた希望。残され思い出に沈む推しのオタク。
「……終わりじゃない」
勘違いしていた。
ここはまだ道の途上。バーチャルは終わらない物語。その理想に向かって進むことこそが、人生二周目の俺の使命だ。
「そうだ。示さなければいけない。生まれてくる後輩たちに、バーチャルYouTuberの姿を。理想の背中を。秘密のヴェールに隠された彩羽根トーカの作る道を!」
推しを失って嘆くオタクを一人でも減らすために。
なりたい自分を見失う星をひとつでも救うために。
「そうだ、やるぞ、私は! ぽちゃおじがなんだ! ブームを生み出したのはたしかにおじさんかもしれないが、その土台は彩羽根トーカあってこそ! バーチャル業界を牽引するのはこの私に任せてもらう! ――何が何でも、この物語を永遠にしてやるぞ!」
俺はネタ帳を――転生したときから書き留めていたアイディア帳を手にとった。ここには様々なネタが書き留めてある。それは全部が全部オリジナルではない。前世で見たものも含まれる。そういうものを使うのはなんとなくためらっていた。だが、この灯を絶やさないためなら。
「覚悟していろオタクども……彩羽根トーカなしの、Vtuberなしの生活なんて考えられないようにしてやるからな!」
「あっ」
悪魔が――スマホの画面をこちらに向ける。
「ドラゴンおじさん、またコラボするって。今度は北方少女モチと」
「ぐわああぁぁぁぁあ!?」




