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逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!  作者: ブーブママ
活動開始

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14/158

2011年、2013年、2014年

 2011年12月。


「よっ……と」


 白い息を吐きながら、雪をかぶったゴミ箱を開き、手に持っていたゴミ袋を突っ込む。ギィ、と軋んだ音を立ててゴミ箱が閉じた。


 ふと暖かさを感じて見上げると、朝日が登っている。


「……太陽って綺麗だな」


 バーチャルYouTuberを始めて、初めての年末。


 俺は未だコンビニバイトをして食いつないでいた。


「忘れていたな……まさか自分が彼と同じ感想を抱くような境遇になるとは、しかし――」

「ちょっと、ハスムカイさん!?」

「はい!」


 反射的に返事をする。呼びつけた相手は出てこない。……中に入る。

 待ち構えていたのは、髪をパーマにしたオバサン。このバイトの先輩。


「返本の準備ができてないんだけど!?」

「え」


 雑誌の返本。コンビニ業務のひとつ。売れ残りを取次に返す作業。確かにまだ取りかかっていないが。


「でも今日のは昼勤の」

「は?」


 お前の仕事だろオバサン、という言葉をなんとか飲み込んだ。


 こちとら人生二周目、無敵の美少女フェイス(化粧しないとこいつがうるさいので塗ってはたくぐらいはしているので完璧に美少女)だから、オバサンなぞ何も怖くない。


 なのだがこいつに注意できないのはコンビニの人手不足があった。こいつは不満があるとすぐに美人で人のいい未亡人の店長に告げ口し、辞めてやるとヒスるのだ。そして実際、辞められると経営が破綻する。シフトがブラックからパーフェクトブラックに進化し穴埋めに動く病弱な店長が三日持たずに過労死する。


 もちろん店長もこいつを放逐したいと考えているが、田舎のコンビニの求人は厳しい。新人を教育中にこいつがイビるため逃げられる。最近はオバサンの噂を恐れて志望者すらこない。


「じゃ、惣菜やってるから」


 そしてこれだ。コイツの作る惣菜弁当はこのコンビニの売れ筋なのだ。周囲の労働者が出勤前に買って出かけていくそれの売上がなければ、経営はかなり苦しい。


 そのため、店長は言うのだ。店長は何も悪くないのに、「悪いけどお願いね」と。だから俺はこいつの暴君的な振る舞いをどうこうすることもできない。俺が辞めるという手は店長が死ぬから使えない。詰んでいる。


 バックヤードに消えるオバサンの背に何も言えない。俺はため息を吐いて、返本の準備を始めた。


「……世の中、世知辛いな」


 前世もブラックだったが単純に労働時間の問題で、こんな人間関係の問題はなかった。ブラックにもいろんな種類がある。


 ――理不尽は、緩やかに精神を削っていく。


 ◇ ◇ ◇


「流石に焦ってきた」


 ――暖房の効いた我が家に帰ってきて、悪魔にそうボヤく程には。


「そうだねぇ。未だにチャンネル登録者数は増えていないし、焦るのが普通じゃないかな」

「前世であんなにVtuberが流行ってるから楽勝だと思ってた節はある。こんなに黎明期以前が難しいとは思わなかった……というかYouTuberって難しいのを思い知った」


 前世でVのオタクしてたからイケるとふんでいたのがこのザマだ。


「それに、来年にはすでにVtuberの始祖と呼ばれる他の存在が出てくるはずなんだ」

「Amiくんの他にもいるんだ、始祖」

「これで彼女が前世の通りに現れたら目も当てられない……推しに挟まるモブになってしまう」

「あぁ、うん……」


 Ami Yamatoは現れなかった。そもそもバーチャルYouTuberとは毛色が違うし、準備期間を考えても出てきてしまうだろう……と思っていたのだが、どうやら蝶の羽ばたきの影響があったようだ。

 しかし、後続もそうなるとは限らない。早いうちに世界へ致命的な変化を与えたいところなのだが……。


「影響力が……SNSへの拡散力が足りない」


 Twitterのフォロワー数は全然増えていなかった。


「君は前世で見たことのないVtuberが見たいんだっけ? ならVtuberになる方法でも解説して売り込んだらいいんじゃない?」

「それは駄目だ」


 確かに作り上げたシステムを公開すれば、アバターだけでVtuberが始められるようになるだろう。だが。


「自分で、自分たちでやろうと思って試行錯誤したやつは強い。いずれ参加のハードルは下がっていくが、今下げて量を増やしたところでジャンルの衰退を招きかねない。今は猛者が必要なんだ」

「衰退以前に盛り上がってないけど? っていうか、君が流行ってないから、誰もやろうと思わないんじゃない?」

「ウッ……」


 可能性はある。数で判断する経営陣は特に。


「……とにかく、地道にやっていくしかない」

「地道ねえ。君の自信のあった歌動画も泣かず飛ばずのようだけど」

「王道から色物まで取り揃えているつもりなんだが」


 序盤にネタによる爆発的なバズを狙いすぎた気はしてる。こんなかわいい子が変なことを、みたいな。

 しかしその狙いは大幅に外れた。それで基本に立ち返って、未来知識を動員して流行歌は即動画にしたり、YouTuber的な動画も取り入れてみた。今の流行ってなんだったっけ? となんとか時間を捻出してネットサーフィンして時事ネタを取り入れてみたり……それでも登録者数は増えない。


「……やっぱり無難な路線は駄目かな……毛色を変えてみるか?」

「目がなんかぐるぐるしてるけど」


 そして試行錯誤をする。



 ◇ ◇ ◇



 それから手を変え品を変え動画を投稿していくが――そのことごとくで手応えを得られなかった。


【女子の嗜み】変身してみた!【昭和から平成を駆け抜ける!】

 (トーカが仮面ライダーシリーズの変身ポーズをたて続けに行う動画)


「特撮オタクにリーチすると思ったんだが……」

「昭和に放送してたものを誰がわかるんだい? 今平成何年だと思ってる?」

「オタクならわかるんだよ! オタクはオタクな女子が大好きなんだぞ!? くそう、版権に引っかからないレベルのチープなモデルにしたベルトがまずかったか……?」

「モーションデータをパクッたとか何か書かれてるけど」

「私の動きの取り込みだよ! このために空手習ったんだぞ!」


【ひと狩りいこうぜ!】怪鳥と対決!?【ゲーム実況!】

 (特にピンチにも陥らずあっさりターゲットを狩猟するトーカ)


「山もなく落ちもないね」

「編集してて反省した。これは伸びないよな、と。ゲーム実況を一回ぐらいやろうと思っただけなんだが……」

「というか、君が翻訳の仕事以外でゲームをしたの初めて見たよ。そのわりにはうまいんだね」

「ほとんどのゲームは前世でプレイ、視聴済みだから、やる気が起きないんだよ。これも何千時間とプレイしたゲームだからなぁ……今更初見を装っても白々しいし……プレイの上手さが出るやつは駄目だな」


【これが神の手!】私と一緒に引いたら確定?【ガチャに挑戦!】

 (ソシャゲのガチャに一万円課金する動画)


「反省をもとにプレイヤースキルの関係ない実況を撮ってみたんだが……」

「ソシャゲって気前よく最高レアをくれるんだね」

「いや、これSSRは1%だから50連で10体も出るのは何かおかしい。奇跡か?」

「動画が伸びるという奇跡は起きなかったね。もっと大げさにリアクションしたら良かったんじゃない?」

「いや……このピックアップキャラ強すぎてこのあとすぐ弱体化されるの知ってるとどうもな……ガッカリ感が先に出て」

「ああ……そうなの。でもこんなにSSR引いたんだし、すごく有利になったんじゃない? 続きの動画を出したら?」

「このソシャゲのサービス終了日を知ってるとどうもやる気が」

「なんで課金したのさ」


【私、出資します!】これでみんなに会えるようになる!?【Oculus】

 (OculusのKickStarterについてアツく語り、出資をするトーカ)


「VRの発展は重要だからな」

「ところでOculusってなんだい?」

「動画見ろよ! VRゴーグルだよ。この時期に出資者を募集していたのを思い出してな。早く欲しいし、投資するついでに動画化だ」

「僕は晩御飯のおかずに出資するべきだと思うよ」

「飯でVRが食えるかよ!」

「無茶苦茶だなぁ……」


【覚えてる?】こんなお仕事もしてたっけ?【CM再現】

 (1990年代のCMパロディをするトーカ)


「意外と商品名がないと成り立たないものが多くて選定に苦労したな」

「よくこんなCM覚えてたね?」

「父さんにアニメ録画するならCMカットするな、むしろCMだけ集めたビデオを作れ、本編は後でいくらでも買える、と言い聞かせておいていてな。おかげでいい資料が残っていたよ」

「君、父親をなんだと思っているんだい?」


【手描き完コピしてみた】これが私のシンフォギアだ!【突然歌ってみた】

 (トーカと主人公を置き換えた手描きアニメーション)


「これはいけると思ったんだが」

「なんで急に歌うのこれ」

「そういうアニメなんだよ! やっぱりアニソンはなかなか伸びないのかな……そもそも3Dモデルでやらなかったのがマズイか……?」


【ゾンビと踊るよ!】スリラー【歌って弾いて踊ってみた】

 (ゾンビメイクのトーカを引き連れて歌って踊るトーカ)


「で、どうして海外の歌なんだい」

「うるせえ! なんか歌いたくなったんだよ! マイケルは最高だろうが!」

「あぁ、そう……。しかし編集に時間がかかったねえ」

「レンダリング時間のわりに伸びない……クオリティにも自信があるのに……もうわけがわからん」

「選曲が古いだけじゃない?」


【みんな知ってる?】スプーンを使いやすく改造する方法【工作してみた】

 (スプーンの凸面を使ってヨーグルトをすくおうとし、使いづらいと主張。スプーンをハンマーで平らに叩き直し、これで使いやすくなったと熱弁するトーカ)


「頭大丈夫?」

「もう何をしたらいいのかわからん……」



 ◇ ◇ ◇



 20――13年、12月。


「私は世界線の収束を疑っている」

「世界線?」


 弱で運用しているこたつに全身を突っ込み、顔や耳を襲う冷気から気をそらすため、俺は最近感じている疑念を口にした。


「未来の重要な出来事は変えられない。どんなルートをたどっても、最終的にあるべき歴史に収束するという仮説だ。2009年に発売されたゲームで出てきた概念で、つまり私は前世の世界線から逃れられないのではないかと」

「具体的になんなんだい?」

「……結局2017年末のVtuberブームまで世界は変わらないんじゃないかと思って」

「君の努力が足りないだけじゃない?」


 ……百理ある。もっとインパクトのある施策を取りたいのだが、できていない。バイトで時間がなく、ローンで金が無い、という言い訳はできるが……。


「なにか手っ取り早く有名になる方法はないのかい?」

「……今年の流行語に、バカッターが選ばれていただろう」

「ああ。アイスケースに入り込んだ写真をTwitterに投稿したりしたやつだね」

「SNSの力が増してきたという証左だ。悪は見つけ出され、拡散し、叩かれる。……逆に言うと」


 はぁ、と吐いた息が白くなる。部屋に暖房をつけていないから。


「炎上すれば一気に名前が知れ渡る」

「へえ、じゃあ炎上したら有名になれるんじゃない? やってみようよ」

「炎上芸で有名になった親分なんか嫌だ」

「君の理想は高いみたいだけど、そんなこと言ってられる場合かい?」


 多少汚い手を使ってでもバズる。それも覚悟の一つだろう。だが。


「……それは、私が見たいVtuberじゃない」


 どこに地雷があるか完璧にわかる人間はいない。いずれ何かで燃えてしまうこともあるかもしれない。だが、故意にやるのだけは違う。


 俺のこれまでを、未来のVtuberたちを否定することになる。


 それに、じわじわとではあるが登録者は増えているんだ。ファンを裏切るようなことはできない。


「しかし、わからん……」


 何をどうしたらバズるのか。広告を打つ? なんか違う。広告は金の臭いがして避けられそうだし。先輩VtuberにTwitterで絡みに行ってRTしてもらうか? いや俺しかVtuberいないやろがい。くそ、知名度がなくて露出の機会が得られなくて、知名度が得られない……このスパイラルから抜け出せない。だめだ、わからん。こんなことなら技術一辺倒じゃなくて、マーケティング理論とか学ぶべきだったかもしれない。


「とにかく、やれることをやるしかない……動画撮影してくる」

「はいはい」


 コタツから抜けると身を切る寒さが襲いかかってくる。暖房をつけたい。金が無い。節約しないと。


「体を動かせば少しはマシだろう……ダンス動画にでもするか」


 Vtuberの夜は、未だ明けない。



 ◇ ◇ ◇



「トーカちゃんをこっそり見守るスレ」


1:名無しさん 2013/12/10(火)

スレがなかったので立てた。かわいくね?

[[動画リンク]]


2:名無しさん 2013/12/10(火)

激寒昭和おばさん


3:名無しさん 2013/12/10(火)

声優誰?


4:名無しさん 2013/12/10(火)

アホか、中身オッサンだろ


5:名無しさん 2013/12/10(火)

確かにネタは微妙だしオッサンくさいけど、声はかわいいじゃん


6:名無しさん 2013/12/11(水)

中の人は男。声もボイチェンか合成。騙されたな、乙


7:名無しさん 2013/12/13(金)

>>6

え、中の人男なの?


8:名無しさん 2013/12/13(金)

ミクの金かけたバージョンだろ

つかミクの曲ですり寄ってくるのウザい。人間がミクのマネしてもねえ


9:名無しさん 2013/12/14(土)

バーチャルYouTuber(笑)ニコニコにも投稿してるけど客層にあってなさすぎ。

陽キャのふりした陰キャムーブやめろや


10:名無しさん 2013/12/14(土)

これ声優は誰なの?


11:名無しさん 2013/12/14(土)

彩羽根トーカはどっかのアニメスタジオのプロモーション用のプロジェクトだろ。企画はオッサンだな。

会社名出てないけどまあそんなもんだろ。誰か業界で話聞いてないの?


12:名無しさん 2013/12/15(日)

モデルのクオリティたけぇな


13:名無しさん 2013/12/15(日)

なんか音楽系の会社がやってるんじゃないの? 新曲の歌ってみた動画出てくるの早すぎる


14:名無しさん 2013/12/15(日)

しかも自分で弾いてるとか嘘でしょ。一日でできるもんなの?


15:名無しさん 2013/12/15(日)

要はこれガチャピンだろ。歌は全部別人、ダンスモーション担当もいる。相当金が動いてるはず。


16:名無しさん 2013/12/15(日)

全然再生数ないけど続いてるのは技術デモだからか。


17:名無しさん 2013/12/15(日)

まるで再生数稼げないデモの存在意義。これに金払うやつはいないだろ。


18:名無しさん 2013/12/15(日)

声はいいのに台本がなー


19:名無しさん 2013/12/16(月)

劣化初音ミク


20:名無しさん 2013/12/17(火)

ええ……俺は好きなんだけど


21:名無しさん 2013/12/17(火)

声優誰かわかる?


22:名無しさん 2013/12/20(金)

ほしゅ


23:名無しさん 2013/12/20(金)

めちゃくちゃ淡々とクック先生を狩るの笑うわ

[[動画リンク]]


24:名無しさん 2013/12/20(金)

初期片手剣インナーでノーダメクリア? すげえな


25:名無しさん 2013/12/20(金)

モンハンプロなら普通


26:名無しさん 2013/12/20(金)

うまいやつのプレイ動画撮ってハメコミだろ。


27:名無しさん 2013/12/20(金)

つまり録画にアテレコってことか。うわぁ……引くわぁ……


28:名無しさん 2013/12/20(金)

ゲームだとこの動画もおかしい

[[動画リンク]]


29:名無しさん 2013/12/20(金)

50連でSSRが10体出たのに淡々としててやる気なさすぎ


30:名無しさん 2013/12/20(金)

これステマなんじゃね? こんなにでねーよ。100連して出るか出ねーかだよ


31:名無しさん 2013/12/20(金)

悪質だな


32:名無しさん 2013/12/21(土)

運営ももっとうまくやれよ


33:名無しさん 2013/12/24(火)

ほしゅ


34:名無しさん 2013/12/24(火)

激寒昭和おばさん、スプーンで頭おかしなる

[[動画リンク]]


35:名無しさん 2013/12/24(火)

かわいいのに変なことやらされててかわいそう


36:名無しさん 2013/12/24(火)

サイコパスかな?


37:名無しさん 2014/01/9(木)

保守


38:名無しさん 2014/1/24(金)


39:名無しさん 2014/2/14(金)

声優誰なの?



 ◇ ◇ ◇



【番組制作会社スタッフの記録】


 2014年。


「オタクくんさぁ」


 ディレクターの男が、ぷはぁ、とタバコの煙を吐きつける。アルバイトとしてこの会社に勤めるスタッフは、顔をそらした。


「インターネットとか詳しいでしょ。だからパパッとまとめておいてよ」

「いやでも僕、ジャンル違うっていうか……それに、あの、今からだと権利確認とか、間に合わな」

「いいって、そんなの。だってネットに無料で公開してるんでしょ。無料のものを使って何も悪いことなんてないの。むしろ感謝してもらうべきだよね、使ってもらえてさあ」


 古い考えだ。スタッフは嫌悪した。しかし逆らうような気概も権力もない。


「じゃよろしくね」


 ディレクターが去っていく。残業が確定したスタッフは、吸いもしないタバコの匂いの染みついたシャツにうんざりしながら、パソコンでYouTubeを開いた。

 ここからいくつか動画をみつくろって編集しないといけない。本来なら許可を取るべきだ。だが時間はない。スタッフは良心を殺して作業を始めた。


「あ」


 スマホから通知。その内容にスタッフは少し頬を緩ませた。唯一登録をしているチャンネルからの最新動画のお知らせ。毎日90秒の癒やしの時間。


 たったの90秒だし、とスタッフは動画を再生した。今日はフィットネスに挑戦する内容だった。ちょっとアングルが嬉しい。なかなかキツめのメニューにかかわらず呼吸が全く乱れないことに、期待を裏切られた感よりも先に感心してしまった。

 今日は当たりの方、というか最近は普通に面白い。以前まではかなりズレた感性をしているなー、という目で見ていたが、今は親戚のちょっと変わった女の子を観察している気分になる。


「……そういえば、この子もそうなんだよな」


 YouTuberだと名乗ってる。企画の趣旨に一致はしないが的外れというほどでもない。


「よし、入れとくか」


 興味のないチャンネルをひとつ探す手間が省けた。毎日を癒やしてくれて、仕事まで助けてくれる。天使か? 天使だろう。天使なら――無断使用しても許してくれるはずだ。

 偶然見つけたこのチャンネル、技術力もデザインも優れているのにいまいち流行っていない。おかげで語り合う同志も見つからなかった。これで少しは語る相手が増えればいい。


「さて、まだ尺があるぞ……」


 スタッフはとりあえずリボンの少女の動画を、いちばん助かったシーンで一時停止して別ウィンドウにし、作業を継続するのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] うはぁ…辛い!この回辛いわ… 沢山居るvtuberさんも同じ様な苦しみ味わっているんだろうなぁ
[一言] オタクくんさぁ… 無断使用は徹底的に潰されるべき
[一言] 芸術の才能(絵描き、モデリング、音楽、ダンス) プログラミングの才能(言語理解、対話、数学、工学、注意力) youtubeは先にやったもの勝ちだった中ニコニコは人を集めやすい傾向。 歌ってみ…
感想一覧
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