黄金の申し子店 ※
「『黄金の申し子店』ってここだよな。…それにしても、異世界の宿泊施設の名前は何かスケールが違うな」
元地球人が見たら、何料理店かすらも分からない店なんだが、この世界の住人は理解できてるのかな?
店の前で立っていると、次の客が来た。しかも俺がここに来てから既に、5団体くらい入っただろう。と言う事は、ここは結構な有名店なのか?
「おい、ここの店なんか変わった名前してるな。ここで食べてみようぜ」
―――――前言撤回。ここに入っていく人たちも、何の料理店か分かって無かった。得体の知れない店なんて、入りたくはなかったのだが、赤くなった空を見て入ることにした。
「意外に、ギルドで時間を使っていたんだな……」
体感的には1時間くらいだったけど、実際は2時間くらい使っていたんだなー。
ジンヤよ。お前がギルドに居たのは1時間で間違ってないぞ。ギルドから此処に来るまでが長かったんだ。……道に迷っているのに気が付かないのは、恐ろしい。
「いらっしゃいませ!」
俺が店に入った瞬間、元気よくあいさつしてきた女の子が居た。
あれか?この店の看板娘って感じなのか?
「何泊のお泊りですか?」
俺が考え事をしていると、少女は更に俺に訪ねてきた。
「え、えーと。一応、7泊にしようかな?」
「分かりました!1日が銀貨1枚なので、7泊で銀貨7枚お願いします」
意外に高いな。いや、地球でのホテル料金と比べれば、格安だな。
俺は『無限収納』から、大銀貨1枚を取り出した。
「…大銀貨なんて初めて見ました」
「えーっと……」
「あっ、すいません!お釣りの銀貨3枚です!!」
少女は、慌てながらもお釣りの銀貨3枚を俺に渡した。
うーん、大銀貨でこれか。これは人前で、あまり見せない方がいい金額になりそうだ。
それに俺の恰好――――――恰好?
ああ!そう言えば、俺この町入ってから一度もこの黒ローブとってないじゃん!
もしかしなくても、ギルドでもこのローブ取っとけば、まだ穏便に事を済ませたんじゃ…。……はあーー。
「ごめん。このままじゃあ、不審者だよね」
そう言って、俺はローブをしまって、素顔を出した。
「っ!?」
「ゴホッ!」
「ゲホゲホッ!!」
「うッ!」
少女の方は兎も角、周りにいた客まで咳き込んだ。女性だけでなく、男性も混じっているのだが、そこまで俺の容姿って酷いのか?
「あ、あっあの!!私『カミラ』って言います!!」
「う、うん。わかったから、落ち着いて」
俺はカミラちゃんから、部屋の鍵をもらって、部屋のある2階に向かった。
それにしてもカミラちゃんの顔や、他の女性客の顔が赤かった気がするけど、何でだろう?
カミラ
鈍感って恐ろしい……。




