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8・屁理屈みたいな面もあるんだけど

「あと、これかな」


 そう言って冒険者に示したのは、スコープだった。


 といっても、ボルトアクションライフルにスコープを着ける場合、ハンドルを避けるためにスコープ自体をオフセットさせる旧式のタイプか、ボルトアクションと聞いて思い浮かべるハンドルが下方へ湾曲し、ボルト上へスコープを載せることが出来る近代的な設計のスナイパーライフルか。と、なるのだが、僕の持つ聖槍アリサカはそのどちらでもない。


 四四式機銃のリアサイトに当たる部分にアイレリーフ(接眼距離)を気にしなくて良い等倍(ドット)サイトを載せ、ハンドル直前に可倒式ブースター(望遠鏡)を設けてボルト操作を邪魔せず、クリップ装填にすら対応するという、ちょっと非現実的なシステムが採用されている。

 鍛冶王もそんな事に拘るくらいなら、アサルトライフルにすればよかったんじゃないかと思うんだが、なぜボルトアクションなんだろう?


「それは何ですか?」


 そう聞いて来た冒険者に、スコープを覗かせる。


「すごい!これが聖槍アリサカで見る世界なんですか!!」


 などと喜んでいる。


 望遠鏡や双眼鏡が高価で貴族の嗜好品でしかない世界においては、こんな物はなかなかお目に掛かれないだろう。

 鍛冶王という称号を持ってはいるが、結構いろんなことが出来る人であったらしい。

 しかし、彼の作り上げたものの多くは、彼の死後、その製造や整備が出来る人材が居らず、多くの技術が失われてしまったという。

 伝承を信じるなら、一人乗りの軽量飛行機だったり、自動車であったりも製造したらしいが、肝心の基幹部品を誰も製造できずに廃れていったとみて良い。


 そんな中で、一応は理解が出来る銃器は聖槍として保管され、適格者を待ち望んでいたという事か。


「これを覗くと遠くのものが間近に見える。手前の筒を倒せば、間近の物を瞬時に狙える。こうやって普通の火槍とは比較にならない程、正確に狙えるというのが二点目かな」


 聖槍と呼ばれているけれど、僕にとってはただの銃器でしかない。剣や槍を握らせるような感覚でこうして相手によっては持たせたりもする。


「そして最後は、これ」


 起倒式のスパイク銃剣を起こして見せる。


「普通の火槍は銃口に差し込んで槍として使う。けれど、コイツは銃口周りを強化してあり、下に取り付けたスパイクを多少乱雑に扱っても銃身が痛まないから、結構使い勝手が良いんだよ。銃口から装填しないから、スパイクを伸ばしたままでも撃てるしね」


 鍛冶王が数多のボルトアクション小銃から、わざわざ四四式騎銃なんていうモノを選んだのは、きっとこの銃剣の為に強化されているこの構造に着目したからだと思う。


 そして、長さが1mを切る小型な銃にしたのも、一般的な銃器よりも取り回しを重視したからではないだろうか。

 実際、小柄な僕は小型な銃であったことでけっこう助かっている。通常の1.3m近い小銃だと持て余したかもしれない。


「どこをとっても普通の火槍とはちがうんですね」


 キラキラと僕を見る冒険者たち。


 彼らは僕らが召喚されたのちに戦いに参加した若者たちだが、身を持ち崩すことなく冒険者としてやって行けている様で安心した。


 さて、どうやら交替の時間が来たらしい。ヒャッハー集団がこちらに近づいてきている。


「お前ら。交替の時間だ」


 ヒャッハー集団のリーダーがこちらにそう言い、僕たちは馬車から降りる。


 荷馬車の隊商なので歩みは遅く、冒険者ほどの身体能力であれば、移動中でも乗り降りが出来るほどだ。

 なので、馬車は止まることなく僕らは飛び降り、彼らが交代で飛び乗っていく。


 結局、僕は北方の冒険者グループに加えられている。一人でも構わないのだが、南方の商人は僕の事をそこまで信頼してくれてはいないらしい。


 まだ山岳地帯の始まりなので、特に険しい道でもないし、なにより、山だから、森だから魔物や魔獣が出るとも限らない。沼があるのは草原かも知れず、山は平穏かもしれない。


 そんな場所を往来する商人にとって、冒険者による護衛は必須といえる。


 確かに、自分達で傭兵を雇って専属護衛を囲う方が安上がりなのは確かだが、複数の国や領を跨ぐ商人にとって、信用というのが一番大事であり、通行税というのは安いに越したことはない。

 その為、多くの商人は自前の護衛を持たない。


 専属護衛というのは傭兵であって、国や領主にとっては警戒対象に当たる。当然だが、ナーロッパ世界共通の対魔物集団である冒険者とは違い、隊商の一員としての通行税を傭兵から徴収するのは当然だ。


 そんな訳で、どんな大店であっても、店舗の護衛は雇っても、隊商の護衛は通行税のかからない冒険者を雇うのが常識である。


 冒険者の側にとっても、街間移動を自弁せずに済むのは利益である。それが長距離であるなら言う事はない。


 そんな訳で、街道における治安維持要員として冒険者が活動するのは常識化した慣習といってよいだろう。

 そんなわけで、冒険者は対人戦闘も出来なきゃいけない。が、騎士団や兵団が居る街では正義感にかられた自警行為はやっちゃいけない。それはそれで窮屈な職業といってよいかもしれない。ラノベ冒険者のように、騎士団や兵団に代わって犯罪者摘発なんて事は、現実世界ではやってなかった。冒険者タグは保安官バッチになったりはしないんやで。


 もちろん、例外というのは往々にして存在する訳で、例えば


「あれが今日の宿場のはずだけど、人気がない?」


 日が傾いたころに見えて来た宿場町なのだが、普通ならこうした峠越えをする様な場所だと賑わってるはずだが、なぜだか無人の廃村風である。


 いくら往来が少ない季節だとしても、無人という事はない。こういう時のテンプレは、魔物か野盗の襲撃と相場は決まってる。


 こんな場合の野盗討伐は当然ながら、自衛行為だから、自警団的な越権行為には当たらない。


 まあ、屁理屈みたいな面もあるんだけど。

 

 

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