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11・悪魔の橋ではなく勇者の橋

 宿場町での惨劇の後は順調な旅を続けることが出来た。


 僕の事を疑っていたヒャッハー集団や商人も本物の「鮮血の妖精」だと理解したらしく、扱いが変わったのだが、全くそれがありがたくなかった。そんなチヤホヤされたい訳ではない。


 特別扱いお断りで何とか以前のように護衛を続ける事になり、ゆっくり峠へと入っていった。


 峠というからどんなところかと思ったが、はじめのうちは何の事はない、谷間を行く普通の道が続いていた。


 ちなみに、メインとなる宿場街はあの町とはまるで違い、多くの街道が集まる場所という事で大変な賑わいだった。

 当然のように、そんなところを襲う野盗は居ない。


 こういう要衝は貴族の所領であり、貴族ないしは代官が在住し、当然のように騎士団なり兵団が駐屯している。そんな所を襲う奴は相当の勢力があるか、さもなければ、別貴族が差し向けた勢力だろうしね。


 この街を出ると、本格的な山道が始まる。


 川沿いの道を淡々と進んで、初日は峠の宿場に泊まるという、平凡な話であった。いや、あんな奴隷狩りがしょっちゅうあっても困るけどね。

 旅はあれ以後平穏。だって、冒険者が2パーティも護衛についているような隊商を狙う様な野盗なんてそうそうは居ない。

 ヒャッハー集団は南方では名の知れた冒険者であるらしく、彼らが居るというだけで避けているのかもしれない。


 そんな、のんびりした旅路を、これまで通りに過ごしている訳だが、峠に入ってからは少々違和感を覚えた。


「この道は幹線街道だから整備されているのは分かるけど、他の街道とは比較にならないくらいきれいなんだけど?」


 そう聞いてみると、意外な答えが返って来た。


「ここは石鹸を運ぶ主要街道ですから」


 という商人。


 石鹸が勇者印であるのと同じく、街道も勇者印だとか。


 昔は山を避けて海岸沿いを廻っていたとかで、かなりの迂回であったという。もちろん、山越えルートがなかった訳ではないそうだが、険しい山岳路や沢沿いの道なので、毎年のように犠牲者が出ていたらしい。

 それでも短絡路なので、決死の覚悟で通る者は居たという。


 そんな場所に道を整備したのが、土木知識を持つ勇者であったという。


 そんな話をしていると、途轍もない九十九折れが目の前に見えて来た。


「これが勇者の道?」


 そこには本来馬車を通すような余地がない場所も散見されるが、そんな崖や谷へと石垣や石橋を設けてどんどん登っていく道が見えている。

 どんなに狭い場所でも馬車が余裕をもって通れるし、大体の場所は馬車同士が対向可能である。


 どんどん標高を稼いで登っていく道は、切り立った渓谷に出くわした。


 そうとう安定した地域なのだろう。崖をずっと片洞門の道が続いている。


「あれ?橋が上下二つ?」


 崖をぐるっと回って見えて来た光景は、以前画像を見た事がある悪魔の橋とかいう奴の光景だった。


 しかし、あれは確か、下方の橋が古い「悪魔の橋」で、その上部に架かる橋は景観を調和させるために外観を石積みに似せた近代的な橋では無かっただろうか。


 だが、目の前にはまさにそれと似た光景が広がっている。


「驚いたかね?あの先には滝があるんだ。それを避けるために一度対岸に渡り、高度を稼いで渡り直すことで、道を付けているんだよ」


 との事だった。どうやら、対岸の比較的なだらかなところに道を付けて、高度を稼いで滝の上へと道を持ち上げるらしい。


 そして、一つ目の橋を渡ると、滝が見えた。


 滝を目の前に見ながら一つ目の九十九折れを周り、さらに二つ三つと登り、また対岸へと渡る。


 二つ目の橋は崖へと架けられており、そこにはトンネルが掘られている。


 これ、スイスの名勝を再現したくてこういうルートにしたんじゃない?多少地形の違いがあるから、狙ったのか偶然なのかは分からないけど。


 トンネルを抜けるとはるか下に宿場街が見えていた。結構上って来たらしい。そして、そのまま切通しを抜けて、今度は少し下に滝を眺める場所へと出て来た。

 どうやら滝の上はあまり削られていない河原の様で、川面の少し上をなだらかな斜面沿いに道が続いている。


 そこは高原の風景で、天候次第ではすぐに雪が積もりそうなほど寒かった。


 そんな道をしばらく進むと、宿場というか、ログハウスが立ち並ぶ光景が広がっていた。


「さすがにここまで来ると魔物も少ないって事なのかな?」


 そう思うほどに無防備というかなんというか。


「ええ、さすがの魔物もこれだけ緑が少ないと生息していませんよ」


 という商人。そりゃあそうか。体が魔力で出来ている訳ではなく、単に魔力親和性が高いだけの動物だから、食、住の環境が整わない場所には居ないわな。ただ、こういう場所は魔法鉱物があったりするらしく、ドワーフ達はそう言う所をくまなく探していたりする。


 そんな宿の食事は当然、新鮮な野菜や肉というのは無く、麓から運んできた食品だった。


 この峠の宿場町はこれから向かう南方の方が便が良いらしく、南方の食材がメインであったが、主食は麺類。きっと乾麺を運んできているのだろう。

 まあ、大体ここまでは想定内だったよ。 


 

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