7話
背が低く、華奢な。一見すると女性に見間違えそうなほど嫋やかな相手の人物は、ゆっくりとまわりを見渡す。
「……」
それでいて鋭く。しかし探し物がないと判断すると、諦めてため息をついた。
エイリークのチームリーダーであるラグナルは、その挙動に不満を持ちつつも、上から見下ろすように。見下すように吐きかける。
「手加減はしない。お遊びが苦手でな。死んでも恨むな。ここにいる以上は、そういうことだ」
この場にいるということは、相手に勝つためには手段など、生死など気にしていられない。一瞬の気の緩みで死ぬ。そういう世界だから。たとえ相手が三対三のチーム戦なのにひとりしかいなくても。
今日は『龍の夜』。龍と龍が争い、破壊する日。血が噴き出そうが手足が引きちぎれようが、ここでは罪には問われない。なぜなら国が許可した興行だから。死んでしまっても。盛り上がるならそれでいい。龍が減るならそれも致し方なし。治安の維持に繋がるから。
六パーセントを超える者達のみが、出場を許可される。全世界、そこらじゅうで開催されているが、有名であったりすればファンもつき、チケットは高額で転売される。
やっとのことで相手を目にした少年、トゥルッカは口を開く。チームカラーは黒。理由は「返り血が落ちないのが嫌だから」。
「随分と優しいんだね」
「?」
眉根を寄せるウールヴル。他のメンバーとも顔を見合わせ、首を傾げた。
ふぅ、と冷静にラグナルはメンバーの総意を述べる。
「直訳すると『殺す』って言ってんだがな。お前さんの脳内の翻訳機は壊れてんのか。話が通じないのか」
それとも両方か。いずれにせよ、ここにいるヤツらはまともじゃないのだから。自分達含め。それは自覚している。本来ならこんな光を浴びるようなものではない。もっとひっそりと、アングラな雰囲気でやるべきものだと思っている。




