6話
その者達は炎を吐くわけでもなく。翼で空を舞うわけでもなく。だが、拳による殴打の摩擦だけでも炎を生み、脚による跳躍は軽々と家屋などを飛び越える。どれほどの才があったとしても、人間であれば。人間というだけで。鍛錬では辿り着けぬ境地にいる存在。
彼らが受け継いだのは『龍の血脈』。とはいっても、この世界の住人であれば、全ての者が受け継いでいる、と言われている。問題はその濃さ。濃度が高ければ高いほど、より近い存在だと。生後まもなく血液で検査されるため、濃度が六パーセントを超えるものは、すぐに拘束具である程度抑えるように法律で決まっている。
長辺百三〇メートル、短辺百メートルほどの楕円形をした石の闘技場。悠久の歴史さえも感じる荘厳なその場所は、観客が一万人以上は入ろうかというエンターテイメントの会場となる。人で埋まっていく石でできた階段状の観客席。ドローンを飛ばし、撮影された映像は、世界各国からリアルタイムで視聴可能。まるでお祭りのように、車輪付きの屋台が内外で、許可もなく販売を始める。
ライトアップされ、数キロ先からでも闘技場を確認できるほどに眩い。中心の競技スペース、アレナでは四人の姿が確認できる。四人、とは言っても全員が仲間内、というわけではない。正確には一対三。
「お前、本当にひとりなんだな」
賑わいの中。三、のほうの大男が会話を投げかける。名をウールヴルという。服に隠れていない、肌の見える範囲内には刺青がびっしりと入っており、危険な雰囲気を醸し出している。
彼らはエイリークというチームに所属している。全員、白い衣装で統一されている。白は彼らのカラー。なぜその色か? それは「返り血が映えるから」だそう。
今から始まるのは一種のショー。観客視聴者みなそれを期待し集まっている、モニターに凝視している。そのために時間を割いている。スケジュールが発表されてからは、この日を焦点に合わせてきた。




