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3話

「シトは『龍』についてどう思ってる?」


 そう、友人にシトは聞かれたことがある。まだ中等教育だった頃。制服がまだぶかぶかとしていた頃。帰り道の石畳を歩きながら。目をパチパチとさせつつ、ぼんやりと理想像を頭の中に作り出す。その結果。


「かっこいいほうがいいけど」


 と、雑な回答。概念でしかないけど、男なら憧れる時期は必ずある。強そう。怖そう。悪そう。危なそう。そういうのに惹かれる。もちろん空も飛べるし、火も吹く。ゴツゴツした鱗は、どんな攻撃も跳ね返す。そんなの。


「そうじゃなくて。まぁ、フォルムとかで議論するのも好きだけど。どうあってほしいとか」


 その友人、パブロは少々熱を帯びる。どちらかというと、空は飛べなくてもいい。噛み付かなくてもいい。体当たりや頭突きで岩も砕く。そんな『龍』が好き。


 思考の道が制限されたことで、より明確な形でシトの中に降りてくる。


「どうなんだろう。好きだし、崇拝はしてるけど。でもなにかしてくれるわけじゃないし。結局、問題は自分で解決しなきゃだし」


 学校の宿題をやってくれるわけでもない。嫌いなオリーブを代わりに食べてくれるわけでもない。なら。なにをやってくれるんだろう、とは何度考えたかわからない。わからないからこそ。面白いし、追い求めたい。


 その返答はパブロにはどうにも。


「ネガティブなイメージだね」


 というものに思えてならない。好き、だったよね? 『龍』のこと。


 しかしシトにとってはそうではなく。


「そう? 充分にポジティブなものだと思うけど。自分で問題を解決しよう、って気になるわけだし」


 前向きに捉えている。心の拠り所である、ということ。それだけでいい。それだけで充分。縋ってもいい。ただ、頼ってはいけない。太陽は有効活用させてもらっているけど、頼っているわけではない。人は。強いのだから。


「そういう考え方もあるわけ」


 なるほど、とパブロは勉強になった。化石として採掘される『龍』。学問として追い求める『龍』。それらは全て、心を満たしてくれるだけ。最終的なところは自分次第、というシトの考え方はひとつの答えでもある。


 自分にとっての『龍』は以上のこと。となると、シトは返さないと平等ではないわけで。


「逆に。そっちはどうなの」


 気になるか、と言われたら、そんなに気にならない。でも自分でこの話題を終わらせるのも忍びない。なので一応。

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