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娘の特技は暗殺術  作者: すっとこどっこい
学校&王宮編
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四年目 前期 その6

「ただいま戻りました」

「おかえり。どうだった?」


 部屋では国王とディルが待っていて、戻るなり声をかけてきた。マリスは、茶会でのやり取り、その後の暗殺騒動を説明する。


「ふむ。密偵の放つ矢程度で、サイモンの奴を討ち取れるわけがない。今さら王宮で忍んでいる奴らが、知らぬとは思えぬ」


 国王の言葉に、マリスが首を傾げる。


「知らぬのか? あいつは国で最高の魔法使いじゃ。そして功績も大きい。だからこそ押さえつけるわけにもいかず、対処に困っておるとも言えるがの」

「……そうなのですか。では、お強いので?」

「そりゃ強いよ。離れた距離で相対したら、俺でもどうなるか解らないよ」

「へえ」


 ディルが肯定すると、マリスは暗い笑顔を浮かべる。戦ってみたいと、顔に書いているかのようだ。


「マリス、今はそういう時じゃないから。密偵を捕らえたと言っても、どこかに繋がる可能性は低いですね。とりあえず隣国の動きと王弟殿下との繋がりがないかを、徹底的に当たってみます。来年までに決定的な証拠が掴めるといいのですが」

「そうだな。私もあまり長くない。精々あと二年か三年といったところだろう。それまでに後継者争いに決着を付けて、他国につけ込まれる隙はなくしておきたいのじゃ」

「陛下、何を気弱なことをおっしゃいますか。まだまだお若いですし、病気の治療もこれからですよ」


 ディルの言葉に、国王は乾いた笑みを浮かべた。すでに、色々と諦めているような目で、窓の外を見る。


「構わんのじゃよ。生きているうちに、面白い妹を持てた。私の息子が王になってくれれば良いとは思っているが、鍛えて無理そうなら、ディル、お主の判断に任せる」


 いつもと違う様子の国王に、ディルは言葉に詰まった。言いあぐねているうちに、マリスが横から口を挟む。


「陛下、バーネット殿下はしっかりしてきていますよ。周りの意見にも耳を向けてますし、暗愚な王になる心配は減っています。それに、私も微力ながらお手伝いいたします。王宮に残る気はないですが、隣国との国境付近で、パピィと一緒に攻め込まれないよう威圧牽制をしておきますよ」


 シンシアも近くだし楽しく暮らせそうです、と嬉しそうな顔で伝える。


「なるほどの。王国の盾となるか。よかろう、ならばすべて上手くいったなら、褒美に良いものをやろう」

「楽しみにしておきます」


 挨拶を終えて、マリスはディルと一緒に王宮を出る。すぐにゴドウィン邸に戻り、カティと合流した。


「ただいま」

「お帰りなさいませ、お嬢様。ご無事で何よりです」

「うん。シンシアと打ち合わせしたいから、すぐに出かけるよ」


 言うなり、マリスはカティを連れて、フィスノの屋敷へと向かう。道すがら、カティに王宮でのやり取りの一部を説明する。

 マリスやシンシアの行動にもの言いたそうだったが、それほどの時間はなく、フィスノの屋敷に到着した。



 屋敷で従者に案内されて部屋に入ると、シンシアやフィスノの他に、エレイナを含めて茶会に出席していた人が全員揃っていた。


「ようこそいらっしゃいました、マリス様」

「お久しぶりです、フィスノ様」


 先ほど王宮でちらりと目はあったが、二人ともそれには触れない。


「早々に必要な話を進めておきましょう」


 フィスノの言葉で打ち合わせが始まった。マリスは密偵の処遇を伝えた上で、王弟を狙った理由について持論を述べる。


「サイモン王弟殿下は、国でも有数の魔法使いと聞いています。矢で狙われても防ぐのは苦にならないでしょう。あえて矢を放ち、フィスノ様たちに責任を押しつける気だったかもしれません」

「恐れながら、マリス様。あの時はシンシア様がかばい、結果としてシンシア様子飼いの密偵が役に立ちましたが、とても王弟殿下自身が防げたとは思えません」


 マリスの言葉に、聞いている男の一人が口を挟む。マリスがどう説明するべきかと考えていると、シンシアが助言をいれてきた。


「特殊素材を使っているわけでもない単なる矢でしたから、ある程度魔法のの技量があれば防ぐだけなら問題ないでしょう。つい矢面に立ってしまいましたが、剣があれば私でも弾くくらいはできましたよ」

「しかも王弟殿下の正面からだったと聞いています。本気で殺す気なら、背後か、せめて側面から射るべきね」

「殺気もだだ漏れでしたからね。狙ってますよと宣言しながら射ていましたわ」


 シンシアの助言に、マリスが合いの手を入れる。あくまで現場にいなかったように話さなくてはいけないので、言い回しに注意しながら会話をしている。

 そして一通り打ち合わせが終わった頃、マリスはフィスノに人払いを依頼すると、一人の男が親しげに声を上げる。


「何を他人行儀な。我々は同士、他に漏らしたりする輩はおりますまい」

「ここにいる方々は、それほど信用できるのかしら」


 マリスは一通りに冷ややかな目を向けて、厳しく言い放つ。周囲が色めき立つのを、フィスノが手を上げて制する。


「ここにいるのは皆私が信用している方々ですわ」

「悪いのですけれど、私との交流がない方がほとんどですので、はいそうですかと受け入れるわけにはいきませんの。シンシアとフィスノ様以外は、席を外してくださらないかしら」


 少しの間、無言で牽制しあっていたが、立場の低いフィスノが折れる。


「解りました。では皆様、部屋から出ていただけます?」


 素直に出て行くもの、不服そうな者など様々だ。エレイナは、一切表情を変えていない。

 不服そうに扉に向かっていた男の一人が、カティを指差しながらマリスに問いかける。


「そこの侍女は、出ないのですか?」

「ええ。だって、この子は私が信用していますもの」


 しれっと言い放つマリスに、質問をした男があっけにとられる。


「どちらにせよ、一人は雑用をしてくれる子がいる方が便利だから」


 フィスノが仲裁をして、マリスとシンシアにフィスノ、カティが残って他は全員退出していった。


「マリス様、あおりすぎ」

「おかげで他意なく追い出せた」

「あれではマリス様がわがままで自分勝手に思われるわよ」


 マリスとシンシアが言い合っていると、フィスノからも苦言が入る。


「まったくです。問題が出るのはよろしくないですわ。ただ、特に怒っていた彼を悪く思わないでくださいませ。裏表のない性格なのですよ」

「ええ、解ります。先ほどの打ち合わせで、素直にこちらの言い分を理解してくれて、素直に仲良くなったと思ったのですね。その後も素直にむくれていて、解りやすさだとカイトと良い勝負かしら」


 くすくすと笑いを漏らすマリスを注意しながら、シンシアは気になる点をマリスに問う。


「カティにも出てもらっておいた方が良かったのではなくって?」

「ごめんなさい。えっと、カティにやってもらいたい役割があったから」


 首を傾げるフィスノとシンシアに、マリスが計画を説明する。


「カティには、私を裏切って大事な情報をエレイナに回す役をしてもらう」


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