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娘の特技は暗殺術  作者: すっとこどっこい
学校&王宮編
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四年目 前期 その3

 マリスはグルケの用件を聞いてから、すぐにシンシアの部屋へ向かった。


「シンシア、いる?」

「はーい。ちょっと待って」


 シンシアの返事が聞こえて、しばらくしてから扉が開く。


「お待たせ。ごめんなさい、着替えていたの。何か急ぎの用?」

「急ぎってほどでもないけど、相談したい」

「ここにいる間の方が良いかしら?」

「学校に戻ってからでもいいけど、ここの方が周りに気を使わないから楽」

「そ、解ったわ。どんな相談?」


 部屋からカティ以外の侍女を追い出し、聞こえないほどに離れたのを確認してから、マリスは口を開く。


「あと二年弱のうちに、王弟をどうにかしないといけない。放っていても進展しないし、こちらから何か仕掛けたい」


 うんうんと頷いていたシンシアは、そうねと同意の声を上げた。


「いいんじゃないかしら。それで、何か案はあるの?」

「えっと、いくつか考えてる。一つ目、私が王宮に忍び込んで、ベルラスが他国民と繋がる密会を開いた時に乗り込む。二つ目、私の立場を利用して王弟に会いに行って、味方の振りをして騙す。三つ目、バーネットにゴドウィン家から逃げたふりさせて王弟を騙して、油断して情報を何か吐かせる。えっと、後は……」

「マリス様」


 シンシアが、たしなめる口調でマリスの話を止める。


「お馬鹿。マリス様自ら危険に飛び込むなんて、駄目に決まってるじゃない。バーネット殿下に行ってもらうのは論外。取り込まれる危険性があるもの」

「む。でも、私が動くのが一番安全。厄介ごとが起きても命を狙われても逃げられるし」

「そういう問題じゃないのよ。私が行って、手を結びたいと言うのは自然な流れと思うわよ」


 言い返すかのように提案するシンシア。マリスは内容を検討し始める。


「シンシアなら、会うのはきっと可能。昨日の会話で、 やはりバーネットは駄目だったと判断したとすれば、時期もおかしくない。そもそもの会いに行く口実があればいけそう」

「それは簡単よ。王弟殿下は自分のためにバーネット殿下を排除したい。私は、マリス様を女王にしたいからバーネット殿下を排除したい。いわゆる目標の一致ね」

「でも、その後はどうするの?」

「王弟殿下はもう四十に近い年齢よ。王として君臨できる時間は短いわ。マリス様を女王にするのは、その次でも構わないってことにすればいいんじゃないかしら」


 二人は乗り気になって、話を進める。打ち合わせを進めていくうち、再びマリスの発言でシンシアが駄目を出す。


「だって、シンシアだけじゃ不安。私も侍女として付いていく」

「マリス様に来られたら、成功するものもしなくなるわよ。その立派な黒髪、マリス様の顔を知らない者でも連想するわ」

「じゃあ、全部切ってかつらでも被れば……」


 言い終わる前に、マリスの後頭部に衝撃が走った。


「あっ、ごめんなさい」


 つい、という風情で、シンシアがマリスの頭を叩いた。


「いや、いいけど」

「お嬢様、何も良くはありません」


 にこにこと笑いを浮かべたカティが、マリスの後ろに立つ。マリスは冷や汗をかきながら、そっと後ろを向いた。


「カティ、何を怒ってるの?」

「お嬢様の発言に決まってます。シンシア様が叩いていなければ、私も手が出るところでした。叩いてしまったら、もう侍女を続けられないとは解っておりますが、堪えられる限度というものがあります」

「そうよ。マリス様、女性にとって髪はとても大事なものよ。それをよりにもよって全部切るなんて」


 カティは泣きそうな顔になっている。二人が相手だと分が悪いと思いながらも、マリスは反撃を試みる。


「でも、髪はまた生えてくる。シンシアに任せっ放しで付いていかず、もしシンシアに何かあったら、悔やんでも悔やみきれない」

「気持ちは嬉しいけど、髪を切るのは絶対に却下。もっと良い案を考えましょう」

「じゃあ、密偵のように潜んで見守るとか」


 見つかる可能性が極めて低いのは確かで、あまり強硬に反対すると、本当に髪を切ってしまいそうだ。


「解ったわ。じゃあ、私がまず接触して、上手く茶会か何かを開いてもらうわ。カティに侍女として一緒に来てもらって、マリス様は隠れて付いてきてちょうだい。何も知らない子を連れて行くのは危険だけど、カティなら逃がすのも楽だし」

「えっと、侍女というか、付き添いはエレイナに頼んでみたらどうかな?」

「ああ、確かに彼女も連れて行った方が良さそうね」

「でも、そうするとカティは無理かな」


 シンシアは少し考え、カティを見ながら頷いた。


「カティはやめておく方が良いわね。マリス様とずっと一緒に行動しているものね。名目上はマリス様のためとはいえ、マリス様の了承なしに専属の侍女を連れて歩くのは危険ね。ごめんなさい、迂闊だったかも」

「できれば、カティにシンシアの援護をしてもらいたかったけど、仕方ない。でも絶対に守るから、安心して」

「マリス様は、絶対に大人しく王女様をしないわね。王弟殿下を騙せるのも、わずかな期間でしょうね」

「かもね」



 三人は学校に戻り、すぐにシンシアがエレイナの予定を確認する。二つ返事で了承されて、シンシアは続いて王弟との接触を試みた。

 何度か手紙のやり取りを続けて、前期半ばに差し掛かる頃に、会って話をする機会が設けられた。


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