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二年目 年度休み その1

 長期休みで帰省している生徒も多い中、マリスとカティはゴドウィン邸に顔を出しただけで、すぐに学校へ戻ってきていた。残っている人数は少ないため、三日に一度くらいでパピィの世話を行っている。

 長期休みも後半に入った頃、マリスが夕食に向かうと、グルケと同室の男子から声をかけられた。


「マリス様、グルケの奴がどこに行ったか、ご存じですか?」

「グルケ? ううん、存じておりませんわ」


 男子生徒はマリスに声をかけたのが嬉しいらしく、若干興奮気味になっている。


「そうですか。どこかに出かけたんですが、戻ってきてないんですよ。先生に報告する前に、もしかしたらご存じかと思ったもので。失礼しました」


 頭を下げて去っていくのを見送り、マリスはカティに声をかけた。


「グルケ、ただ遅くなってるだけかな」

「時間には細かいですから、考えにくいですけど」

「うん。嫌な予感するね。後で聞いてくるから、もしものためにディルに連絡を入れておいてくれる?」


 カティはマリスのお願いに頷き、今後の予定を調整していく。まずは情報収集をしないと、動きようがないと結論付けた。



 夕食を終えてグルケの部屋に様子を見に行くと、先ほど声をかけてきた生徒が出てくる。マリスは笑顔を作りながらも心配そうな顔をして話しかける。


「グルケは戻ってきました?」

「いえ、まだなんですよ。よろしければどうぞ」


 誘われて部屋に入り、マリスは勧められた椅子に座った。男子生徒はそわそわと落ち着きが無い様子で声を出す。


「何か飲みますか?」

「いえ、結構ですわ。それより、グルケから何か聞いてませんか? どこに行くとか、誰かと会うとか」


 少し考えるような格好をして、ぽつりと漏らす。


「どことは言ってませんが、昔馴染みに会ってくるとか、なんとか」

「昔馴染みですか」

「ええ。マリス様に心配かけやがって、どこをうろついてるんですかね」

「まったくね。戻ってきたら、心配していたと伝えておいてくださいな」


 昨日と今日でグルケが何か言っていたかどうか、雑談をしながら聞き出したが、役に立ちそうな情報は出てこない。適当に切り上げてマリスは部屋に戻った。


「ただいま。カティ、ディルから何か連絡あった?」

「お帰りなさいませ。旦那様からはまだ、何も返答はありませんわ」

「そう。単に遅いだけならいいんだけど、誰かがグルケをさらったか殺したなら、色々とまずい」

「まずいどころじゃありません」


 次の手を打てずに待っていると、ディルからの手紙が届いた。中を確認すると、グルケが会っていたであろう人物について書かれていた。加えて、グルケの生い立ちや周辺の人物も説明がある。


「今日会っていたのは、昔一緒に活動していた情報屋らしい。現住所もあるから、ちょっと当たってくる。カティ、悪いけど先生が来たら適当にごまかしておいて」

「かしこまりました。お嬢様、お気を付けて」

「大丈夫。カティ、フィスノやボーリウムが来ても、相手しないように。目の届く範囲では、今のところボーリウムが一番危険だから」


 マリスは言い残すと、身軽な格好に着替えて窓から外に出る。人目に付かないよう気配を消して学校を出ると、貧民街に向けて夜道を走っていった。



 貧民街で何度か浮浪者に声をかけられたり強盗らしき者に襲われるのを処理しながら、マリスは目的の家にたどり着く。


「誰かいる?」


 半ば朽ちかけた扉を軽く叩きながら声をかけると、中から若い男の声が帰ってきた。


「ああ? 誰だ、こんな時間に」

「グルケの友人。話を聞きたい」


 マリスは少し待つが、反応がない。ふう、とため息を吐いて取っ手を握る。


「入るな。話なら聞こう」


 マリスは言われたとおり扉は開けず、質問を投げつける。


「グルケは、いつ頃まで一緒だった? その後の行動は?」

「対価は?」

「お金なら持ってきた」


 朽ちた扉の隙間から袋ごと渡す。中の男は受け取り、軽く口笛を鳴らす。


「帰ったのがだいたい日の入り直前だな。すぐに学校へ帰ると言っていたぜ」

「そう。他に渡したお金で買える範囲でグルケに関わる情報は?」

「あんた、マリスって奴は知ってるか?」

「ええ、知ってる。それが?」


 マリスは男の質問に即答する。マリスの声色はまったく変わらず、動揺した様子も見えない。


「グルケの奴、マリスってお嬢様が大事な様子だったぜ。俺との情報交換で、こっちから振るまで一切話さず伏せてやがったからな」

「そう。でも、今知りたい情報はそんなのじゃない」


 マリスの返答に、男は困ったような声を出した。


「参ったな。お前さんがこんな質問に来るってことは、グルケの奴学校に戻ってないんだろう?」

「戻ってないから、情報収集をしている」

「あいつ、色々と調べられていた。調べていたのは、反王子の派閥と王子の陣営の奴らだ。狙ったのがどちらかは不明だがな」

「そう。それが解っただけでも助かる」


 さらに、調べていた貴族の名前も教えてもらう。そして去ろうとするマリスに、男から注意が入る。


「お前一人か? ここも目を付けられているかもしれない。帰り際に襲われるかもしれないぜ」

「大丈夫。問題ない。むしろ襲われたら情報源が手に入る」


 そしてマリスは次に取るべき手段を検討しつつ、足早に学校に戻っていった。


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