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二年目 後期 その1

 いつものように、当番制になっている同室の四人で連れ立ってパピィの餌をやりに来たマリスたちは、小屋の前に何人かの男子生徒が待ち構えているのを目にした。

 パピィは連れ帰った当初こそ怖がられていたが、人なつこく物覚えも良いせいか、すぐに人気者になった。パピィの小屋は、他の動物とは離れた場所に新設されている。パピィに用がない場合は近付く必要は無い場所なのだが、待ち構えている男子生徒たちはパピィには用がないとばかりに、マリスたちの方を向いている。


「マリス様、少しよろしいですか?」

「どなたかしら? 当番でパピィに餌をあげに来ましたので、終わらせてからでもよろしくって?」

「ええ、構いません。待っておりますので、終わりましたらお声かけください」


 それぞれの名乗りを聞いた後、マリスは小屋の中に入る。パピィに餌をやりながら、シンシアやカティ、アンナに小声で確認した。


「誰か、彼らを知ってる?」

「一人だけ見覚えがあるわ。確か四年生だったと思うけれど、確か学校内での反王派閥の幹部か何かだったかしら」

「そう。反王派閥って、いいのそれ?」

「厳密には第一王子の勢力に敵対しているだけで、現在の陛下に逆らっているわけじゃないから」

「そっか。どうして私に来たんだろうね」

「公爵家だから取り込めば力を得られるとでも思ったのでしょうね。彼らではないけれど、お父様のところにも来ていたわ。公爵家の方が来られていたせいで追い返せないのを良いことに言いたい放題。あんなの、相手をする価値はないですわ!」


 話をしながら思い出したのか、少しシンシアの声が荒くなる。マリスが、外に聞こえると面倒だからと声を抑えるようになだめる。シンシアはすぐに落ち着きを取り戻して、照れ笑いをしながらパピィを撫でて怒りをごまかした。

 カティとアンナも心配そうにしていたのを見て、マリスは安心させるために笑顔を見せる。


「大丈夫。上手くあしらうから。絶対、アンナに飛び火がいかないようにするから安心して」

「マリス様、私のことは気になさらないでください。あの方たちから見ても、私に声をかける利点なんてありませんし」


 曖昧に微笑んで手を振るアンナに、マリスは肩をすくめた。


「警戒して損はしないよ。何を言ってくるか解らないし。さて、行こうか」


 マリスは三人と一緒に、パピィの飼育小屋を出ていった。待っていた男子生徒たちに目線を向けてから、胸を張って腕を組んだ。少し高圧的とも取れそうな態度だが、気にした様子はない。


「お待たせしました。どういったご用件かしら?」

「お時間をいただき、ありがとうございます。相談があるのですが、マリス様以外は外していただけますか?」

「……よろしくってよ。シンシア様、カティ、アンナさん、先に戻っていてくださる?」


 マリスが放った言葉で、一瞬だけだったがシンシアの顔に怒りが浮かんだ。マリスは気付いたが、涼しい顔をしている。


「お嬢様、私は従者ですので、そばに仕える義務があります」

「戻ってもよろしいですが、マリス様が戻られてから絶対に教えていただきますよ。今、一緒に聞いておく方が手間が省けてよろしいかと存じますわ」

「わ、私も、マリス様が心配なのは変わりありません!」


 マリスはどうしようか、という顔を男子生徒に向けると、身分のせいかシンシアには強く出られないようだった。


「本当に聞くとまずい内容だったら困るから。問題ないと私が判断したら、後でお伝えしますわ」


 男子生徒たちの援護をするつもりは無いが、このままだと埒があかないと判断したマリスは、無理にでもシンシアたちを先に帰らせた。


「これでいいわね。ここまでしてあげたのだから、さっさと用件をおっしゃってくださらない?」

「お手を煩わせました。実は、俺……私たちは今の第一王子が次期国王になるのを防ぐために活動している、反王派に属しています」

「ええ、それで?」


 まったく動じず、坦々と応じるマリスに、男子生徒たちは若干の戸惑いを隠せない様子を見せる。


「そこで、我々が目を付けたのが、おおっぴらには出来ないのですが、王家の血筋を引く隠し子の話です。マリス様と同じ年代で、先王陛下の御子として、どこかに潜伏中とのこと。先王陛下は、それはそれは、立派で艶やかな黒髪をしておられました」


 語っていた生徒はいったん区切り、ほれぼれとした目つきでマリスの黒髪に目を向ける。


「マリス様。大変失礼ですが、あなたについて調べさせていただきました。マリス様がゴドウィン卿の養子となった背景には、直系ではないにせよ、親を亡くした血縁の類いだろうと考えておりました。しかしながら、どうしたことか、いくら調べてもマリス様の生まれや育ちが出てきません。ゴドウィン卿ほどの権力を持ってすれば可能ですが、先王陛下のご落胤を隠し育てていたのではないか、という考えが出ているのですよ」


 大仰に手を振りながら、男子生徒はマリスに説明をしている。マリスは解らない程度にため息を吐いて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「ご高説、しかと拝聴いたしましたわ。でも残念。私はそんな大層な身分ではありませんわ。あなたたちも、妄言を言いふらして不敬罪で捕まったりしないよう、お気を付けくださいな」


 男子生徒たちが引き留める言葉を無視して、マリスは部屋に戻っていった。


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