表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/78

二年目 前期 その2

 二年になって少し経ち、マリスはシンシアに紹介された人たちと仲良くなっていった。中には地位だけを見ているものも混じっていたが、事前にシンシアから情報を聞いているため、無難にこなす。元々、外面は良く見せているので、問題が発生するような事態にはならない。

 そうこうしているうちに、討伐合宿が開催された。


「お嬢様、くれぐれも無理をしないようにしてください。もしものことがあったら……」

「大丈夫。ディルとの話も覚えてる。無理はしない」


 部屋を出る直前まで、カティはマリスの心配をしている。


「ゴドウィン卿のお話って?」

「悪い奴に気をつけろ、って」


 マリスがぼやかして答えると、シンシアはそれ以上聞いてこない。カティとアンナに見送られて部屋を出て、集合場所へ向かった。

 集合場所はすでに大半が揃っているようで、がやがやとざわついている。その中でも、一番人が群がっているのは、先だってシンシアが話題に出していたマイヨール=ボーハンだった。剣の腕が一等高く、人柄も良いとあって、人気も高いようだ。


「ハノン様は混じらないのですか?」

「ああ、これはマリス様。まあ、今話すこともありませんので」


 一人で立っていたハノンに、マリスが声をかける。ハノンは肩をすくめながら、苦笑してマイヨールの方を見る。マリスには、大きな羨望、若干の妬みが瞳にこめられているように見えた。


「しかし、兄も凄いとは思いますが、マリス様には敵いませんね。見目麗しい女性でありながら、あの剣の腕。勉学も常に上位争いをしつつ、社交的で人当たりが良い」


 ハノンはマリスをおだて始める。


「そんな大した人間じゃありませんわ。目の前の課題を、一個ずつこなしていくのが精一杯で」


 養子とはいえ公爵家の娘という立場上、偉そうに振る舞ってもよいのだが、そうすると僻みや妬みが発生しかねない。直接当たれない場合、当たる対象は立場の弱い者だ。マリスには非常に当たりやすい人物が近くにいるので、無闇に偉そうにするのは危険だと思っている。そもそも、他人にあれこれ指図するのは性に合わない。


「兄も、一度挨拶をしたいと申しておりましたよ。マリス様さえ良ければ、後で時間を作っていただけますか?」

「ええ、喜んで。楽しみにしてますわ」


 そのまま雑談をしているうちに、時間がきて教師がやってきた。最終確認を行い、さっそく出発する。

 今回は五年に引率されて、北にある山に向かう。山は国王の直轄地なので猟師は入っておらず、自然が豊かなので動物が多く、魔物も多い。また、薬の材料となる草がたくさん生えているので、採取も兼ねている。

 毎年、年度明けに騎士団による掃討が行われていて、討伐合宿はその直後、比較的安全な時期に行われる。

 歩きながら、マリスとシンシアは雑談をする。


「竜種は出るかな」

「そんなのが出たら、どうやって逃げるか、大混乱でしょうね」

「でも、土に属する種類なら動きが鈍いと聞いた」

「五年生やマリス様なら逃げ切れるでしょうけれど、実戦にも慣れていない多数の二年生を引き連れて逃げるのは至難の業よ」


 そもそも、こんな王都近くの山に竜種は住んでいない。もっと人里離れた高山や人が行けない深海などに住んでいるという。


「何にせよ、強い魔物は少ないし、出ても五年生の獲物。不完全燃焼になりそう」

「確かにマリス様が満足できるような相手は、五年生が対処するでしょうね。というよりマリス様でないと駄目な魔物って、あとはカイトくんがかろうじて相手になるくらいかしら」



 歩き続けて山のふもとまでたどり着いたが、魔物とは遭遇しなかった。

 到着した日は夕方まで、野営の準備をする班、薬になる草を採取する班と、いくつかに分かれる。

 マリスはシンシアと一緒に草を採取する班に割り当てられた。

 しばらく採取していると、ピィピィと鳴き声が聞こえてきた。大きくはないが、妙に気になる声だ。敵意のある鳴き声ではなかったので様子をうかがっていると、ずんぐりした胴体に小さな手足をぺたぺたと動かしながら、とかげのような生き物が木々の間から顔を出した。背中には、こうもりのような小さな羽が付いている。


「竜?」

「聞いただけで初めて見るので、本物かどうかは……」


 ざわざわと周りがざわつく中、マリスは少しずつ近寄っていく。


「マリス様、気をつけて。害がないとは言い切れないわ」

「うん、気はつけるけど、たぶん大丈夫」


 とかげはピィピィと鳴きながらも、目線はマリスの持つ草に釘付けだ。


「食べるかな」


 手元の草を与えると、とかげは嬉しそうに食べ始める。すぐに食べ終わりまた鳴くので、他の生徒からも草をもらって食べさせる。しばらく食べ続けた後、お腹がふくれたのか眠ってしまった。

 恐れているのだろう、マリス以外は率先して近付いてこない。シンシアはマリスのそばにいるが、それでも一歩とかげからは下がっている。

 周りの生徒と相談をした結果、まずは先生に報告しようという、先延ばしの結論が出る。ただのとかげなら退治してしまっても問題ないが、もし竜種だった場合は、どうするべきなのか判断が付かない。

 他に触れたがる生徒がおらず、マリスがとかげを抱いて集合地点へと戻っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ