一年目 後期 その4
学科試験は見て楽しむものではないため、初日の午前中に終わらせて、午後から魔法戦が開催される。そして、二日目に団体戦が開催される日程だ。
当日、グルケやアンナたちは学科試験を終わらせて、魔法戦や団体戦の応援に回る。
魔法戦は学内の闘技場で、教師が土と風の魔法で結界を張り開催される。観戦の間は、同じ組で集まる必要は無く、マリスはカティやシンシア、アンナと一緒に観戦している。近くにはグルケも座っていて、紙と鉛筆を持っている。
シンシアは、魔法戦もグルケが助言すると思っていたので、意外そうにしている。
「魔法戦は助言しないの?」
「魔法は専門外だし、助言できない。今回で見て覚えて、来年以降に生かすさ」
出場者の名前が書かれている紙をひらひらと見せながら、グルケは肩をすくめる。マリスはちょうど良いとばかりにお願いした。
「じゃあ、見ながらでいいから、解説して」
しょうがないと言いつつ、グルケは解説を始めた。
「五人での勝ち抜き戦で、最後に残っていた方が勝ち。一試合は三分で、試合ごとに順番は好きに変えてもいいそうだ」
続いて、魔法について説明し始める。
「魔法は相性があって、火は土に強く、土は水に強く、水は風に強く、風は火に強い。つまり四すくみだな。ただ、強いといっても自力が違うと相性差を覆すから、魔力を高めるのは重要になる」
「相性?」
「火と土がぶつかると、同じ威力だと土が崩れて火が残る。でも、土が岩くらいまで硬くなると、弱い火をぶつけても岩が残るから、同じくらいの威力に限るって話。まあ、同級生ならそこまで差がないから、相性と当て方が勝負の決め手になる」
グルケの解説を聞きながら、マリスたちは一回戦の様子を見る。ほとんどの対戦が、相性による差で勝負が決まっている。
「だから、普通は相性だけで負けないように、勝ち抜きなら相反属性を次に持ってくるのが多い。五人での勝ち抜きだから、だいたい四属性全部を入れておいて、後は実力で一番抜けている奴を置く感じになっているだろうね」
二回戦も、順当な勝ちが続く。一部の試合では相性で不利な方が魔法を温存して逃げ回り、相手が焦れて暴発させたところに攻撃を打ち込み、勝利を手にしている。
「他の属性と違って、風は見えないから有利じゃない?」
「魔法使いには、魔力の流れで風も見えるんです。だからこういう対戦では有利でもないです。でも、魔力が見えない相手には、結構有利なのは確かですね」
マリスが観戦しつつ疑問を口に出すと、アンナが答えた。
「へえ。じゃあ、アンナも実は強い?」
「い、いいえ、全然。マリス様なら、魔法を使われる前に近づけるのではないですか?」
「発動状況次第。見る限りだと大丈夫だけど、もっと速いと間に合わないと思う」
「お嬢様、普通は間に合わないんですけどね。予想通り、三組は強いですね」
カティが言ったとおり、三組は一番強い人が先鋒になっているのか、二組を相手に三人抜きをしている。他の組は一進一退を繰り返しているが、三組の先鋒ほど強い生徒はいないようだ。
「あれは良い動き。体さばきもいいし、万能そう」
「彼はセイゲリー。ラナン子爵家の次男ね」
貴族の情報はシンシアが詳しい。ラナン子爵、とマリスはつぶやく。ディルから聞いていた、王家にとって友好的とは言えない家柄のひとつである。
四人目との試合を、マリスはこれまで以上に真剣な顔で見定める。
見る目が変わったのが解ったようで、シンシアが首を傾げた。
「マリス様、どうかしたの?」
「どうっていう話じゃ無いけど、やっぱり魔法使いを相手にするのは大変そう。動きをよく見ておいて、後から想像で勝てるかどうかを検討する」
「本当に戦うことしか考えてないわね……それがマリス様の可愛いところとも言えるんだけど」
シンシアは微笑みを浮かべながら、マリスから試合に関心を戻した。
試合は進み、三組はどこにも負けず、魔法戦での優勝を飾った。
初戦で負けた二組だったが、他の組には負けず、二位に残り、 一組と四組、五組はそれぞれ一勝三敗で、同率三位となった。
そして次の日、マリスも参加する模擬戦が始まった。




