一年目 後期 その3
組別対抗に向けて、各組ともに情報収集や戦術の検討が進んでいた。
模擬戦において、戦闘中に降参するか武器を落とされたら負けになる。武器は様々だが、片手もしくは両手で持てる必要があり、足に着けたり身体に巻き付くようなものは禁止。また、マリスが入学試験のときに行ったような無手も禁止されている。
「一組の主将は、間違いなくマリスさんだな。彼女、無手以外だと、何が得意なんだ?」
「お嬢様は、おそらく剣を使います。あのとき無手だったのは、刃物を持つと危険だとおっしゃって自重した結果です」
「今回は木剣だから構わないってわけか」
カティを含めた二組の模擬戦参加者は、一組と四組の対策を話し合っていた。カティも勝負で手を抜くような真似はせず、考えられる手立てを口にしている。
「マリスさんを五人で抑えて、残りを六対六にするのが良いかな。五人がかりでも負けるとは思うが、時間切れまでわずかでも残っていれば、残りはなんとかなるはずだ」
「たぶん無理ですね。五人で抑えようとしても、六対六の手助けに動かれたら追いつけません。それよりは、三人くらいでお嬢様の動きを少しでも封じておいて、残りの八人で一組の残りを迅速に狩る方が良いでしょう。三人倒されている間に、相手の六人を倒せたら、あとは完全に守りに入れば良い勝負ができると思います」
「三人で抑えるって言っても、捨て駒になるし、マリスさんに向かうのは気力がいるぞ」
「一人は、私が入ります。お嬢様の癖も解ってますし、少しは粘れると思います」
「ああ、他に案が出なければ、それで行こう。残り二人はカティが決めてくれ。それじゃ、四組だが……」
「カイトくん、一組以外はあなたが主将として討ち取られないように立ち回ってくださる?」
「ああ、簡単には負けねえよ」
「問題は一組ですわ。マリス様をどうやって抑えるかだけど……」
「俺! 俺が勝つ!」
戦える機会をずっと待っていたカイトは、必死になって手を上げる。他の生徒もマリスの相手はしたくないので、できるならば任せたいとばかりに頷いている。
シンシアは、そんな単純な手で良いものかと悩んでいる。
「カイトくんの強さを否定するわけじゃないけど、これは団体戦なの。今後、個人戦があったときに一対一で勝ちを狙ってくださいな。私が全力でマリス様に当たるので、私が負けるまでに隙を突いてカイトくんが剣を落としてください。一組はマリス様の他に強い人はいなかったはずだから、他の皆さんで相手の動きを封じてくださる?」
「えー! そんな勝ち方面白くねえよ」
カイトがふくれっ面になるが、シンシアは涼しいものだ。
「面白いかどうかの問題ではありません。あなたがいる分だけ、一組に勝てる見込みが他より高いのだから、できるだけ努力もしなくては、マリス様に軽蔑されかねませんからね」
「グルケ、二組と四組、どんな手でくる?」
「おそらく、二組はカティを中心にお前を抑えて、その間に残りを潰す作戦だろう。四組はシンシアとカイトでお前に勝つ手立てを考えると思うぜ」
「ふうん。抑えられる気はしないけど。人数は厄介だけど、時間内に勝つのは難しくないね。それよりシンシアとカイトを同時に相手にするのは、ちょっときつい」
マリスもグルケも、カティを含め突出して強い生徒が思いつかないため、二組はさほど問題ないと判断する。それよりは同学年では桁違いに強いカイトと、そこまでではないにせよ優に三人分の働きはしそうなシンシアがいる四組の方が手強いと見ている。
「だろうな。というか、四組以外にお前を抑えられる奴はいないからな。同様に、お前以外にカイトを抑えられる奴もいないんだがな……」
「あえて言うならシンシアだけど、カイトと同じ組。各組の強さ、釣り合いが取れてない」
「その分、魔法戦だと三組の奴らが群を抜いているし、学力だと五組の奴らが間違いなく一番上だ。全体を見て釣り合いを取ってるんじゃないか。それに、シンシアに至ってはお前が特訓して強くなったんじゃないか?」
「そうだね。元々弱くは無かったけど、ここ最近ぐっと強くなった。模擬戦しても面白い」
マリスの目が危険な色に輝いて、あまり発言の無かった模擬戦の参加者たちは目をそらす。グルケは気にせず話を戻した。
「それより、シンシアはアベルとダインが抑えたらどうかな。二対一なら間違いなくしばらく保つし、残り四人も、防御に専念すればすぐには負けない。後は、マリスがカイトに勝てばいける」
実際には戦闘中に色々と動くから、机上の空論で述べても仕方が無いけどな、と付け足す。マリスも同意した上で、戦闘前の作戦としてグルケの案で行くと決めた。
「そもそも人数が少なすぎて奇襲や伏兵、小細工が出来る規模の戦いじゃないからな。順当に強いのが多いところが勝つさ」
他の組には特に気をつけるべき相手はおらず、マリスが実力を発揮できるように戦場を作る程度の作戦しか出なかった。
そして訓練の日々が過ぎて、組別対抗戦の日がやってきた。




